俺と妖怪の筒ましい生活(否定)

ぽぬん

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親睦キャンプin裏山④

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「なんじゃとー?!」

と大声を上げてポカスカ人を叩く音が聞こえてくる。俺ソファーでそのまま寝てしまったのか。

「あいたた…あまり騒ぐと起こしちゃうよ?えぇっと。その件で大事なのがですね―。」

あいかわらず低姿勢だな。いったい何の話をしているんだろうか?寝たフリを続行して聞き耳をたてる。

「夜…。」

よる?夜ってなんだ?
気になってソファーの端から薄目で覗いてみた。結緋さんはその言葉を聞いて固まっているようで、叩いていた腕をふりあげたまま言葉に詰まっている様子だ。

「報告した最近の妖怪がらみの地味ーな事件は夜君の仕業だよ。まぁ、仕業って言うか…イタズラみたいなもんだけど。」

そのイタズラの一部で迷惑してんの俺なんだけどな?
仕事として依頼が入ったものも含めるんだろうが報告ってことは、俺も監視してたってことか?俺にばれないように妖怪配置したりとか。心配だったんだろうから仕方ないとは思うが後で文句言っとこう。

「しかし、内容がどうあれ奴が動き始めたというのは放っておくわけにはいくまい。玉もとられたのであればなおさらじゃ。秋緋は気づいておらんとは思うが妖怪との接点が増えたせいもあって綻びが進んだのじゃろう。」

「ですね。最終的に必要になるのはあいつの力だから…早めに手を打たないとってことで呼んだんですよ。」

変な夢が続いていたから普通じゃないとは思っていたが。俺に隠してること多すぎじゃないのか?いや…俺も俺で家の事に興味を持たなかったこともよくなかったのかもしれない。

鍵になるのはその夜って奴っぽいな。結緋さんは相変わらず渋い顔をしてる。親父が結緋さんを呼んだってことは自分では手に負えない相手ってことだ。実際、親父の仕事してるところは見たことはないからどのくらい強いかとかは知らないけど。結緋さんを呼ぶってことはその夜って奴の実力は…。

「はぁ。私は実戦向けではないのじゃぞ?まったくこういうことに関しては人使いが荒いのう、紅司朗。」

「お誉めに預かり光栄ですよ、姫子様。」

ふたりして不敵な笑いで見つめ合っている。
仕事の打ち合わせはすんだって感じかな?テーブルの上のグラスを互いに持ち、カチンっと音をならしてグラスを叩く。のはいいが、あれは焼酎?日本酒か?絵面的に結緋さんはよろしくない気がする。年齢的にはありなんだろうが。

今何時ごろ何だろう。時計が見えない位置だからわからない。起きるタイミングは今なのか、このまま朝になるのを待つべきか。気になることが多すぎてモヤモヤする。かといって行動にでたところでうまく丸め込まれそうだしな。自分の力で解決に導くとすれば夢。より深く夢をみれば…わかるだろうか?

「茨木!ここで寝たら秋緋が風邪を引いてしまうかもしれないから寝室に運んでやってくれんかの?」

どこから湧いてでたのか。結緋さんの脇から茨木が現れた。呼ばれたのは嬉しいんだろうが頼まれた内容が不服なのか目は笑っていない。

「…承知しました。紅司朗様、お部屋は左の奥でよろしかったでしょうか?」

親父が「おっけいでーす」とかふざけた感じで返事をして、茨木は俺のところにきた。
寝たフリ寝たフリ…って体が持ち上がる感覚がしたと思ったらこの体制は…お姫様だっこかよ!気持ち悪い!続けて気持ち悪かったのはドアをすり抜けていったことだ。何かもやんもやんとして鳥肌が…。

「両手が塞がっているのです、仕方ないでしょう。」

「…あー起きてたのわかってたのか。」

「当たり前ですしそんな顔をしていればわかりますよっ…と。寝たフリも下手くそですか。」

乱暴にベットの上に放り投げられ勢い余って反対側に転げ落ちた。こういう奴だよ。

「…盗み聞きなさるとは趣味が悪いですよ?」

「好きで聞いてたわけじゃねぇよ。大声出されたら起きるだろ普通に。」

そうだ。好きで聞いた訳じゃないんだ。俺だってこんなモヤモヤを増やしたかった訳じゃない。起き上がり、ベットに座り直して部屋の窓から外を眺めていたらため息と共に茨木が話しかけてきた。

「…今代の真砂家は複雑過ぎるのですよ。」

「そうか。お前ずーっと前からうちにいるんだもんな。複雑ね…全部俺絡み?それともその夜って言う奴のせい?」

茨木とは顔を会わせないまま会話を続ける。

「根本は夜…夜緋呂やひろ様。巻き添えで秋緋様。といったところでしょうか?本当に真砂家の男はろくなことせず姫子様達を困らせてばかりですよまったく。」

本当にこいつは男女の扱いの差が激しいな。

「…平穏を求めるなら先程の話は聞かなかった事にした方がよいでしょう。これは真砂家の幹部が動くべきことであなたのお父上と姫子様がどうにかしてくださいます。」

「そんなこと…今更できるわけないだろう。」

そうだ。こうも重なってなにかが見えてきたんだ。知らぬ存ぜぬはもうできない。俺がそう返事すると、茨木はまたため息をついて応えた。すっと背筋から感じる空気が冷たくなった気がした。

「俺が喋ったと言うなよ?その日が近いから、邪魔されるのは困るってことだ。深く探らずとも自ずと答えは向こうからやって来る。それを待てばいい。お前の中の鬼も理解しているから今まで冷静に判断し行動して来られたんだ。それを信じろ。」

振り返るといつもの茨木が立っていたわけだが…。

「お前…今おにった?」

「何ですかおにったって。変な言葉姫子様に教えたら処分しますよ?早くお休みください。」

茨木は、バンっ!と勢いよく乱暴に扉を閉じて部屋から出ていった。あいつにしては珍しく俺を気にかけた…違うな。俺が何かすると結緋さんが困るからなんだろう。そういう奴。

モヤモヤは晴れてる訳じゃないが、茨木が言った俺の中の鬼が冷静になれと言ってるようで受け入れる心構えが少しずつできてきてる気がする。これは便利なのか真砂家の思惑通りなのか…ん?

ん?

あれ?あれれ?

俺の中に鬼いるの?

「変に冷静な心中が更にきもちわりぃよ…茨木め。」

はぇ~…鬼、いるの?

ごろごろとベットでのたうちまわるしかできなかった俺はそれから一睡もできず、朝日を浴びることになった。そして、寝不足の体に鞭打つかのように俺の力が暴走することになり、ひと騒ぎ起きるのだった。
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