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逆
夜明け
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まずやることは、親父に合って鬼百合の館に同行してもらうことだ。
「おい、親父!」
「な、なんだ?!」
今日の親父は完全にオフだったらしい。バスローブ姿で、ベランダの椅子に座り、夜景を眺めながら1杯やっていたところを強襲。
「今からな、かーちゃんところいくからついて来てくれ。かーちゃんもなんか話があるみたいだからな?」
「は?何で…なに?!というか夜君?!え?まって?!とうちゃん大パニックなんだけど?!」
まぁそうだろうそうだろう。この慌てっぷりを見たかったんだ。
「東雲、親父強制連行でよろ。」
「はいなぁ。あ、はじめましてぇ。俺、秋くんの使役妖怪の東雲いいますぅ、よろしゅう~。」
「この狐が?!秋緋の?!どうしてこうなった?!夜緋呂くん!教えて下さい?!」
「ふふ、相変わらずだね紅司郎は。行きながら話しよう?」
親父もなんか動いてたみたいなのは知ってる。が、もう何もやらせないぞ!これ以上俺の平穏な日常を奪わせない。そのためにはこれから俺がやることを見届けてもらって、大人しくしてもらうのが1番だ。
「茨木、結緋さんも連絡ついたか?」
「えぇ。姫子様も、姫様の呼び出しとあればすぐにいらっしゃいます。さ、早くこのむさ苦しい男の集団と離れたいので行きますよ。」
はいはい。今回は頑張ってもらったから文句言わずに従うよ。俺だって早く終わらせたいさ。
茨木が開けた鬼門の道を館目指して進む。
「はぁ…なるほど。結局俺や結緋さんが手を出すまでもなく…か。秋緋、強くなったな…ぐすん。」
「だーかーら!毎度毎度ちゃんと話をしろって言ってんだろ!こんな家柄だからなおさらな?!それに、ちゃんと理解する頭も精神もあるし、理解できるくらいには成長しとるわ!隠し事ばっかしてるからこうなるんだよ!たくっ!」
「秋緋…なるほど、これが言いたいことを言うってことなんだね?わたしにも言えるだろうか…。」
俺と親父のやり取りを見て、何やら感心した様子でうんうんと頷く夜兄…いや、夜兄は俺を手本にしちゃいけないからね?伝え方は人それぞれあるから、ね?
「あ、秋緋?!夜?!な、なんでじゃ?!どういうことなのじゃ?!何が起きておるのじゃ?!」
ごめんよ結緋さんまでパニックにさせて。でも安心してくれ、もう全て丸く収まるように終わらすから!
「ただいまかーちゃん。早速、当主交代の儀式をやろうと思う。夜兄、玉ちょうだい。」
「えぇ。準備はできているから。さ、結緋もそこにお座りなさい。」
俺たちを待ってる間に一応俺が当主になるよってのは聞いてたみたいだけど、結緋さんは夜兄が肉体を取り戻して儀式に同席することは聞いてなかったみたい。かーちゃんが呼び出したからちゃんと話してあるもんだと思ってたけど…さすが夫婦、親父もかーちゃんも似た者同士か。
さて、多少混乱はあったものの、かーちゃんが「始めよ。」と真剣な声で発声し、俺たちは指定された場所にそれぞれ座る。と言っても儀式に必要な正当な陣という類のものではなく、用意された座布団に着席しただけだけど。
ふうっと息を吐いて、俺は事前に知らされていた通りに儀式を始める。
水を張った白い椀に、玉を沈ませる。
用意された小刀で人差し指の先を浅く切る。
「ってぇ…。」
ポタポタとゆっくりと。水の中に落ちた血が煙のように動き、玉に吸い込まれていく。
そして。
「へぇ…本当に赤くなるんだなぁ。」
【継承の赤玉】のできあがりだ。これで俺が真砂家当主となったわけだな。そしたら次はっ、と。
「かーちゃんから聞いてるから知らないとは言わせないぜ皆。これから約定を追加するからそれに従うように!」
「た、確かにそれは当主になれば可能じゃし…各代1項のみ許されてはいることじゃけど…秋緋はそのために当主になったのかの?」
「そうだよ結緋さん。このためだけになったようなものだし。俺が今からここに書くのは、俺たち家族の為だから、俺が死んだ後はなんの効果も持たないけど、反論も何も受け付けないからな!」
かーちゃんが古い巻物と、筆と墨を用意してくれてた。
俺は静かにそこに書き込んでいく。
「…何を書いてるんだろーなぁ。」
「私たち家族の為って秋緋が考えてることなんだから受け入れてあげましょ。散々ほったらかした私が言うのもおかしいけれど…。あ、あと紅司郎ちゃん。この後居残りでね?」
「え?俺なんかしたか?…したのか。はい…。」
そうだぜ、親父。かーちゃんに怒られなさい!そしてこの約定をしっかり覚えとくように!
できた。
「よし、これでいいな。」
書き終わると巻物は勝手に元の状態に戻り、紐で縛られ、かーちゃんの手元に飛んでいく。
すると、ついさっき俺の血で赤く染まった玉が白く戻り、夜兄のもとにふわりと浮かんで向かっていった。
「え…?」
「約定によって、俺の当主就任は無効。当主は夜兄がなる。簡単なことだよ、ほら。」
戸惑いながら玉を受け取る夜兄。何か言おうとしているがなかなか声が出ないみたいだな…仕方ないか。
夜兄の横に移動して手を繋ぐ。そして、顔を見合わせて、頑張れって伝えた。
「…母様、皆、わたしのわがままで迷惑をかけてしまいました。わたしのしたことは許されることではないと思います。けど、もし受け入れてくれるなら…父様と共に当主としてこの家を、家族を守ることを許してください。」
「お願いします。」
俺も一緒に頭を下げた。
記憶があろうがなかろうが、この家のことを否定して、更に当主も否定して、夜兄に後のことをお願いしてる、自分勝手な俺だから。
「あの人は、今、夜くんの中にいるのね?」
「そうだよ母様。最初は無理やりにわたしが…。でも今はとても温かくて…。」
「あーなんだ。あいつ別に怒ってるとか恨んでるとかないんだな。ただ自分の子供のそばにいれるのが嬉しいんじゃないか?」
「むむ…私もたまには父様にあわせてくれるんじゃろうな?じゃないと口聞いてあげないのじゃ!」
どうやら反対意見は無いみたい?
「そうね…元々は私がいけないんだもの。夜くん、お願いね?」
反対なし、だな。
「ううん、わたしももっとちゃんとぶつかればよかった。恥ずかしながら自分じゃわからなくて、秋緋が教えてくれたんだ。これからはちゃんと何でも話するから、ちゃんと聞いて母様!」
かーちゃんと抱き合ってる夜兄…と、ととがいる気がした。
許可を得た夜兄は、俺と同じように儀式をして、無事当主として就任した。かーちゃんと親子で過ごす時間がほしいみたいなんで外野の俺達は館を後にする。
親父は別室で待機らしくて置いてきたが。
帰り道、やけにすんなり受け入れていた当主だった結緋さんに訪尋ねてみた。
「そういえば結緋さんは、当主じゃなくなってよかったの?」
「私か?私はいずれなるだろう次代の当主までの繋ぎじゃと思って請負っただけじゃ。秋緋がこれを望んでおったのなら私はそれで構わんのじゃ。それに、夜も喜んでおろう?兄も弟も私には大事じゃからな…ふたりが笑顔なら私も笑顔じゃ!」
キュートな笑顔です結緋さん、ありがとう。
結局成長したらかーちゃんの仕事受け継ぐっぽいし、生活自体はかわらなさそうだからいいのかな?
そんなこと考えてたら鬼門を抜けてしまった。結緋さんと茨木とはここでお別れだ。お別れ、と言ってもすぐ会う機会はあるだろうけどなぁ。
「ほんで?次はどないするん?」
「次かぁ…次なぁ…壱弥と沙織里のところに行くつもりだけど。時間も時間だしとりあえず家に帰る。そして寝る。疲れた…。」
「あぁーもう夜が明けてまうなぁ。お運びしましょうかご主人様?」
東雲のお言葉に甘えよう。
運んでもらう時の心地よい揺れがたまらんが…お姫様抱っこは辞めてもらいたいな?
それにしても…久々の…寝落ち…だな…。
「おい、親父!」
「な、なんだ?!」
今日の親父は完全にオフだったらしい。バスローブ姿で、ベランダの椅子に座り、夜景を眺めながら1杯やっていたところを強襲。
「今からな、かーちゃんところいくからついて来てくれ。かーちゃんもなんか話があるみたいだからな?」
「は?何で…なに?!というか夜君?!え?まって?!とうちゃん大パニックなんだけど?!」
まぁそうだろうそうだろう。この慌てっぷりを見たかったんだ。
「東雲、親父強制連行でよろ。」
「はいなぁ。あ、はじめましてぇ。俺、秋くんの使役妖怪の東雲いいますぅ、よろしゅう~。」
「この狐が?!秋緋の?!どうしてこうなった?!夜緋呂くん!教えて下さい?!」
「ふふ、相変わらずだね紅司郎は。行きながら話しよう?」
親父もなんか動いてたみたいなのは知ってる。が、もう何もやらせないぞ!これ以上俺の平穏な日常を奪わせない。そのためにはこれから俺がやることを見届けてもらって、大人しくしてもらうのが1番だ。
「茨木、結緋さんも連絡ついたか?」
「えぇ。姫子様も、姫様の呼び出しとあればすぐにいらっしゃいます。さ、早くこのむさ苦しい男の集団と離れたいので行きますよ。」
はいはい。今回は頑張ってもらったから文句言わずに従うよ。俺だって早く終わらせたいさ。
茨木が開けた鬼門の道を館目指して進む。
「はぁ…なるほど。結局俺や結緋さんが手を出すまでもなく…か。秋緋、強くなったな…ぐすん。」
「だーかーら!毎度毎度ちゃんと話をしろって言ってんだろ!こんな家柄だからなおさらな?!それに、ちゃんと理解する頭も精神もあるし、理解できるくらいには成長しとるわ!隠し事ばっかしてるからこうなるんだよ!たくっ!」
「秋緋…なるほど、これが言いたいことを言うってことなんだね?わたしにも言えるだろうか…。」
俺と親父のやり取りを見て、何やら感心した様子でうんうんと頷く夜兄…いや、夜兄は俺を手本にしちゃいけないからね?伝え方は人それぞれあるから、ね?
「あ、秋緋?!夜?!な、なんでじゃ?!どういうことなのじゃ?!何が起きておるのじゃ?!」
ごめんよ結緋さんまでパニックにさせて。でも安心してくれ、もう全て丸く収まるように終わらすから!
「ただいまかーちゃん。早速、当主交代の儀式をやろうと思う。夜兄、玉ちょうだい。」
「えぇ。準備はできているから。さ、結緋もそこにお座りなさい。」
俺たちを待ってる間に一応俺が当主になるよってのは聞いてたみたいだけど、結緋さんは夜兄が肉体を取り戻して儀式に同席することは聞いてなかったみたい。かーちゃんが呼び出したからちゃんと話してあるもんだと思ってたけど…さすが夫婦、親父もかーちゃんも似た者同士か。
さて、多少混乱はあったものの、かーちゃんが「始めよ。」と真剣な声で発声し、俺たちは指定された場所にそれぞれ座る。と言っても儀式に必要な正当な陣という類のものではなく、用意された座布団に着席しただけだけど。
ふうっと息を吐いて、俺は事前に知らされていた通りに儀式を始める。
水を張った白い椀に、玉を沈ませる。
用意された小刀で人差し指の先を浅く切る。
「ってぇ…。」
ポタポタとゆっくりと。水の中に落ちた血が煙のように動き、玉に吸い込まれていく。
そして。
「へぇ…本当に赤くなるんだなぁ。」
【継承の赤玉】のできあがりだ。これで俺が真砂家当主となったわけだな。そしたら次はっ、と。
「かーちゃんから聞いてるから知らないとは言わせないぜ皆。これから約定を追加するからそれに従うように!」
「た、確かにそれは当主になれば可能じゃし…各代1項のみ許されてはいることじゃけど…秋緋はそのために当主になったのかの?」
「そうだよ結緋さん。このためだけになったようなものだし。俺が今からここに書くのは、俺たち家族の為だから、俺が死んだ後はなんの効果も持たないけど、反論も何も受け付けないからな!」
かーちゃんが古い巻物と、筆と墨を用意してくれてた。
俺は静かにそこに書き込んでいく。
「…何を書いてるんだろーなぁ。」
「私たち家族の為って秋緋が考えてることなんだから受け入れてあげましょ。散々ほったらかした私が言うのもおかしいけれど…。あ、あと紅司郎ちゃん。この後居残りでね?」
「え?俺なんかしたか?…したのか。はい…。」
そうだぜ、親父。かーちゃんに怒られなさい!そしてこの約定をしっかり覚えとくように!
できた。
「よし、これでいいな。」
書き終わると巻物は勝手に元の状態に戻り、紐で縛られ、かーちゃんの手元に飛んでいく。
すると、ついさっき俺の血で赤く染まった玉が白く戻り、夜兄のもとにふわりと浮かんで向かっていった。
「え…?」
「約定によって、俺の当主就任は無効。当主は夜兄がなる。簡単なことだよ、ほら。」
戸惑いながら玉を受け取る夜兄。何か言おうとしているがなかなか声が出ないみたいだな…仕方ないか。
夜兄の横に移動して手を繋ぐ。そして、顔を見合わせて、頑張れって伝えた。
「…母様、皆、わたしのわがままで迷惑をかけてしまいました。わたしのしたことは許されることではないと思います。けど、もし受け入れてくれるなら…父様と共に当主としてこの家を、家族を守ることを許してください。」
「お願いします。」
俺も一緒に頭を下げた。
記憶があろうがなかろうが、この家のことを否定して、更に当主も否定して、夜兄に後のことをお願いしてる、自分勝手な俺だから。
「あの人は、今、夜くんの中にいるのね?」
「そうだよ母様。最初は無理やりにわたしが…。でも今はとても温かくて…。」
「あーなんだ。あいつ別に怒ってるとか恨んでるとかないんだな。ただ自分の子供のそばにいれるのが嬉しいんじゃないか?」
「むむ…私もたまには父様にあわせてくれるんじゃろうな?じゃないと口聞いてあげないのじゃ!」
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