人間の俺は狼に抱かれている。

レイエンダ

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序章 転生

素敵な夫婦に拾われました

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 無事着地に成功した俺は、ひたすら待ち続けた。
 布のお陰か、寒いと感じることも暑いと感じることもなく、快適に過ごすことができている。
 歩き回ることもできず、ただ寝転がっていることしかできない為、自分の手を開いては閉じを繰り返していた。

 あの日のような大雨でなくてよかったと、心底思った。


「ねぇ、あなた。あの布にくるまってるの、赤ん坊じゃないかしら?」
「本当だ。捨て子だろうか?」


 かすれのない綺麗なソプラノボイスと、滑舌が異常なまで良いテノールボイスが耳に入ってきた。
 肯定の意味を込めて「あー。あー」と声を出すと、歩いていたであろう二つの足音が、慌ただしいものへと変わる。
 おそらく、赤子ということに気付き、駆け寄ってくれているのだろう。
 なんて優しい人達なのだ。
 異世界に来て初めて会う二人に、俺は感動していた。

 しかし、二人などと言ってしまったが、ここは異世界。
 見た目は人間に近くとも、動物の尻尾や耳がある可能性や、エルフのように耳が長い可能性もある。
 これはまさか、獣人に拾われるパターンだろうか?
 なにそれ。
 すごく素敵です。


「あらあら。なんて可愛らしいのかしら」
「本当だ!綺麗な青い瞳。水のように透き通っているな」
「メッセージカードが入ってるわ。……男の子で名前はネロと言うのね。素敵な名前!」


 俺の目に初めて映ったこちらの世界の者は、ピクピクと動く耳が最高に可愛らしい獣人でした。


「すんすん。獣の匂いがしないわ。この子、人族ヒューマンみたい」


 雪のように真っ白な肌をした女性の高く綺麗な鼻が、俺の頰やら首やらの匂いをクンクンと嗅いでいる。
 見た目は赤子でも中身は二十三歳。
 気恥ずかしくなり、無言で見つめることしかできなかった。


「本当だな。人族ヒューマンのシンさんに、育て方など聞いてみようか。俺達獣人とはきっと違う部分が出てくるだろうし」


 彫りが深く、日本でいうソース顔である男性が女性に声をかける。


「ふふふ。この子を育てたいわって言おうと思ってたのに、もうそのつもりだったのね」

「子宝に恵まれない俺達の為に、神様がチャンスをくださったのかもしれない。例え種族が違っても、俺はこの子を自分の子供して愛し、育てるよ」

「えぇ。私もよ」


 互いに見つめ合い、唇を重ねる二人。

 こらこらこら。
 子供の前でイチャつくんじゃないよ。
 彼氏いない歴=年齢の俺は羨ましすぎて今すぐにも叫びたいぐらいだぞ。
 叫んでやろうか?
 俺のデスボイスを聞かせてやろうか?

 そう思ったのだが、キスを終えた二人が幸せそうな顔で俺を見つめるもんだから、大人しく自分の親指をしゃぶることにしたよ。
 チュパチュパとね。
 これは指ではなく棒キャンディーだと、自分に言い聞かせる。
 精神年齢二十三歳に、指しゃぶりは少し抵抗があるのでね。
 でも無意識に体が動くのだから仕方がない。
 体は子供。
 意図せずともそれらしい行動を取ってしまうようだ。
 ということは、大も小も漏らすコースか。
 どうしよう。
 精神的にやられそうだ、俺。

 今後起きるであろう事に頭を悩ませながら、獣人男性のたくましい腕に抱かれながら眠りについた。
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