【完結】フィクション

犀川稔

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8話 心配性彼氏

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「芦野くんおはよう!」
 学校に着いて早々、佐々木くんが絡んできた。
「芦野くん次移動教室だよ!」
「芦野くん今日俺授業でこの問題当たるんだけどさ!」
「芦野くん芦野くん!」
 朝からずーーっと絡んでくるなぁ佐々木くん......。赤城から聞いてて何となく覚悟はしてたけど、何でこの人こんなグイグイくるんだ?
 恋に話しかけ続ける佐々木に赤城がため息を漏らした。
「お前さー、だるすぎ。」
 赤城が恋と佐々木の中を割って入り恋の机に腰掛けた。
「いいじゃん仲良くなりたいだけのやつじゃん。」
「いきなりすぎって言ってんだよ。」
「別にそんな入り込んだ事聞いてるわけじゃないしいいじゃん。それにこの前言ってたような話も振ってないよ?」
「それは当たり前だ。」
 二人の会話に困惑する恋。
「なんの話?」
「いや、芦野は気にしなくていい話。耳が腐るから聞かなくていいよ。」
 明らかに恋には柔らかくなる口調に佐々木が笑った。
「まじでおもろい。なーんで俺こんなわかりやすいのに気づかなかったんだろ。」
「......視野が狭いからじゃないですか?」
 佐々木の発言に威勢よく仲川が突っ込んだ。
「何でそんなあたりきついん?」
「先週L◯NE交換したお二人のせいで俺の素晴らしい金曜の夜が散ったのでその腹いせです。」
 呆れながら話す仲川に爆笑する佐々木。
「あれからめっちゃ気になって、なかなか連絡返してくれない仲川に俺電話までしたからね!仲川すんげぇ嫌そうに喋ってんのガチおもろかったわ!」
 一人明らかに元気すぎる佐々木を遠くから新山は眺めて笑っていた。
「つかさ!気づかなかった俺が悪いんじゃなくてさ、影薄い芦野くんが悪いくないか?」
「おい待て、芦野は影薄くないだろ。むしろ濃すぎて輝いてるわ。」
 佐々木の言葉に赤城は速攻訂正を入れた。
「...え、こいつ芦野絡むとこんななの?」
「......です。」
 佐々木と仲川は呆れて哀れな目で赤城を見た。
 恋は慣れない環境にあたふたし、ずっと黙って会話を聞いていた。
 それに気づいた赤城が恋の肩をトントン叩いた。
「ごめん話しづらい?俺らあっち行こうか?」
「あ、んーん。大丈夫!それよりこの前言ってた出かける場所の話なんだけどさ...。」
 気にせず二人で話し出す恋と赤城を佐々木たちは温かい目で見守った。
 その佐々木を見ていた仲川は「意外といい奴なんだね佐々木って。」と言った。その言葉に佐々木は仲川を見た。
「心配だったんでしょ、二人が。芦野ってあんな性格だから佐々木から話かけないと絡まなかっただろうし、無理やりにでも近づいて普通に接していけるようにしてんのお前普通にいいやつじゃん。」
 自分の考えを見透かしたように話す仲川に佐々木は「意外は余計だわ。」と笑って叩き新山たちの方に戻って言った。そのあと赤城も恋と話終えてから同じように帰った。

「お前ら何で最近芦野くんとか仲川くんにだる絡みしてんの?」
 さっきの二人を見ていた新山が聞いた。
「俺は赤城のマネ。」
 ヘラヘラ答える佐々木と「何となく。」言う赤城。
 新山は「へぇー。」と、どうでもよさそうに流した。
「......いや、興味ないなら聞くな。」
 そう赤城が新山に言うと「うーん」と少し考えてから口を開けた。
「んー、興味ないと言うかさ。今日見てて思ったんだけど芦野くんってあれ可愛い系だよね。あれは男でも抱けるって言うやついると思うわ。」
 悪意のない新山がジュースを飲みながら話した。佐々木は「おっと...?」と赤城の方を見ると明らかに機嫌を悪くする赤城がいた。
「...だからなに?」
「え?」
「抱けるからなに?」
「特に意味はないよ。まあそう言うやつも居そうだよねって話。さっきもここ来る前、廊下で見たことない男の先輩に話かけられてて距離バカ近くて芦野くん明らか困ってるの見かけたわ。あの見る目は結構そっち系だった気がするわ。男の勘ってやつ?ま、俺は千隼しか興味ないけどねー。」
 新山が携帯をいじりながら話し、顔を上げると赤城の姿がなかった。
「あれ、あいつは?」
「あー...急用らしいよ?お前の話の途中で消えてったわ。」
 佐々木が笑って答えた。
「んだよ、あいつが聞いてきたから答えたのに。......あ、千隼テスト落ち着いたらしいわ。今日お前んち行くわー。」
 そこから二人は話題を変え話し出し、チャイムがなって教室に戻って行った。

 赤城は走って来た道を戻っていった。
 職員室前の廊下にきた時、恋の姿を見つけた。
「芦野?」
 咄嗟に声をかけると恋は吃驚したあと微笑んで赤城の方に歩いて来た。
「赤城どうしたの?息切れてるけど。走ってきたの?」
「うん。」
 首を傾げてきょとんとする恋に赤城が話した。
「先輩は?さっきまで一緒にいたんでしょ?」
「......先輩?あー...美化の副委員長のことかな?さっきまで一緒にいたよ!」
「なに用?」
 真顔で恋を見る赤城に恋は困惑しながら説明した。
「この前の委員会で今度やるって言ってたグラウンド傍の花壇の植え直し再来週になったんだってさ!で全クラスは多いから二人出れるクラス聞いて回ってるんだって。金曜って言ってたから赤城バイトないよね?一応わかったら言いに行くって伝えたんだけど。」
 淡々と話す恋に赤城は下を向いた。
「赤城?」
 恋が赤城を覗き込むと、赤城は恋の事を引っ張って空き教室まで連れて行った。
 突然の事で動揺する恋を壁に押しつけて深刻な顔で聞いた。
「それ距離詰めて話すこと?」
「え...?」
「友達から聞いた。それ話してる時その先輩と距離近かったって。」
 恋は少し考えてから、赤城の頬に両手を当ててじっと見つめた。
「ピアス...。」
「え?」
「ピアスがね、今日の赤城のと同じ丸いのに輪っかがついてるやつだったの。だから僕の恋人もそれに似たのつけてましたって話したの。それでその先輩がこれ?って近くで見せてくれたから、その一瞬だけ近かったかも...?でもそのあと近くからなかなか動かない先輩が怖くなってすぐ離れたよ。......思い当たるのだとそれかも...。ごめん。」
 一生懸命話す恋を見て赤城が「本当にそれだけ?」と聞いた。
「うん、それだけ。さっき聞かれた時すぐ言わなかったのは、よそで赤城の話持ち出して話してるって知られたら赤城にうざいって思われるかなって思ったからで......。」
 あたふたしながら話す恋を赤城は抱きしめた。
「......赤城怒った?」
「んーん、怒ってない。愛おしいって思った。」
「ほんと?」
 心配そうに見る恋にキスをして「うん。」と、赤城が言った。

「......いきなり押しかけて尋問じみたマネをして、すみませんでした。」
 落ち着いてから赤城が恋に言った。
「いやいや、誤解が解けてよかった。それより僕も一瞬とは言えど、その時距離近かったかもごめんね。」
 恋が珍しく赤城の頭を撫でた。
「......え?」
「いつもの赤城の真似してみた!僕ね、赤城に撫でられんの好き。すごく安心するし赤城に触られるの気持ちい。......だからこれからもたくさん触って?」
 恋が微笑んで話した時チャイムが鳴った。
「あ...そろそろ行かな...っ。」
 赤城は立ち上がる恋の手を引っ張った。
「それ...、わかって言ってんの?」
「えっ...?」
 不意に冷たい声を出した赤城に驚いて恋は赤城を見た。と、同時に赤城はキスをして恋の唇を舐めた。
「...っ。」
 恋はいきなりの事で動揺して顔を赤くしたまま固まった。
「あんま...俺を調子に乗らせんな。」
 そう言って抱きしめたあと恋の手を離した。
「教室、帰るよ。...あと委員会の話、俺が伝えに行くから芦野は言いにいかなくていいよ。」
 赤城はそう言って恋を連れて部屋を出た。

 恋は教室に着いても緊張が解れず、ずっと一点を見つめていた。
 ...心臓止まるかと思った......。あんな赤城見た事なかったし、なんか僕変な事言ったかな...。でも怒ってる感じじゃなさそうだったし。にしても......至近距離の赤城。イケメンすぎて心臓に悪いって...。
 恋は熱い顔を両手で触って手で仰いで冷やした。その姿を見ていた赤城は満足そうに微笑んでいた。
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