俺と妖怪の筒ましい生活(否定)

ぽぬん

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暗闇を裂いて①

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わかっちゃいたけどさ、絶対なんか起こるだろうってのは。

やっぱり、名前が条件で発動する秘術があったわけね、うんうん…やばいて。これ触れたらどうなるんだよ。触れていいのかよ…。

俺と絢倉千樹は謎の暗闇の空間に囚われてしまっているようだ。
さて…どうしたものかな…。

「え…なんで真っ暗…?」

絢倉千樹も戸惑っている様子だ。そりゃ、俺の名前を呼んだ途端にこんな空間に変化したらそうなる。…名前、何で知ってんだ?

「絢倉千樹で合ってるよな?その…なんで俺の名前を呼んだんだ?」

閉じ込められたんならもう仕方ないから、とりあえず俺の疑問に答えてもらうことにする。多少の諦めも大事だ、うん。

「覚えて、いない?あの時、一緒に遊んでくれたでしょ?」

あの時、一緒に、遊んだ…?
いつ、西の一族と俺が関わることがあったんだ…最近じゃないのは確かだ。だとすれば、小さい時…うーーーーーん。

「かくれんぼ…」

かくれん…ぼぉーーー!!あった、一回だけあった。ととがおかしくなる前、一回だけ西の一族との会談みたいなのについてったことがあった!あの日、俺はすごい不機嫌で、ととから離れたくなくてくっついて、無理矢理にだったけど、一緒に行ったんだ。
ついていったくせに珍しい景色と、きれいな庭に目を奪われて、ふらふらと遊びにでて、そこで同い年の男の子に出会って、一緒にかくれんぼで遊んだ。

途中でその男の子は、転んで膝をすりむいちゃって、その時、たまたま持っていた当時流行ってたテレビ番組のヒーローのイラストがはいった絆創膏をあげて…

「あの時、とっても楽しかった。はじめてだったんだ、あんな風に遊んだの。ありがとう、秋緋くん。」

絢倉千樹はそういうと、カバンからしおりを取り出した。あの時の絆創膏が閉じられているしおりを……えぇ…?花ならわかるけど、それ、しおりにするぅ…?呪いとは違う悪寒を感じる俺。

…それにさ、俺の思い出で、奴は『男の子』、だったんだぞ?見てみろよ!目の前の!女子生徒の制服着てるんですよ?確かに中性的な顔立ちをしてはいるけど…声の違和感はこれだったんだな…。

「俺、どうしても、また会いたくて…叔父さんがたまたま話していたのを、秋緋くんがこの学校にいるって。聞いちゃって…いてもたってもいられなくて、来ちゃった!」

お、おぅ…だから変な時期に転入してきたわけか。可愛らしく来ちゃったとかいってるけど、一人称は俺なわけね…なにこの子どんな子なのぉ…

「でも、不思議と会うことができなくて困ってたんだけど、やっと!」

そう言って近づいて、手を握ろうとしてきたが、とっさに俺は避けて、絢倉千樹から距離を取った。まさかの再会で戸惑いはあったが、秘術のことは忘れていない。不意に触れられたら、今のこの状況が悪化する。絶対に。

「あーっと…!握手するのは後にしようぜ、こんな暗い所じゃなくて明るい所で!な!」

我ながら語彙力の無さに絶望する。が、向こうも「そうだね!」と軽く承諾。こんなに簡単に言うことを聞いてくれるとは…相当俺のことを信用しているようだ。ついでにそこを動かないようにくぎを刺して、俺はこの空間を把握しようと、ぶつかるところまで歩いてみる。

ボヨォンと変な感触があった。たぶんここが境界線、だと思う。絢倉千樹を中心に円形にできているとすれば…広さは大体直径10mあるかないかくらいか、そんなに広くないな。

念のため防呪はすでに全身に行き渡らせている。絢倉千樹になんにも影響がないのは、これは俺に向けた秘術であるからだろう。そこは良かったって思った。

「これ…どうやったら破れるかな…。」

「…叔父さんのにおいがする。」

「うわっ!動くなって言っただろ!あぶないから!」

「…キュン。」

やっぱり素直に言うことを聞くような奴は俺の周りにはいねぇんだと。突然後ろから現れた絢倉千樹に驚いて、両手をあげて横っ飛びをした。なぜ頬を赤らめてるんだこいつは。触られないようにマジで気を付けないと…。
気を取り直して、先日身に着けた新技、解放できる防呪の力を指先に込めて境界線に触れてみる。

少しビリビリと揺れた気がしたけど、破れるわけじゃなさそうだ。

「…だめか?…他に…俺なんもできないな…どうしようか、力を強める?それとも―」

「俺も早くここからでて、秋緋に触れたい。だから…」

なんかとんでもなく気持ちの悪い言い方をなさってますが…協力してくれる感じだろうか?
知らない内に秘術を受けているだけで、絢倉千樹本人は俺に対して敵対心などは持ってない様子だし、腐っても西の一族の一人。
なにか使える術や力を持っている可能性は十分ある。

あのしおりを両手で握る。そしてなにやらキラキラと輝くピンク色の光がハート型になって…だんだん大きく…なにこれ…。

「ラブアタァァック!!」

太間しい声で叫びながら、出来上がった巨大なハートの光をしおりを握った左手で殴り、境界線にめり込む勢いで思いっきり打ち込んだのだ。

グオォォンっと境界線全体が揺れ、若干だが薄くなった気がする。変な攻撃?だったけど、俺より強いのはわかった。

「あれ…ダメだった?おかしいな…いつもの叔父さんの術ならボコボコにできるのに…」

見た目の可愛らしさと裏腹に、実におとこらしい人物だったようだ。絢倉千樹…怖い。

「ごめんね、秋緋くん。俺でもダメみたい…」

「いや、俺こそぜんっぜん力不足だったし…絢倉はすごいな。」

「キュゥン…千樹ってよんで、ね。」

…さっきから言っている叔父さんっていうのは絢峰瑠鬼あやみねるきのことなんだろうな。千樹がどんな修行してるかとかはわからないけど、普段の、普通の状態であれば破られていたんだろう。ただ、今回のこれは秘術からできたものだ。だから簡単にボコボコには出来なかったんだ。

だけど、少し薄くなったおかげで光が見えてきたかもしれない。
何故かって?それは、聞こえてきたからだ。

「秋緋ーーーーっ!」

俺の親友で、ばちばちにやりあう担当のあいつがな。
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