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29話 露見した真実
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どこかで見たことがあるようなないような、そんな面をした人たちが集う会場を背にしてバルコニーに出た。外の空気を吸いながらニコチン不足に感じた鮫島は無意識に胸ポケットに入った煙草に触れた。
「ここにいたんですね!」
背後から声をかけられて咄嗟に手を止め後ろを振り向くとそこに立っていた満の姿を見て薄ら笑いを浮かべた。
「あぁ、満さん。貴方も来ていたんですね。前回は私と同じで無理矢理連れて来させられたものかと思っていたので今日は来ないと思っていましたよ。」
心を見透かしたように平然と話をする鮫島に満は「またまた、ご冗談を。」と愛想笑いで返した。
「お煙草吸おうとしてましたよね?大丈夫ですよ、気を使わず話ながら吸ってもらって。」
「申し訳ない、ずっと我慢していたもので。しかしこれ以上は待てができないもので...お言葉に甘えさせてもらいますよ。」
隣に来た満にそう言うと鮫島は煙草に火をつけた。
「...その匂い......。要さんはずっとその銘柄を吸っていらっしゃるんですか?」
鮫島の煙を嗅いだ満が咄嗟に質問をすると鮫島は首を傾げた。
「えぇ、甘ったるい物もメンソの香りもあまり好まないんでね。長い事もうずっとこればかりですね。...この煙草がどうかしましたか?」
疑問で返す鮫島に満は「いえ、深い意味はないです。」と言ったあとその煙草を一本貰いたいと強請った。
「お父様の会社は継がれないんですか?」
お互いにしばらく煙草を吸いながら携帯を弄っていたがその沈黙を破って満が話しかけた。
鮫島は下のテラスで酒に酔って揉めている人たちを見ながらクスリと笑った。
「幼いの頃は父の仕事を継ごうとは思っていたんですよ。ただ過去に、自分より年下の少年に言われた事をきっかけにそれを辞めたんです。自分で会社を立ち上げてそれでやっていこうとね。でも案外私にはこれが向いていたのかもしれません。働きたい時に働いて休みたい時に休む、そう言ったこの仕事のスタイルがね。」
そう話す鮫島に釣られて満も下に目を落とすとその喧嘩をしていた父親たちを止めに入った息子らしき人たちもまたそこで口論をしていた。
「......彼ら大丈夫ですかね。」
少し心配そうに見つめる満を流し見ると鮫島は「それは本心ですか?」と先程までとは違った冷たい口調で言い放った。それに驚いた満がパッと鮫島を見ると鮫島は手すりにもたれかかりながらニヤッと笑った。
「私はあまり同情とか偽ったことを言うのは本意じゃないんです。だからあー言った人を見ても蛙の子は蛙、親があんな人間だとその子供もお里が知れてるとそう思ってしまうんですよ。」
またしても見透かしたように話をする鮫島がまるで自分のことを言っているような気がして腹を立てた満は意地が悪そうに言い返した。
「どこの社長だってきっと綺麗なやり方をしていませんよ。きっと要さんのお父様もね...人を蹴落として這い上がってきたようなそういった人生だったと思います......しかしそーなると要さんもそう言う人間だと言うことに...そうなってしまいますよ。」
なんと返してくるか見ものだと思っていた満は鮫島の顔を見て不気味な笑みを浮かべたが、そんな満の期待を裏切るかのようにあっさりと鮫島は首を縦に振った。
「えぇ。だから私も汚れた人間だと自覚していますよ。そんな褒められたような半生を送ってきたとも思っていませんしね。でもあまりにもバカ真面目に過ごしていたって面白くない。少しばかりスリルと絶望があった方が素敵だと思いませんか?」
そう言うとバルコニーから中に戻る鮫島の後を満は無意識に追っていた。
父親に先に帰ることを伝えた鮫島を見送ると言って、満もまた一緒に会場を出た。たわいもない話をしながら人気がなく暗くなった場所に着いた時、まるで自分たちを待っていたように奥から車が一台近づいてきた。
その車を見た鮫島がニヤッと笑みを浮かべると口を開いた。
「すみません、このままもう少し満さんと話をしていたかったのですが、生憎ペットが寂しがって私の迎えに来たようです。」
そう言って頭を下げる鮫島に前も言っていた犬がどんな犬種なのかワクワクしていると、後部座席のドアが開き満はそちらに目を向けた。しかし出てきた人物を見て満は言葉を失った。
「......え。」
その人物は外に出ると無言で鮫島の首に手を回し、抱きしめてそのまま顔を上げた。それに答えるように鮫島は顎を持つとキスをして舌を絡めた。
「帰るまで待てなかったか?全く...大切な友人が目の前にいるのにそんなんでいいのか。」
そう言われて満の方を見た慶もまた満と似た表情を浮かべた。
「みつ...る......なんでここに...?」
「いや、慶こそ...なんで......。」
沈黙を破るように鮫島は「家に帰って詳しく教えてやる。車に乗れ。」と慶に言い車に乗せた。
満は慌てて慶を呼び車から降りて自分と話をするように伝えたが、慶から返ってきた言葉は「ごめん。」それだけだった。
不安と焦り、悲惨な顔をして外に立つ満の顔を鮫島は冷ややかな目で見ると、
「ではまたお話しましょう。有城満さん。」
と声をかけて車を出させた。
「ここにいたんですね!」
背後から声をかけられて咄嗟に手を止め後ろを振り向くとそこに立っていた満の姿を見て薄ら笑いを浮かべた。
「あぁ、満さん。貴方も来ていたんですね。前回は私と同じで無理矢理連れて来させられたものかと思っていたので今日は来ないと思っていましたよ。」
心を見透かしたように平然と話をする鮫島に満は「またまた、ご冗談を。」と愛想笑いで返した。
「お煙草吸おうとしてましたよね?大丈夫ですよ、気を使わず話ながら吸ってもらって。」
「申し訳ない、ずっと我慢していたもので。しかしこれ以上は待てができないもので...お言葉に甘えさせてもらいますよ。」
隣に来た満にそう言うと鮫島は煙草に火をつけた。
「...その匂い......。要さんはずっとその銘柄を吸っていらっしゃるんですか?」
鮫島の煙を嗅いだ満が咄嗟に質問をすると鮫島は首を傾げた。
「えぇ、甘ったるい物もメンソの香りもあまり好まないんでね。長い事もうずっとこればかりですね。...この煙草がどうかしましたか?」
疑問で返す鮫島に満は「いえ、深い意味はないです。」と言ったあとその煙草を一本貰いたいと強請った。
「お父様の会社は継がれないんですか?」
お互いにしばらく煙草を吸いながら携帯を弄っていたがその沈黙を破って満が話しかけた。
鮫島は下のテラスで酒に酔って揉めている人たちを見ながらクスリと笑った。
「幼いの頃は父の仕事を継ごうとは思っていたんですよ。ただ過去に、自分より年下の少年に言われた事をきっかけにそれを辞めたんです。自分で会社を立ち上げてそれでやっていこうとね。でも案外私にはこれが向いていたのかもしれません。働きたい時に働いて休みたい時に休む、そう言ったこの仕事のスタイルがね。」
そう話す鮫島に釣られて満も下に目を落とすとその喧嘩をしていた父親たちを止めに入った息子らしき人たちもまたそこで口論をしていた。
「......彼ら大丈夫ですかね。」
少し心配そうに見つめる満を流し見ると鮫島は「それは本心ですか?」と先程までとは違った冷たい口調で言い放った。それに驚いた満がパッと鮫島を見ると鮫島は手すりにもたれかかりながらニヤッと笑った。
「私はあまり同情とか偽ったことを言うのは本意じゃないんです。だからあー言った人を見ても蛙の子は蛙、親があんな人間だとその子供もお里が知れてるとそう思ってしまうんですよ。」
またしても見透かしたように話をする鮫島がまるで自分のことを言っているような気がして腹を立てた満は意地が悪そうに言い返した。
「どこの社長だってきっと綺麗なやり方をしていませんよ。きっと要さんのお父様もね...人を蹴落として這い上がってきたようなそういった人生だったと思います......しかしそーなると要さんもそう言う人間だと言うことに...そうなってしまいますよ。」
なんと返してくるか見ものだと思っていた満は鮫島の顔を見て不気味な笑みを浮かべたが、そんな満の期待を裏切るかのようにあっさりと鮫島は首を縦に振った。
「えぇ。だから私も汚れた人間だと自覚していますよ。そんな褒められたような半生を送ってきたとも思っていませんしね。でもあまりにもバカ真面目に過ごしていたって面白くない。少しばかりスリルと絶望があった方が素敵だと思いませんか?」
そう言うとバルコニーから中に戻る鮫島の後を満は無意識に追っていた。
父親に先に帰ることを伝えた鮫島を見送ると言って、満もまた一緒に会場を出た。たわいもない話をしながら人気がなく暗くなった場所に着いた時、まるで自分たちを待っていたように奥から車が一台近づいてきた。
その車を見た鮫島がニヤッと笑みを浮かべると口を開いた。
「すみません、このままもう少し満さんと話をしていたかったのですが、生憎ペットが寂しがって私の迎えに来たようです。」
そう言って頭を下げる鮫島に前も言っていた犬がどんな犬種なのかワクワクしていると、後部座席のドアが開き満はそちらに目を向けた。しかし出てきた人物を見て満は言葉を失った。
「......え。」
その人物は外に出ると無言で鮫島の首に手を回し、抱きしめてそのまま顔を上げた。それに答えるように鮫島は顎を持つとキスをして舌を絡めた。
「帰るまで待てなかったか?全く...大切な友人が目の前にいるのにそんなんでいいのか。」
そう言われて満の方を見た慶もまた満と似た表情を浮かべた。
「みつ...る......なんでここに...?」
「いや、慶こそ...なんで......。」
沈黙を破るように鮫島は「家に帰って詳しく教えてやる。車に乗れ。」と慶に言い車に乗せた。
満は慌てて慶を呼び車から降りて自分と話をするように伝えたが、慶から返ってきた言葉は「ごめん。」それだけだった。
不安と焦り、悲惨な顔をして外に立つ満の顔を鮫島は冷ややかな目で見ると、
「ではまたお話しましょう。有城満さん。」
と声をかけて車を出させた。
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