人間の俺は狼に抱かれている。

レイエンダ

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第二章 日常のようで非日常

お風呂に入ったら

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「はい、できましたよ」


 全ての泡を流し終わり、毛についたお湯を水避アクアプルーフで飛ばしていくと一瞬にして毛が乾いた。


「ふー……。終わったー」
「終わったな」


 魔法によって乾いた床に疲弊した様子で座っている二人。
 神獣に“偉い”と言うのは気が引けたので、言葉の代わりに頭から背中にかけて撫でてやる。
 最後にポンポンっと二回叩いてからから立ち上がろうと腰を上げた俺。
 しかし力強く下へ引かれたことによって再び椅子へ座らざるをえなかった。
 視線を下に向けると、座ったままの二人が前かがみの状態でTシャツの裾を咥えていたのだ。


「どうかなさいましたか?」


 “服が伸びるから止めてください”や“離してください”とは言わずに、手の甲で二人の頰を撫でる。
 すると口が開き、Tシャツの裾は解放された。


「お風呂頑張ったらもっと呼んでくれるのか?」
「俺達の名前を」


 三本の尻尾がまるで一つになったかのように同じ動きをしていて。
 期待に満ちた目で俺の言葉を待っている。
 声に出して笑いそうになるのを堪えながら、「もちろんですよ」と答えた。


「よっしゃー!もう駄々っ子なんて言わせねーからな!」
「俺も素直に従おう」


 もちろんお風呂は頑張って入って欲しいけれど、別にそれを抜きにしても呼ぶのにと思った。
 今までだって、二人まとめて声を掛けることが多かっただけで心の中ではたくさん呼んでいたし。


「タキトゥス様、オネスト様。今日はよく頑張りましたね」


 頑張ったという言葉にはもちろんお風呂の事だけでなく、仕事を手伝ってくれていたという事も含まれていて。
 両手を広げて笑顔で二人を待つ。


「……っ、ネロちゃん!それは反則だろ!」
「無自覚。天然」


 前足を上げ、俺の肩へそれぞれ乗せた二人は首筋や頰を舌で舐めてくる。
 ジャンプをしたり、頰をすり寄せて来たり、前足で頰をプニプニしてきたり、とにかく引っ付いてきた。

 心の底から可愛いと思う。
 兄弟や彼女、彼氏がいた事がない俺は、こうして触れ合ったり甘えられた記憶がない。
 恋だの愛だの言えるだけの知識や経験もないけれど、出会って三日しか経っていないというのに二人のことが大切だと思っている自分がいる。


「二人だって無自覚ですよね。自分達が可愛いの気付いてます?」
「~~~っ!気付いてるけど気付いてないからもっと言って!てか言え!」

「可愛いより格好いいと言われたい」
「褒められればなんでも良くね?」

「……まぁな」
「だろ」


 こうして二人の風呂デビューは無事に終了した。
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