置き去りにされた恋をもう一度

ともどーも

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4話 友だちとして

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 あの後、私たちは7年の月日を埋めるようにお互いのことを報告しあった。
 事故後、リハビリを経て日常生活を送るには問題ないほど回復し、必死に勉強して大学に合格、卒業し、今は大手企業のエンジニアとして働いていると教えてくれた。
 今は都心の方に住んでいるらしい。
 蓮の仕事内容には取引先への挨拶回りもあり、蓮の担当は私の住むM市と隣のS市。特にS市は地元だから土地勘があるでしょ、と会社側が気を遣って配属させてくれたそうだ。私たちの地元……。
 昨日は図書館のシステムチェックで、3ヶ月に一度くらい来ているとのこと。
 サッカーは趣味で続けているそうで、蓮と同じように耳に障害のある人たちで結成されたチームらしい。
 音が聞こえないだけで、合図は手話やアイコンタクトで行うので、健常者と変わらない運動量だと話していた。
『今週の日曜日も練習試合があるんだ』
『どこでやるの?』
 メッセージを見せ合うのは面倒だからと、ブロックしていたラインを解除して、向かい合って打ち合う。
 他人から見たら変な光景なんだろうが、そんなことは気にならないくらい蓮との会話に夢中だった。
『この近く。駅の反対側の公園の』
『あぁ、あそこね。何時から?時間が合えば応援に行くよ。差し入れは何がいい?またどら焼?』
「ぶはっ!」
 私のメッセージを見て、蓮が声を出して笑った。
 昔、試合の差し入れにどら焼を持っていったら、意外すぎてチームの仲間に笑われた。でも蓮だけは「旨い。栄養補給にちょうどいいよ。ありがとう。また差し入れにどら焼を持ってきて」と庇ってくれたのだ。
 普通はおにぎりとか、ゼリーとかを持っていくのに、蓮が和菓子好きなことを知って、よく考えずに持っていったのは、良い思い出だ。
『あぁ、頼むよ』
 文字を打ち込む蓮の顔は、穏やかな顔をしていた。


 ◇◇◇


「~♪」
 鼻歌混じりに歌いながら、キッチンで晩御飯を作っていると「ピロンッ」とスマホが鳴った。
『今日は話を聞いてくれてありがとう。日曜日、頑張るよ』
 蓮からのメッセージだ。
 思わず笑顔になる。
 日曜日、何を着ていこうかな~。
 サッカーの試合だからスポーティーな感じ。いや、スポーティーカジュアルかな!
 まだ夏の日差しが残っているから、日傘が必要よね。でも、そうなるとスポーティーカジュアルに合わないしな~。
 う~ん……。
 もう、いっそ明日買いに行こう!
「フフフ」
 学生のときも同じだったな。
 部活のない土日のデートも、試合を応援しに行った日も、洋服をあ~でもない、こ~でもないと考えて、ウキウキして、当日が待ち遠しかったな。
 晩御飯をお皿に盛り付けていると「ピロンッ」と、また通知音がした。蓮からだと思ってスマホを確認すると、達也からだった。
 思わず落胆する自分がいた。
『お疲れ様~。今日はどう?』
『今から晩御飯。体調悪いからムリ』
『必要なものある?』
 達也の気遣いを感じさせるメッセージに、罪悪感がチクリと胸を刺した。
 歴代の彼氏たちに『体調が悪い』とメッセージを送れば、『無理するなよ』とか、『また連絡する』など気遣われることがなかったから、達也も同じような返信をするかと思っていた。
『スポドリ買ってく。食べたいものある?』
『大丈夫。寝れば明日には良くなる。心配してくれてありがとう』
『了。晩飯なに?』
『野菜炒め』
『食いたい』
 はあ?
 気遣ってくれて、嘘ついてるこっちは罪悪感があるのに、もしかして手料理食べたいから言ってたの?
『ダメ』
『美咲用に弁当買ってく。その野菜炒めは俺が食いたい。何弁当なら食べれそう?てか、野菜炒め食べれるなら、油ものじゃなければ食べれそうだな』
『いらない。来ないで』
『ヤダ。行く。具合悪いの嘘なの?』
 ぐっ……。
 何でこんなに今日はしつこいのよ。
『来ないで』
 さっきの『嘘なの?』は無視して返信するが、『何かやましいことでもあるの?』と追及してくる。
 あぁ……めんどくさい。
 達也とは友だちとして付き合うには楽しいから、彼が他の女性と会っても気にしなかった。だけど、こんなにしつこいなら、そろそろ別れるべきかも。
『あるって言ったら?』
 売り言葉に買い言葉。イライラしてそんなメッセージを送ってしまった。
 さすがの達也も引いたのか、反射的に返信してくるメッセージは、それっきり来なかった。
 あきらめたか……。
 卑怯なメッセージを送ってしまったと、すぐに後悔が襲ってきた。今まで別れるときは、ちゃんと会って別れていたから、このままフェードアウトは気持ちが悪い。
 どうしよう……。
 改めて話したいから、別日に会おうって連絡する?
 それはそれで面倒よね。
 台所で野菜炒めを前にもんもんとしていると、「美咲~」と玄関が開く音と一緒に達也の声が聞こえた。
 あれ?私、鍵を閉め忘れてた?
「ラッキー。野菜炒め残ってた」
「達也?!」
「元気そうだな。よかった、よかった」 
 私の前に置いてある野菜炒めを持ち、いつものテーブルに置いて、ベッドを背もたれにして、我が物顔で座っている。
「美咲、白飯ある?」
「なんで来たのよ」
「そりゃ~、彼女が具合悪いって送ってきたら、行くしかないだろ?」
「っ!」
 当然と言わんばかりの顔に一瞬、罪悪感が胸を突いた。だけど、手ぶらな達也を見て「スポドリは?」と意地悪で聞いた。
「注文すればいいかなって」
 スマホを見せてきた。
 今のご時世、弁当の配達は普通だよね。いや、そうじゃなくて!
「来ないでって連絡したじゃん」
「俺は行くって返信した」
「強引すぎ」
「具合が悪いなら看病するし、そうじゃないなら野菜炒め食べたかったし。美咲、箸ちょうだい」
 ワガママ男め~。
「はあ……」
 仕方がないから、箸とご飯とインスタント味噌汁を出した。さっさと食べさせて帰らせよう。
「美咲、何食べたい?」
「……」
「怒るなよ。じゃ、行きつけのの中華弁当にするよ。前、旨そうに食ってたもんな」
 以前ケンカになった1万の弁当じゃん!
「だめ!」
「じゃ、何食べたい?」
 余裕のある達也の顔がムカつく。
 だが、よくよく考えると、高額弁当を食わせるぞと脅されているのは、なんとも変な感じだ。
「はあ~、わかった。ホカホカ屋の唐揚げ弁当」
「了解」
 達也はさっさとスマホを操作して、注文を終えたようだ。
「じゃ、お先にいただきます!うん、旨い」
「普通の野菜炒めよ」
「いいんだよ、それが。料理人の完璧な味じゃない、素朴な味が」
「そうですか~」
 美味しそうに野菜炒めを食べる達也に、文句を言うのもバカらしくなって、台所の調理器具を洗い出した。
「それ食べたら帰ってよ。今日は夜まで付き合う気はないから」
「え~。せっかく来たのに」
「昨日も付き合ったでしょ。それに……」
 言葉がつまる。
 罪悪感……だろう。いや、もともと私たちの関係は彼氏彼女というよりは、セフレに近いものだった。現に達也には他に彼女がいる。
 私に別の好きな人ができても、たいしたことはないだろう。所詮、私は達也と体の関係がある友だちに過ぎないのだから。
「好きな人ができたから別れたい」
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