骨太の愛は見果てぬ夢で終わらせない

有沢真尋

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【第一章】

【1】

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「私より強い男でなくては」

 それが女王オルガの決まり文句であり、齢三十歳を過ぎた頃からは悩み事となった。
 そして現在、泣き言になりつつある。

「私より強い男がいないの~~~~!!」

 いつもオルガの傍らにあったフレデリクは、さめざめと泣くオルガの愚痴を黙って聞いていた。

(たぶん俺が本気を出したら、結構いい線いくと思うんですけどね?)

 しかし、試してみましょうと提案することはできなかった。実力が伯仲しているだけに、死闘となってどちらかが命を落としかねない。冗談でも、手合わせなどするべきではないのだ。
 フレデリクがやきもきしているうちに、オルガは拗ねた。人生そのものに。

「もういいんだ。私には可愛げというものがない。たとえ私より強い男が現れて、見事私を打ち負かしたところでその男の好みが私であるとは限らない。というか、その男が私を選ぶ可能性は絶望的に低いだろう。たいていの男は『華奢で可憐で守りたくなるような美女』が好きなのだ。すべてにおいて私とは真逆の……」

 鍛え抜いた肉体を持つオルガはたしかに華奢ではなかったが、フレデリクから見れば十分に可憐であったし、もし自分に守られてくれるならこの世のすべてから守り抜いて甘やかしたいタイプの女性であった。
 しかし、フレデリクはそのことをオルガに告げることができぬまま、ある日突然戦場に散ることになった。
 奇しくも、ほとんど同じ瞬間にオルガもまた四方から放たれた弓矢を避けることができずに討ち取られてしまっていた。
 こうして、最強の王として名高かったオルガは命を落としたのである。

(オルガ様……あなたをお守りしたかった……)

 ひとびとが彼女の名を呼ぶ。悲壮な声で。その嘆きを聞きながら、フレデリクは目を閉ざした。
 生まれ変わったら、次は彼女に告白したい。気持ちを受け入れてもらう前段階として彼女を打ち負かす必要があるというのなら、全力で勝ちを取りに行き圧倒的な武力で制圧した上で愛を告げよう。
 そして言うのだ。
 今度こそ、あなたを守らせていただきたいのです、と。


 * * *


 
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