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第三章 いざ、ロピック国へ
閑話 夕食のお時間です
しおりを挟む部屋に案内されて二時間ほど経っただろうか。指定された場所に行くと、表情筋が緩みきった二匹が机に突っ伏していた。
尻尾は激しく左右に揺れており、上機嫌なのが見て取れた。しかし何かが足りない。
物足りなさを感じた俺は顎に手を当てて考えるが、数秒と経たずに答えは出た。二匹が溺愛する恋人……ネロの姿がどこにもない。
どうしたのだろうか?と疑問に思いながらも席につくと、陛下に生意気な態度を取ったクソ犬が口を開いた。
「ネロちゃん疲れたから一眠りするってさ。後で部屋に夕食運んでもらうわー」
旅の疲れが出たような言い方だったが、別れた時よりスッキリした二匹の表情から違う意味で疲れたのだと察する。
位の高い者が多く利用するこの宿は設備が整っている。音が漏れないようにする魔法陣が各部屋の壁に施されているほどだ。
密会をするのに適した場所なのだが、この犬共は隣の部屋に俺がいるのにも関わらず、獣のようにネロに盛ったのだろう。元々獣であるこいつらに適した言葉ではないだろうが、他に思いつかないのだから仕方がない。
「狼の血を引く種族は気温が低い時期に発情期が来ると聞いていましたが、どうやら違ったようですね」
運ばれてきた料理を口に運びながら、息を吐くようにさらりと嫌味を言う。
ネロの為にわざと濁した言い方をしたようだが、汚れを取り除いて綺麗な状態で二匹にお届けした。
回りくどいのは嫌いなのだ。そのせいで他者とぶつかることも多いが、自分に嘘をつくよりはいいと思っている。
この話をすると、陛下は決まって“お前は上に立つのは向かないな”と口にするのだ。自分でも向いているとは一ミリたりとも考えていないので、ショックでもなんでもない。
「折角濁したのにぶち壊すなってのー」
「尻尾が揺れてる時点で意味はありません。それに、最初から隠す気などないでしょう?」
「まぁなー」
浅めの皿によそわれたスープを歯と舌を巧みに使って食していく。クソ犬とは違って気まずいのか、申し訳なさそうな顔をするオネスト。
真逆の性格をした二匹が同じ人族に恋をするなんて、可笑しなこともあるものだ。
それほどネロという男は魅力的なのだろうか。持って生まれた美貌を除けば、少し魔法が使えるだけの平凡な人族でしかないというのに。
「ネロにちょっかい出したら喉元食い千切ってやるからな」
「つまり殺すってことですね。俺が回りくどいのを好まないと気付いていながら、ワザと言ってますよね?クソ犬の名に相応しいというか、良い性格してますよ」
「オネスト。こいつ殺すわ」
「ネロが怒る。俺達も困る。我慢しろ」
売り言葉に買い言葉。
オネストは俺達のやり取りに呆れた表情を浮かべながらも、襲い掛かろうとしているクソ犬を尻尾で抑えつけていた。
「お前、まじで嫌い」
「好きと言われても困ります」
食事を終えて部屋に戻るまで、俺とクソ犬の言い合いとオネストの溜息が途絶えることは無かった。
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