悪魔令嬢は復讐する~裏切り者に素敵な愛を授けましょう~

ともどーも

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12話 カルロの断罪(前編)【残酷描写有り】

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~ カルロ視点 ~

 この恐怖をどう表現すればいいのだろうか…。
 何をしても自分は殺される。
 それも残酷に。

 ここは王都から外れた教会だ。
 いや、廃教会と言った方がいいかもしれない。屋根は全て崩れ落ち、外壁の一部が残る程度だ。
 俺は張り付けの聖人の様に、祭壇奥に飾られている。手の平に楔が打ち込まれ、さらに縄で縛られている。足や胴体も縄で固定されているので、身動きも出来ない。

 ハンナや仲間たちはどうなったんだ…。
 
 遠くの方で人の叫び声や、爆発音などが聞こえる。
 微かに空が赤らんでいるようにも感じる。王都が燃えているのかもしれない。圧倒的力を持った悪魔が、町を破壊しているのだろうか…。
 手に打ち込まれた楔がジクジクと痛むが、不安と恐怖でそれどころではなかった。

 今回の仕事が片づけば、まとまった金が手に入り、犯罪稼業から足を洗ってハンナや仲間たちと真っ当に生きることが出来ると、そう思っていた。
 まさか自分がこんな最後を迎えるなんて、夢にも思わなかった。
 不気味で可哀相な女を誑かして、駆け落ちと見せかけて殺す事なんて簡単だと思っていた。
 それがこんな事に…。

「遅くなってごめんなさいね」
 頭上から声がしたと思ったら、女が空からフワリと降り立ち、祭壇に腰かけた。
 白い髪は返り血を浴びたように、所々赤黒く変色し、洋服も元の色がわからないくらい赤黒く変わっていた。

 真っ赤な血を連想させる目が、真っ直ぐこちらを見ている。妖艶で恐ろしい瞳だ。

「悪魔め」
「まぁ酷いこと。一年間乙女心を弄び、本気にさせて、あっさり殺した男の言葉じゃないわね。悪魔、外道、人でなし、人殺し。貴方にこそ相応しい言葉よ」

 悪魔女がフワリと浮き上がり、俺の目の前に来た。ヒヤリとする手が頬を擦ってくる。
 身動きが出来ない代わりに、睨み付け首を避け拒絶する。

「触るな」

 女は手を頬から首、胸に移動させ、俺の胸に自身の頬を当てる。
 髪から香る血やススの臭いに顔を歪める。

「カルロ。私、本当に貴方を愛していたの。愛しくて、愛しくて心が締め付けられるほどね」
「離れろ、気色悪い」
「貴方の全てが欲しいの。だから、だからね」

 女が手を下に振ると、数人の人影が空から降りてきた。
 降りてきた人の顔は、俺のよく知る顔ばかりだった。

「…ハンナ」
「カル…ロ?」

 恋人のハンナと仲間達だった。

「貴方の愛する人達が居なくなれば、貴方の心を、私だけが一人占めする事ができるでしょ?」

 胸元で不気味に笑う悪魔を初めて、心の底から恐ろしいと感じた。

「カル兄!」
 最年少で10歳のナヴィがこちらに助けを求めるように叫ぶ。
 他にも仲間のハーパーやロータスの姿が見える。二人は頭から血を流してぐったりしている。
 俺、ハンナ、ハーパー、ロータス、ナヴィの五人でパーティーを組んで仕事をすることがあった。みんな同じ孤児院で育った兄弟の様な奴等だ。

「仲間達に何をした!!」
 まだ胸に顔を埋める女に怒鳴りつけた。血相を変える俺を見て、女は朗らかに笑う。
「嬉しい。私を見てくれた」
「答えろ!」
「フフフ。まだ何もしてないわ。あぁ、あの二人は殴りかかってきたから、何度か地面に叩きつけただけよ。まだ生きてるから安心して。でも、こんなに貴方の取り乱す姿を見ることが出来て嬉しいわ。誰から殺してあげましょうか」

「「ひっ!」」
 ハンナとナヴィが喉をひきつらせる声が聞こえた。
「やめろ!殺したいのは俺だろ!俺を殺せばいい!仲間に手を出すな!!」
 動かない体で必死にもがく。

 どうすれば、どうすればハンナを助けられるんだ!

「まず、男性から」
 ハーパーの体が縮んでいく。
「グガガガガ!!」
「やめろーー!!」
「「キャーーーー!!」」
 ハンナとナヴィの絶叫が木霊する。

 あっと言う間にハーパーの体は肉片になり、赤い滴に変わった。
 悪魔女は杯を取り出し、滴を取りに俺から離れて、仲間達の方へ移動した。
 
「まず一人」
「この悪魔女!!」
「あら、そんな事を言うの?恋人同士名前で呼んで欲しいわ」

 突然ロータスの右足が潰れた。
「ギャーーー!」
 意識を失っていたロータスは、足が潰れた痛みで正気に戻ったようだ。
「おっ、俺の足が!」
「わかった!わかったから仲間を傷つけるな!」

「カルロ」
 惚けるような声で悪魔女が名前を呼ぶ。従うしか道はない…。
「…マリアーナ」
 
 ロータスの左足が潰れた。
「グアーーー!!」
「名前を呼んだだろ!」
「違うでしょ?カルロ」
 ニコニコと微笑んでいる。
 
「お嬢様…」
 今度は右腕が潰れた。
「アアアアアアアア!!」
 ロータスの絶叫が響き渡る。
「マリー…」
 左腕が。
「カルロ!カルロ!助けてくれ!!」
 ロータスが半狂乱になって、名前を呼んでくる。

 助けたくても、正解がわからない。
 くそっ!

「名前を呼んでるだろ!!何て呼んで欲しいんだ!」
 俺が叫ぶと、悪魔女は嬉しそうに手を叩いた。すると、ロータスが一瞬で潰れて赤い滴に変わり、杯の中に入った。

「ロー…タス…」
 俺は愕然とし、仲間の名前を呟いた。
「『愛しのマリー』って呼んでほしかったのに、残念ね。さぁ、次はどちらにしましょうか。『本当の恋人』は一番最後がいいかしら。じゃぁ」
 ナヴィが悪魔女のもとに引き寄せられる。
 
「たっ、助けて…。助けて!助けてください!!カル兄、どうにかして!助けてよ!!」
「ナヴィ!!頼む、助けてくれ。その子はまだ10歳なんだ。愛しのマリーは小さい子に優しいだろ?」
 笑顔がひきつる。
 しかし、すがるしかない。
 もう、仲間が死ぬ姿は見たくない。

「愛してるよ。君のルビーの様な瞳が好きだ。キラキラしていて、一人占めしたいとずっと思っていた。白百合の様な髪はサラサラで、とても艶やかだ。結い上げるとき、絹のような肌触りに、何度も口づけしたいと思ったかわからない」

 ナヴィを助けたい。
 その一心で悪魔女に愛を囁く。
 女はナヴィを連れて、ゆっくりと俺の目の前に来た。

「些細な事で照れる顔が好きだ。ほっそりとした柔らかい手が好きだ」
 ニコニコとした笑顔に恐怖を感じつつも、必死に表情を作る。

「愛してるよ」

 女はナヴィの頭を鷲掴みして、俺の前に突き出すと、一瞬でナヴィの頭を潰した。

「嘘つきね」

 首から吹き出す血の雨が、俺と悪魔女を濡らす。俺は驚愕し目を見開いたまま固まった。女の口は不気味に三日月の形をして笑っていた。
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