配信者と行く TSエルフのダンジョン探索記

とまと屋

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第15話

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「うっ、うっ、一週間ぶりのまともな食事っす……」
「残ったスープ温めただけだけどね」
「それでも美味いっすー!」
 美桜を連れて店内に戻ると小梅がスープを温めてくれていた。
 スープと保存が効く硬いパン、干し肉が少し。それだけでもご馳走だ。温かいというだけで心がホッとする。
 美桜はパンをスープに浸すのも待てずにがっついている。
「よく噛んで食べるんだぞ。胃が驚く」
「わかってるっす。にしてもミヤコちゃん、よくあの入り口を見つけましたね」
「エルフだからね」
「エルフすごいっす!」
 美桜が単純で助かった。ああ、小梅も苦笑してるじゃないか。
 美桜は食べることに忙しいので、ボクが地下での出来事を説明していく。
「……で、地下2階のある場所に潜伏して、追っ手が諦めるのを待ったわけ」
「そんなことが……。よく助かったわね」
「ミヤコちゃんがオシッコしたくなったお陰だね」
「……美桜、デリカシー……」
「まあ、あたしが床をぶち抜いたから助かったんですけどね」
「美味しいところだけ持っていくな」
 確かに床が抜けなかったら死んでたけどさあ。お腹膨れてきたら調子よくなってきたな、美桜のやつ。
「でも……一週間も女の子と潜伏ね……」
「おい、なに考えてる」
「別にー」
 小声で呟いても聞こえるぞ小梅。なに、変な想像してるんだ。
 そもそも小梅と一緒に探索してた時だって、仲間とはぐれた上に敵に囲まれ、二人でしばらく潜伏したことだってあっただろうに。その時、変な空気になったか?
「それで……これからどうするの?」
 あ、話題をそらしたな。
「どうするっすか?」
「美桜は少しは考えろ」
 美桜の将来が心配だよボクは。
 まあ、美桜は置いておくとして、今後のことかあ。
 追っ手はボクと美桜が死んだと判断して引き上げたのか、それとも隠れているボクたちが安心して、ノコノコと地上に出てくるよう仕向けているのかわからない。
 まあ、こういう時は罠と考えておいた方がいいだろうね。警戒して損はない。
 だから、まだ当分は死んだフリをしている方が無難だよね。公の場に出るには安全を確保しないと。
 そうなると、ボクや美桜が安心して公の場に出る方法は……。
「……あの立ち入り禁止エリアでなにが行われているか、暴く必要がある」
 おそらく、立ち入り禁止エリアに、何者かが隠しておきたいなにかがあるんだろう。その証拠を集めて世間に公表し、もはやボクと美桜を殺しても無意味だとわからせないと、ボクたちの身の安全は保証できない。
 ま、まあ……ヤケクソで殺しに来る可能性がないわけじゃないけどさ。
「具体的にどうするっすか?」
「美桜はもう少し頭を使おうね」
「あたし肉体労働。ミヤコちゃんが頭脳労働」
「古いわね」
 小梅が代わりにツッコミしてくれた。うん、エルフが元ネタを知るはずもないものね。
 美桜なら傘の上で大抵の物が回せそうだけど。
 しかし具体的に、かあ。
「立ち入り禁止エリアに侵入するのは決まりとして」
「見張りとか締めあげます?」
 脳筋め。
 下っ端が重要な情報を持っているとは思えないし、証言が本当かどうかの判断も難しい。そうなると、やはり物的な証拠が欲しいな。
 ……ん? この気配は……。
 目で小梅に合図する。パーティーを組んでいた時に何度も使った合図だ。すぐに彼女も理解した。
 静かにその場を離れた小梅は、勢いよく奥へと続く扉を開ける。
「きゃっ!?」
 可愛らしい声とともに店内に転がり込んでくる女の子が一人。あれ、この子は……。
「さくら、盗み聞きは関心しないわね」
「ご、ごめんなさい。出るタイミングを逃してしまって……」
 正座してしょんぼりする彼女をボクは知っている。あの時、立ち入り禁止エリアで助けた女の子だ。
 少し痩せたようにも見えるけれど、こうやって無事な姿を見られたのは嬉しいな。命張った甲斐があるというものだ。まあ、春都として再会したかったけれども。
 そんな彼女は、勢いよく顔を上げる。なにかを決意したような表情。そして。
「あのっ、私も協力させてくださいっ!」
「協力って……」
「あの立ち入り禁止エリアでなにが行われているのか、暴くんですよね。お願いです、私にも手伝わせてください」
 小梅と顔を見合わせる。
 さくらと言ったっけ。彼女も駆け出し、そして配信者だ。しかもこの一ヶ月は小梅の店の手伝いしかしていない。戦力になるかと言われると……。
「いいけど、危険っすよ」
「おい、美桜……」
「まあまあ、ミヤコちゃん。あたしは難しいことはわかんないけど、危険だってことだけはわかってるんですよ。……小梅さん、あたしたち駆け出しがあそこで死んだこと、事故扱いなんですよね?」
「そうね。新たな崩落が起きての痛ましい事故と発表されてるわ」
「つまり、敵さんは事件を隠蔽できるだけの力があるってことっす。でもあたしは、犯人をぶん殴ってやらないと気がすまないんです。権力があろうが危険だろうが関係ないっす。父ちゃんも、舐められたら負けだ、相手が誰であろうと殴り返せって言ってます。
 でも……さくらでしたっけ。その覚悟はあるんすか?」
 へえ……。
 さくらに問いかける美桜は別人みたいだ。作戦とか考えるのは苦手でも、相手にどんな力があるかは理解しているらしい。そして覚悟も決めている、と。
 少しは見直してもいいかな。
 と、美桜がボクに振り返った。
「今のあたし、かっこいいっすよね!」
「……今ので台無しだよ」
 いいこと言ったのにドヤるな。はあ、やっぱり美桜は美桜だったな。
「覚悟はあります! 私は……あの人の仇をとりたいんです」
 美央の問いに、さくらは力強く答えた。にしても、あの人?
「私を、あの立ち入り禁止エリアから逃がしてくれた、小梅さんの友人の春都さんです。私を逃がして……亡くなったと聞いて……」
 うつむき、身体を振るわせるさくら。
 う、う~ん……。その死んだはずのボクは目の前にいるんだよなあ。
 安心させてあげたいけれど、実は生きてます! なんて言える状況じゃないよね、今は。言っても信じてもらえないだろうけど。
「助けてもらって……でも、一人じゃなにもできなくて。ずっとこのまま隠れて生きていくしかないかと思ってました。でも、やつらにひと泡吹かせるなら、私にも手伝わせてくださいっ!」
 ああ、めっちゃ本気だ。これは、ダメだと言ったら勝手に行くパターンか。
 小梅は黙って首を振ってるし、美桜は楽しそうに笑っている。やれやれ。
 まあでも、一人増えるということは手札が増えるわけだし。なんとか活用しないとな。
「……わかった。一緒にやろう」
「あ、ありがとうございます!」
 がばっと顔をあげたさくらは、そこでフリーズした。ボクを見て口をパクパクさせている。なんだ?
「なに?」
「え、あ……あの、耳! え、本物!?」
 ああ、ようやくエルフだと気づいたのか。
 探索者エクスプローラーの仲間入りしたばかりのころ、他の探索者エクスプローラーたちが遠巻きに見に来た時を思い出すな。
「そう、ミヤコちゃんはエルフなんですよ。可愛いでしょっ!」
「おい、美桜……」
 抱きしめ、力任せに頭をぐりんぐりんなで回すのやめろ。首が折れる!
 さくらは「わあ、本物だあ」などと感動している。
「あ、あたしは御蔵美桜。永世不動八門えいぜいふどうはちもん打突技だとつぎ御蔵戦鎚流みくらせんついりゅうの使い手っす。前衛は任せてください」
 頭をぐりんぐりんしたまま美桜が自己紹介。それでさくらも我に返った。
「あ、私は及川おいかわさくらと言います。配信者で戦闘は苦手ですけど、少しなら魔法が使えます。よろしくお願いします」
「おおっ、すごいっすね。どんな魔法が使えるんですか?」
 ぐりんぐりん……。
「防御系の魔法を少し……。攻撃は苦手で」
 ぐりんぐりん……。
「あたしは魔法なんてからっきしなので、すごいっすよ」
 ぐりんぐりん……。
 ……そろそろ頭ぐりんぐりんをやめろ!
 うぐあっ、世界が回る。ヤバッ、気持ち悪く……うえっぷ。
「おわっ! ミヤコちゃん、大丈夫っすか!?」
「誰のせいだと……うええええっ」
 食べたもの全部出たじゃないか!
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