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【第一章】
【2】
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どうやら自分は、前世の記憶を持ったまま生まれ変わったらしい。
フレデリクがそのことに気づいたのは、アチェロ公爵家の嫡男として婚約者を選ばねばならないという会話を父としている最中のことだった。
現在の名前はルネ。そこはかつてオルガとともに生きた国とは遠く離れた国であり、時間的にも百年以上の隔たりがあった。
もしかしたら、フレデリクからルネとなる間に、別の転生があったかもしれない。ミミズとかオケラとか。その記憶は蘇らなかったが、フレデリクだったときの記憶ははっきりと魂に刻み込まれていたようで、まるで昨日のことのように思い出せた。
(オルガ様をお慕いしていた。いま思い出したのには、何か意味があるのでは? オルガ様もまた、私のお近くにいらっしゃるのでは……!!)
前世フレデリク、今生ではルネとなった青年は自分の考えにいたく興奮した。絶対にそうに違いないと確信した。
オルガは近くにいる。非業の死を遂げ、離れ離れになった自分と再び出会い、結ばれるために。
そこで「お前さえ良ければこの話、進めようと思う」と言っている父に待ったをかけた。
「父上、王家の末の姫リーザ様との婚約はお待ちください。私は心に決めたひとがいるような気がしてきました」
父であるアチェロ公爵は、息子の珍妙な言い訳を耳にして渋い顔となった。
「婚約を回避したいのだとしても、その言い方はあまりに適当過ぎないか。心に決めたひととやらは、いるのかいないのか」
「います。俺より文句無く強い女性です」
アチェロ公爵のもっともな疑問に対し、ルネは即答した。
フレデリクの記憶が蘇ったルネの中には、在りし日のオルガの勇姿がある。強さにこだわりつつ、自分のこだわりの強さに泣いていたフレデリクの愛しい女王だ。
(絶対に探し出して、今度こそ甘やかす……!)
ルネの決意は固い。
想い人がいるということについて、アチェロ公爵は「お前、今までそんなことはひとことも言っていなかったじゃないか」と半信半疑の様子であったが、最終的に折れた。
ならばまずはどこの誰かを明らかにして、連れてきなさい、と。
言質を取ったことに勢いを得たルネは、オルガ探しを開始することにした。
だが、その前に。
このときルネ十六歳。次期公爵として必要な教養は着々と身につけてきたが、たしなみ以上に武芸を磨く必要のない時代に生まれたこともあり、前世の自分から比べると手も足もひ弱でいかにも頼りない。
これでは、たとえ首尾よくオルガに出会っても打ち負かすことができない。オルガの性格を考えれば、たとえ前世の記憶がなかろうとも、今世でもまたムキムキに体を鍛えているに違いないのだ。軟弱な外見で吹けば飛びそうなルネが近づいたところで「私より強くない男なんて!」と門前払いを食らってしまうだろう。
「まずは体を鍛えるところからだな」
ルネは早速、過酷な修行を始めることにした。
* * *
フレデリクがそのことに気づいたのは、アチェロ公爵家の嫡男として婚約者を選ばねばならないという会話を父としている最中のことだった。
現在の名前はルネ。そこはかつてオルガとともに生きた国とは遠く離れた国であり、時間的にも百年以上の隔たりがあった。
もしかしたら、フレデリクからルネとなる間に、別の転生があったかもしれない。ミミズとかオケラとか。その記憶は蘇らなかったが、フレデリクだったときの記憶ははっきりと魂に刻み込まれていたようで、まるで昨日のことのように思い出せた。
(オルガ様をお慕いしていた。いま思い出したのには、何か意味があるのでは? オルガ様もまた、私のお近くにいらっしゃるのでは……!!)
前世フレデリク、今生ではルネとなった青年は自分の考えにいたく興奮した。絶対にそうに違いないと確信した。
オルガは近くにいる。非業の死を遂げ、離れ離れになった自分と再び出会い、結ばれるために。
そこで「お前さえ良ければこの話、進めようと思う」と言っている父に待ったをかけた。
「父上、王家の末の姫リーザ様との婚約はお待ちください。私は心に決めたひとがいるような気がしてきました」
父であるアチェロ公爵は、息子の珍妙な言い訳を耳にして渋い顔となった。
「婚約を回避したいのだとしても、その言い方はあまりに適当過ぎないか。心に決めたひととやらは、いるのかいないのか」
「います。俺より文句無く強い女性です」
アチェロ公爵のもっともな疑問に対し、ルネは即答した。
フレデリクの記憶が蘇ったルネの中には、在りし日のオルガの勇姿がある。強さにこだわりつつ、自分のこだわりの強さに泣いていたフレデリクの愛しい女王だ。
(絶対に探し出して、今度こそ甘やかす……!)
ルネの決意は固い。
想い人がいるということについて、アチェロ公爵は「お前、今までそんなことはひとことも言っていなかったじゃないか」と半信半疑の様子であったが、最終的に折れた。
ならばまずはどこの誰かを明らかにして、連れてきなさい、と。
言質を取ったことに勢いを得たルネは、オルガ探しを開始することにした。
だが、その前に。
このときルネ十六歳。次期公爵として必要な教養は着々と身につけてきたが、たしなみ以上に武芸を磨く必要のない時代に生まれたこともあり、前世の自分から比べると手も足もひ弱でいかにも頼りない。
これでは、たとえ首尾よくオルガに出会っても打ち負かすことができない。オルガの性格を考えれば、たとえ前世の記憶がなかろうとも、今世でもまたムキムキに体を鍛えているに違いないのだ。軟弱な外見で吹けば飛びそうなルネが近づいたところで「私より強くない男なんて!」と門前払いを食らってしまうだろう。
「まずは体を鍛えるところからだな」
ルネは早速、過酷な修行を始めることにした。
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