俺と妖怪の筒ましい生活(否定)

ぽぬん

文字の大きさ
48 / 93

最悪なティータイム②

しおりを挟む
「はぁ~生き返るわぁ~!」

まったくのんきなものだな。それにフタを開けてもらったペットボトルのお茶を手も使わず器用に飲んでるし。

「それで秋緋はなんでそんな事になってるの?」

さすが壱弥くん。面倒なことが嫌いなだけあってさっさと話を進めたいようだ。俺はそれに応えてこうなった経緯を話した。

「その夜緋呂さんが今は秋緋の体にいるわけね。まぁ確かに…少し違和感があるなって思ってたんだ。」

「そうだろ?俺あんなにベタベタしないだろ?なんでだーれも疑問に思わないんだろうってさ…。」

「それは【不視】の力を使ったのではありませんか?あの建物から出る時皆さんに触れていてのでしょう?私の姫子様にも…っ。」

「やーいロリコンザマァミロー!イッタァ!」

あの過剰なスキンシップはそれか!俺にかけたであろう【不視】に加えて皆にも保険としてかけたのか…そりゃ絶望的じゃないか…。

「僕には触ってこなかったのはさとりの力を警戒してのことかな?秋緋の方にかけた【不視】方に僕が見えなくなるように調整したって感じかな…さすがだね。あ、ね、秋緋。思い出したんだよね、約束。」

そう。話したって事は記憶が戻った事も伝えたのだ。

「あぁ、思い出した。小さかったとはいえ無茶なお願いしてたよな。背負わせてごめんな。単純に俺を『殺す』方法じゃなくて、違う方法を探して動いててくれたんだろ?あ、でもすずめにした事はちゃんと謝るんだぞ?それにもうひとりで何かやるの禁止な!俺も見つめなおすって決めた。自分でやれることはするし、努力する。」

「ふふっ。やっぱ親子だね。わかった、ちゃんと謝るよ。」

俺の霊力を修行でどうにか出来るように助けてくれた事。ひとりで俺の霊力を消す方法を見つけようとしてくれてた事。腐れ縁なんて思っていたけど、記憶が戻った今となればこんなに友達思いの奴はいない。

「それで周りに迷惑かけて…ダメだね、僕。全部ひとりでできるはずなかったのに。」

「ダメとかそんなことねぇよ。妖怪消滅させたり、暴走してたとはいえ自分の家燃やしたりした俺のがダメだろ?」

「そうだね…。」

そうだね。ははっきりと言いすぎて心折れそうになったがそんな俺をずっと心配して約束守るって。ずっと友達でいてくれてたんだ。時には悪い事してたかも知れないけど感謝してるのは事実だ。

「なぁなぁ秋緋くん。そろそろこれほどいてくれへん?」

友情を確かめ合ってる所に水を差してくるとは。ほどこうなんて微塵も思いません。大人しくしててくれ。

「そういえば…なんでこの糸と繋がったら見えるようになったのかな。」

「それはですね『さとり』のあなたと繋がったからです。【不視】は『八塚壱弥』にだけに掛かっているものかと。」

この糸は本来妖怪と繋がるためのものだもんな…ん?まて。記憶とすり合わせて壱弥との思い出を追って行く…さとりが壱弥で、壱弥がさとり…?

「なるほど…って秋緋は混乱してるみたいだから話すけど僕は人と『さとり』という妖怪の間に生まれた子供なんだよ?わかったかな?」

確かに『見えてて』って言っていたな。あの時は小さいのもあるし状況も状況だったから深く考えられなかったけど…本当に心が読めていたってことか。え、授業中のあれやこれやな妄想も見えてたってこと…?

「そういうこと考えてても秋緋の自尊心に関わるだろうから触れないようにしてたから安心してね。」

安心できないです!いつも見てるわけじゃないだろうけどわかった以上は気をつけなければ。

「それにしても厄介だね。本当の秋緋がみんなに見えないのは。夜緋呂さんもうまくやってるから余計にね。」

壱弥いわく夜兄はほぼ俺そのもので生活してるらしい。砂鬼や砂羅も気付いていない。ないし夜兄に落とされてるだろうな。今の所ここにいる3人とかーちゃん。そして夜兄しか俺を認識できない。俺ひとりで解決しなきゃと思ってていたところに壱弥が加わってくれたのは心強いところだけど…あ、東雲は夜兄側だったわ。

「さすが夜くんや!うまくやっとるんなら安心安心~♪」

鼻歌を歌いだした東雲をチラリと見る壱弥。

「…秋緋、少し耳を貸してくれる?」

なにか考えついたのか、壱弥が俺に耳打ちする。
『意識を集中して、糸を細く強くするように意識。そしてそれを、あの狐の男の1番強い力が宿る所を見つけて…そこに縫いこむように糸を刺しこんでみて?』
不思議に思いながらも言われるがままやってみる俺。

「お?なになにぃ?やっぱほどいてくれるん?なはははは!!くすぐったいてぇ!!」

東雲の1番力が宿る所…みつけた。

「ぬはっ?!…なんしてん…のや…?」

ここを縫うっと…。

「まさか…やめぇ!やめろ!やめてぇぇ!」

完了っと。

「そんなぁ…鬼ぃ悪魔ぁケダモノぉ…シクシクシク…。」

なんで泣いてんだ?縫い込んだら拘束も自然にほどけてるけど…。

「少し教えただけで出来るなんてすごいよ秋緋。」

何を?

「はぁ…できるわけ無いと見てたらまさかですね。よりによってこいつを。八塚くんも人が悪い。」

だから何?!

「使役妖怪の強制契約だよ。普通はお互いの同意で契約終了の条件を立ててやるものなんだけど、強制は根源に直接一方的に刻むものだから何があっても離れられない一生モノなんだよ。」

は?
はぁあぁあぁ?!なんてことをしやがる!いや、確認しなかった俺が悪いけども?!

「なんてことしてくれたん秋緋くん…俺もうお婿に行かれへんやん…シクシクシク。」

くそ。泣きたいのは俺の方だ。これじゃ俺の目指すものが。

「どこか余裕がある泣き方ですね、狐。」

「シクシク…ん~バレたぁ?」

ウソ泣きかよ!!今1番ダメージ受けてるの俺だけ?!

「繋がった事で秋緋の事が伝わったんじゃない?とりあえず今の秋緋に夜緋呂さんに対抗する力が無いのは明らかだったからこうしたんだけど。彼ちょろいけど結構強い気を感じるし。もう抵抗も、下手な事しようとしても制止できるし。僕でもよかったけど獣は好きじゃないから。」

鵺は獣じゃないってのかえぇぇ?!俺への扱いひどくない?!もしかして努力するって言ったところ、捉え方間違ってるんじゃない?おかしいなぁ?!

「秋緋、ちゃんと体を取り戻す協力はするから安心して?」

そこはありがとうだけど?いやいや違うんだよ。

「秋緋くんの気持ちギューンって入ってきて、なにしようとしとるんかわかってもうたんよ。俺は夜くんが幸せになってほしいっておもてるから…わかるやろ?俺の気持ちも。せやからな、こんな俺やけど夜くんの為によろしゅうな♡」

うわわぁ。東雲の夜兄への熱い想いが伝わってくるの気持ち悪っ!さっきのバトル見てたから余計に気持ち悪い!

「妖怪にとっての一生は人の一生より遥かに長いですからね。少しくらい関わっても瞬きするのと変わりませんよ。」

いやお前らはそうかもしれないけど俺は?俺の一生は?全無視?

「ひどすぎる…っ。」

「まぁまぁ秋くん♡俺がおっても平和につつましく暮らせるて♡邪魔なんかせぇへんから安心してや♡」

「それじゃあ改めて作戦会議しよう?」

呼び方も変わってるしっ!

あーもー!!前もあった気がするけど俺の話を聞けぇぇえぇえ!!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

処理中です...