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ツイノベ
チョッポリファミリー昔話
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僕のパパはお金持ちだ。僕が欲しいといえば、大抵のものを買ってくれる。その代わり、夜はお手伝いをしなければいけない。子どもが親の手伝いをするのは当然だと思うし、パパは優しいから不満はなかった。
小学校高学年の頃になると、他の家とは何かが違うのかもしれないと思い始めた。それでもパパは優しいし、僕は困ったこともなかったし、ちょっとだけ変わった家なのかもしれないと思う程度だった。
けれど、他の子より早い発情期がやってきた時に、いつもは優しいパパが、人が変わったみたいに僕を乱暴に部屋へと連れて行った。豹変したパパが怖くて逃げようとしたのに、僕は逃げられなかった。その日初めて、一緒にベッドで寝るということの本当の意味を知った。
こんな事があってもなお、これが異常だという答えにはたどり着かなかった。初めての発情期のときは、人が変わったみたいで怖かったパパも、また優しいいつものパパに戻ったから、あの時はたまたま機嫌が悪かっただけなのかもしれないと僕は思った。
けれどある日いつものように家に帰ると、知らない人達がいた。お客様かな?と思ったけど、僕が帰ってきたことに気付くと、「お前の飼い主が、お前を返品したいそうだ」そう言って、僕の腕を乱暴に掴んだ。
飼い主?返品?なんのこと?
僕はわけがわからないまま、車に乗せられ、『僕の家』から連れ出された。車を運転している人と隣に座っている人が何か言ってるけど、その時の僕には意味がわからなかった。
「ったく、金持ちってのはよくわかんねーな。愛人として育てようと思って買い取ったけど、他にいいおもちゃを見つけたから、不要になったんだとよ」
「あー。お前は新人だから知らないかもしれないけど、よくある話さ。でも、こんな子どものオメガの返品は久しぶりかもしれないな」
本当に、何を言っているのかわからなかった。誰のことを言っているのだろう。
「どこにいくの?遅くなるとパパが心配するから、連絡しないと」
バッグに入れてある携帯電話を取り出し、パパに電話をかけた。
"おかけになった電話番号は現在使われておりません。番号をお確かめの上、おかけ直しください"
嬉しそうなパパの声を期待していたのに、僕の耳に飛び込んできたのは無機質な自動音声の声だった。
「あー。その携帯電話も回収しとけって言われてんだ」
助手席に座っていた人が振り返ると、僕が手にしていた携帯電話を乱暴に奪った。
「それがないと、パパと連絡が取れなくなっちゃう。返して」
僕は慌てて手を伸ばしたけど「はっ、何がパパだよ。あいつは、お前の本当の親なんかじゃないぜ。金で買われたんだよ」そう言って鼻で笑った。
金で買われたって?誰が?僕のパパは、欲しいものは何でも買ってくれたし、美味しいご飯をいっぱい食べさせてくれたし、暖かいお布団で一緒に寝たよ?親子だからでしょ?家族だからでしょ?
「おいおい、もうそのへんにしとけ。小学生のガキにそんな説明したって、分かんねーって」
「それもそうだな。おい、お前。とにかく、お前はまた施設に戻るんだよ。黙ってついてくればいいんだ」
その後僕が何を質問しても、ふたりは答えてくれなかった。
どのくらい車に乗っていたかわからないけど、知らない建物の前で車が止まり、同じように乱暴に腕を掴まれ引っ張っていかれた先は、薄暗い部屋だった。
僕の家とは比べ物にはならないくらい狭くて、窓もないから暗くて、エアコンもないから寒かった。
「あとで施設長が来るから、それまで待ってろ、じゃあな、俺達は行くからよ」
そう言って男の人が出ていったあと、ガチャリと鍵をかけられた。
その後のことは、記憶がすっぽりと抜け落ちている。僕の身に何が起きていたのかわからないけど、体中が痛かった。心も痛かった。それだけは記憶のどこかにこびりついていた。
けど、毎日毎日、僕に声をかけてくれる人がいたのは、かすかに覚えている。目も良く見えなかったから、顔は認識できなかったけど、とても優しい声だった。返事をしたかったけど、声も出ないし、体も思うように動かせないし、頭もうまく働かないから無反応になってしまった
こんなんじゃ、愛想を尽かして来なくなっちゃうかな。そう思ったのに、その人は足繁く通ってくれたみたいだった。日にちも時間もわからないから、いつ来てくれたのか、どのくらいの時が過ぎているのか、全く分からなかったけど。
それからまたどのくらい時間が過ぎたのかわからないけど、僕の身体の状態は徐々に回復していったみたいだ。見えなかった目も段々と見えるようになったし、周りの音も拾えるようになった。
少しずつ物事が認識できるようになった頃、僕はお医者様に診ていただいているのだとわかった。なぜ僕の体がこんなふうになってしまっているのかは、記憶が抜け落ちているから相変わらず分からなかったけど。
そしてずっと僕に声をかけてくれていたあの優しい声の持ち主の顔も、やっと自分の目で見て認識できるようになった。
「こんにちは。今日はテレビで紹介されていたお店のスイーツを持ってきたよ。一緒に食べよう?」
「あ……りがと……」
スムーズとはいかないけど、言葉も話せるようになった。けどそれと同時に、怖い夢も見るようになった。大きな大人の男の人が、僕の体中を弄っていく。とても怖くて嫌なのに、夢の中の僕は嬉しそうにしていた。この人はだれ?なんで僕は逃げないの?
怖い、怖い、怖い…。
「受け!大丈夫か!?」
体を揺さぶられる感覚で目を開けると、心配そうに覗き込む人の顔があった。
「攻め…?」
周りを見渡すと見慣れた部屋だった。
そして僕を心配そうに見ているのは、僕の夫。
そうだ。僕はあの時ずっと会いに来てくれていた攻めと結婚したんだ。
「また怖い夢でも見てたのか?大丈夫だ。俺がいるから、受けを守るから、心配するな」
攻めは僕を力強く抱きしめてくれる。
「うん…。ありがとう。攻めがいるから大丈夫だね」
僕が見る悪夢は、おそらく、すっぽりと抜けている記憶の断片なのだろう。けれど攻めと一緒にいれば、この悪夢もいつかきっと見なくなる。
攻めのおかげで、今の僕は最高に幸せなのだから。
(終)
✤
誤字から始まったチョッポリファミリーのお話。受けちゃんの過去編でした。
チョッポリファミリーの他のお話は、同じく『麻紀の色々置き場』内の『おもちゃの日』と『チョッポリポロリ』です。もしよろしければー。
小学校高学年の頃になると、他の家とは何かが違うのかもしれないと思い始めた。それでもパパは優しいし、僕は困ったこともなかったし、ちょっとだけ変わった家なのかもしれないと思う程度だった。
けれど、他の子より早い発情期がやってきた時に、いつもは優しいパパが、人が変わったみたいに僕を乱暴に部屋へと連れて行った。豹変したパパが怖くて逃げようとしたのに、僕は逃げられなかった。その日初めて、一緒にベッドで寝るということの本当の意味を知った。
こんな事があってもなお、これが異常だという答えにはたどり着かなかった。初めての発情期のときは、人が変わったみたいで怖かったパパも、また優しいいつものパパに戻ったから、あの時はたまたま機嫌が悪かっただけなのかもしれないと僕は思った。
けれどある日いつものように家に帰ると、知らない人達がいた。お客様かな?と思ったけど、僕が帰ってきたことに気付くと、「お前の飼い主が、お前を返品したいそうだ」そう言って、僕の腕を乱暴に掴んだ。
飼い主?返品?なんのこと?
僕はわけがわからないまま、車に乗せられ、『僕の家』から連れ出された。車を運転している人と隣に座っている人が何か言ってるけど、その時の僕には意味がわからなかった。
「ったく、金持ちってのはよくわかんねーな。愛人として育てようと思って買い取ったけど、他にいいおもちゃを見つけたから、不要になったんだとよ」
「あー。お前は新人だから知らないかもしれないけど、よくある話さ。でも、こんな子どものオメガの返品は久しぶりかもしれないな」
本当に、何を言っているのかわからなかった。誰のことを言っているのだろう。
「どこにいくの?遅くなるとパパが心配するから、連絡しないと」
バッグに入れてある携帯電話を取り出し、パパに電話をかけた。
"おかけになった電話番号は現在使われておりません。番号をお確かめの上、おかけ直しください"
嬉しそうなパパの声を期待していたのに、僕の耳に飛び込んできたのは無機質な自動音声の声だった。
「あー。その携帯電話も回収しとけって言われてんだ」
助手席に座っていた人が振り返ると、僕が手にしていた携帯電話を乱暴に奪った。
「それがないと、パパと連絡が取れなくなっちゃう。返して」
僕は慌てて手を伸ばしたけど「はっ、何がパパだよ。あいつは、お前の本当の親なんかじゃないぜ。金で買われたんだよ」そう言って鼻で笑った。
金で買われたって?誰が?僕のパパは、欲しいものは何でも買ってくれたし、美味しいご飯をいっぱい食べさせてくれたし、暖かいお布団で一緒に寝たよ?親子だからでしょ?家族だからでしょ?
「おいおい、もうそのへんにしとけ。小学生のガキにそんな説明したって、分かんねーって」
「それもそうだな。おい、お前。とにかく、お前はまた施設に戻るんだよ。黙ってついてくればいいんだ」
その後僕が何を質問しても、ふたりは答えてくれなかった。
どのくらい車に乗っていたかわからないけど、知らない建物の前で車が止まり、同じように乱暴に腕を掴まれ引っ張っていかれた先は、薄暗い部屋だった。
僕の家とは比べ物にはならないくらい狭くて、窓もないから暗くて、エアコンもないから寒かった。
「あとで施設長が来るから、それまで待ってろ、じゃあな、俺達は行くからよ」
そう言って男の人が出ていったあと、ガチャリと鍵をかけられた。
その後のことは、記憶がすっぽりと抜け落ちている。僕の身に何が起きていたのかわからないけど、体中が痛かった。心も痛かった。それだけは記憶のどこかにこびりついていた。
けど、毎日毎日、僕に声をかけてくれる人がいたのは、かすかに覚えている。目も良く見えなかったから、顔は認識できなかったけど、とても優しい声だった。返事をしたかったけど、声も出ないし、体も思うように動かせないし、頭もうまく働かないから無反応になってしまった
こんなんじゃ、愛想を尽かして来なくなっちゃうかな。そう思ったのに、その人は足繁く通ってくれたみたいだった。日にちも時間もわからないから、いつ来てくれたのか、どのくらいの時が過ぎているのか、全く分からなかったけど。
それからまたどのくらい時間が過ぎたのかわからないけど、僕の身体の状態は徐々に回復していったみたいだ。見えなかった目も段々と見えるようになったし、周りの音も拾えるようになった。
少しずつ物事が認識できるようになった頃、僕はお医者様に診ていただいているのだとわかった。なぜ僕の体がこんなふうになってしまっているのかは、記憶が抜け落ちているから相変わらず分からなかったけど。
そしてずっと僕に声をかけてくれていたあの優しい声の持ち主の顔も、やっと自分の目で見て認識できるようになった。
「こんにちは。今日はテレビで紹介されていたお店のスイーツを持ってきたよ。一緒に食べよう?」
「あ……りがと……」
スムーズとはいかないけど、言葉も話せるようになった。けどそれと同時に、怖い夢も見るようになった。大きな大人の男の人が、僕の体中を弄っていく。とても怖くて嫌なのに、夢の中の僕は嬉しそうにしていた。この人はだれ?なんで僕は逃げないの?
怖い、怖い、怖い…。
「受け!大丈夫か!?」
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「攻め…?」
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そうだ。僕はあの時ずっと会いに来てくれていた攻めと結婚したんだ。
「また怖い夢でも見てたのか?大丈夫だ。俺がいるから、受けを守るから、心配するな」
攻めは僕を力強く抱きしめてくれる。
「うん…。ありがとう。攻めがいるから大丈夫だね」
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(終)
✤
誤字から始まったチョッポリファミリーのお話。受けちゃんの過去編でした。
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