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七
71話 クリスマスの朝
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朝6時過ぎに自然と目が覚め身体を起こした。リビングに降りて準備されていた朝食を食べながらテレビをつけると、どこの番組もクリスマス特集をやっていた。
「...そういえば今日どこに行くんだろう。」
当日のお楽しみだとか言って教えてくれなかったけど本当に言葉通り、全任せでよかったのだろうか。優柔不断なおれからすると決めてくれるのはすごくありがたいことではあるけれど、正直新山さんに負荷がかかりすぎている気もしてつい悩み込んでしまった。
しばらくして兄貴が降りてくると、クリスマスの話題で盛り上がるテレビに釘付けになるおれを見てニヤニヤしながらしれっと録画していたドラマに変えた。
「...観てたんだけど。」
「知ってる知ってる!リア充うぜぇから少しでも朝から気分害してやりたくてさ、わざとわざと!!」
「...まじでやることキモイな。」
呆れたようにため息を吐くとパンを食べ切った後で冷蔵庫から牛乳を取り出しコップに注いだ。
「今からいくら頑張っても背は伸びねぇと思うぞ。諦めろ、例え160センチ台でも全然誇れるって!」
「別に身長伸ばすために飲んでるわけじゃないし...それに一応言っておくけど調子いい日は170あるよ。心外だからやめて、今日は一段とウザさ増してるね。」
「そらそーでしょ。世間はバカどもがウハウハしてんのに何が楽しくて男数十人で騒ぐんだよ。だりーな。ま、どうせならパーッと派手にやるつもりだけどな!」
そう言ってヘラヘラ笑いながら佐々木はキッチンにあった菓子パンを手に取って部屋に戻っていった。
千隼は勝手につけていかれたドラマを消すと、自分も部屋に戻っていった。
服は数日前から天気予報を入念に確認して決めていた。荷物だって何度もチェックしたし、巻いていくマフラーだって毛玉がないかちゃんと確認もした。事前準備に抜かりはなかった。強いて言うなら問題は一つだけ。
「......時間が余り過ぎた。」
それもそうだ。
昼集合のはずがこんな朝っぱらに用意が終わってしまえば時間を持て余すに決まっている。何をしようと悩んでいると携帯が鳴り画面に目を向けると相手は新山だった。
「メリークリスマス。おはよう、楽しみすぎてつい早起きしちゃったよ。会えるのめっちゃ嬉しい。今日も好きだよ。」
いつもの調子で来たそのメッセージに「おはよう。」と返事を返すと千隼はメッセージを読み返して笑みを浮かべた。
新山さんは何の躊躇もなくいつも“好き”とか”愛してる“とか愛情表現をしてくれる。最近はそれに慣れてきた分、俺も同じくらい言ったり返したりしないとと思うことが減った。それは新山さんがおれに言ってくれた言葉が理由だった。
「俺はど直球に気持ちとか伝えちゃうかもだけど、千隼は自分のペースでいいからね。わざわざ言葉にしなくても気持ちは伝わってるし焦らなくて全然問題ないからね。」
その話に甘えてしまい、おれは今みたいに流すようになっていった。
千隼は少し悩むとスッと立ち上がりテーブルの引き出しに入っているレターセットを取り出した。
「......いきなり手紙とか...気色悪いって思われるかな。」
そんなことを考えながらしばらく悩むと、渡すかは別としてとりあえず書いてみようと決意し椅子に座って文字を書き進めた。
便箋一枚にしてかけた時間は1時間ちょっとだった。果たしてこれが長いのか短いのかはわからないけれど、たくさんの気持ちを込めて書いたと言うのは確かだった。丁寧に封筒に便箋を入れるとその手紙をカバンの中にしまった。
一段落してベットで伸びようと思っていた時に玄関のチャイムが鳴り2階の廊下にあるドアホンで誰だか確認をした。
「...え。」
そこに立っていたのは新山さんだった。おれは急いで階段を駆け降りると玄関のドアを勢いよく開けた。
「うおっ、勢いいいね、びっくりした。おはよ~。今日も可愛いねぇ。」
「なんでなんでっ!まだ時間早くない!?」
「あれ、L◯NE見てなかった?既読ついてたからてっきり見たものかと...。」
「...?」
そう言われてポケットから携帯を出すと、開きっぱなしになっていた新山のトークを見た。
“今知ったんだけど、人身事故で電車止まってるらしい。どうなってもいいように早めに合流しておきたいから家行ってもいい?”
「...ごめん、全然気づかなかった。来てくれてありがとう。」
申し訳なさそうに千隼がそう言うと新山は笑って千隼の頭を撫でた。玄関入ってすぐのところでそんなことをしていると、また玄関ドアが開き父親が帰ってきた。
「あ、父さんおかえり。」
「お邪魔してます。」
「あぁただいま。いらっしゃい、えっと......こんなところで話してないで中に入ってもらったらどうだ?」
なんとも言えない気まずい雰囲気に父親がそう口を開くと、千隼は新山の手を引いてリビングに連れていった。
リビングに招かれた新山はソファに腰掛けるとソワソワする千隼をさておき2階の自分の部屋に籠る佐々木にL◯NE送った。
「気まずさMAXだからお前も来て。マジで頼む。」
スーツから私服に着替えを済ませた父親もダイニングチェアに腰をかけ、チラチラと千隼と新山の様子を伺っているようだった。たまらず佐々木に助けを求めようと追いL◯NEをした新山だったけれど、助けるどころか佐々木はふざけて自分の変顔を送ってくる始末だった。
「絶対に後で絞める。」と心に誓った新山は携帯をポケットにしまうとその気まずい中を断ち切るべく立ち上がった。
「ご挨拶遅れてすみません。息子さん...千隼くんとお付き合いさせて頂いてる新山秋冬です。お兄さんである楓くんと同じ歳で同じ学校に通っています。よろしくお願いします。」
はっきりと関係性を明かした新山に驚いた父親はぽかんと口を空けて話を聞いた後で新山に柔らかく笑いかけた。
「そんな改まらないでくれ。このままでは私もきっちりした自己紹介をしないといけなくなってしまうじゃないか。...楓から聞いたよ。今日は外出に千隼を連れていってくれるんだろう?手のかかる子かもしれないが懲りずに是非よろしく頼むよ。もちろん今日だけじゃなく今後ともね。」
考えてもいなかった返答が返ってきた新山驚いて動揺しているとそのタイミングで佐々木がリビングに入ってきた。
「お、初対面上手く会話できた感じ~?まじで父さんの帰ってくるタイミングバッチリすぎでしょ!二階から見てたけど流石に爆笑もんだったわ!」
この状況で一人腹を抱えて笑う佐々木を見て全てを悟り、新山は軽くど突いた。そんな新山と佐々木のやりとりを見て千隼と父親は笑うと、その後は四人で1時間程リビングで話をして盛り上がった。
「...そういえば今日どこに行くんだろう。」
当日のお楽しみだとか言って教えてくれなかったけど本当に言葉通り、全任せでよかったのだろうか。優柔不断なおれからすると決めてくれるのはすごくありがたいことではあるけれど、正直新山さんに負荷がかかりすぎている気もしてつい悩み込んでしまった。
しばらくして兄貴が降りてくると、クリスマスの話題で盛り上がるテレビに釘付けになるおれを見てニヤニヤしながらしれっと録画していたドラマに変えた。
「...観てたんだけど。」
「知ってる知ってる!リア充うぜぇから少しでも朝から気分害してやりたくてさ、わざとわざと!!」
「...まじでやることキモイな。」
呆れたようにため息を吐くとパンを食べ切った後で冷蔵庫から牛乳を取り出しコップに注いだ。
「今からいくら頑張っても背は伸びねぇと思うぞ。諦めろ、例え160センチ台でも全然誇れるって!」
「別に身長伸ばすために飲んでるわけじゃないし...それに一応言っておくけど調子いい日は170あるよ。心外だからやめて、今日は一段とウザさ増してるね。」
「そらそーでしょ。世間はバカどもがウハウハしてんのに何が楽しくて男数十人で騒ぐんだよ。だりーな。ま、どうせならパーッと派手にやるつもりだけどな!」
そう言ってヘラヘラ笑いながら佐々木はキッチンにあった菓子パンを手に取って部屋に戻っていった。
千隼は勝手につけていかれたドラマを消すと、自分も部屋に戻っていった。
服は数日前から天気予報を入念に確認して決めていた。荷物だって何度もチェックしたし、巻いていくマフラーだって毛玉がないかちゃんと確認もした。事前準備に抜かりはなかった。強いて言うなら問題は一つだけ。
「......時間が余り過ぎた。」
それもそうだ。
昼集合のはずがこんな朝っぱらに用意が終わってしまえば時間を持て余すに決まっている。何をしようと悩んでいると携帯が鳴り画面に目を向けると相手は新山だった。
「メリークリスマス。おはよう、楽しみすぎてつい早起きしちゃったよ。会えるのめっちゃ嬉しい。今日も好きだよ。」
いつもの調子で来たそのメッセージに「おはよう。」と返事を返すと千隼はメッセージを読み返して笑みを浮かべた。
新山さんは何の躊躇もなくいつも“好き”とか”愛してる“とか愛情表現をしてくれる。最近はそれに慣れてきた分、俺も同じくらい言ったり返したりしないとと思うことが減った。それは新山さんがおれに言ってくれた言葉が理由だった。
「俺はど直球に気持ちとか伝えちゃうかもだけど、千隼は自分のペースでいいからね。わざわざ言葉にしなくても気持ちは伝わってるし焦らなくて全然問題ないからね。」
その話に甘えてしまい、おれは今みたいに流すようになっていった。
千隼は少し悩むとスッと立ち上がりテーブルの引き出しに入っているレターセットを取り出した。
「......いきなり手紙とか...気色悪いって思われるかな。」
そんなことを考えながらしばらく悩むと、渡すかは別としてとりあえず書いてみようと決意し椅子に座って文字を書き進めた。
便箋一枚にしてかけた時間は1時間ちょっとだった。果たしてこれが長いのか短いのかはわからないけれど、たくさんの気持ちを込めて書いたと言うのは確かだった。丁寧に封筒に便箋を入れるとその手紙をカバンの中にしまった。
一段落してベットで伸びようと思っていた時に玄関のチャイムが鳴り2階の廊下にあるドアホンで誰だか確認をした。
「...え。」
そこに立っていたのは新山さんだった。おれは急いで階段を駆け降りると玄関のドアを勢いよく開けた。
「うおっ、勢いいいね、びっくりした。おはよ~。今日も可愛いねぇ。」
「なんでなんでっ!まだ時間早くない!?」
「あれ、L◯NE見てなかった?既読ついてたからてっきり見たものかと...。」
「...?」
そう言われてポケットから携帯を出すと、開きっぱなしになっていた新山のトークを見た。
“今知ったんだけど、人身事故で電車止まってるらしい。どうなってもいいように早めに合流しておきたいから家行ってもいい?”
「...ごめん、全然気づかなかった。来てくれてありがとう。」
申し訳なさそうに千隼がそう言うと新山は笑って千隼の頭を撫でた。玄関入ってすぐのところでそんなことをしていると、また玄関ドアが開き父親が帰ってきた。
「あ、父さんおかえり。」
「お邪魔してます。」
「あぁただいま。いらっしゃい、えっと......こんなところで話してないで中に入ってもらったらどうだ?」
なんとも言えない気まずい雰囲気に父親がそう口を開くと、千隼は新山の手を引いてリビングに連れていった。
リビングに招かれた新山はソファに腰掛けるとソワソワする千隼をさておき2階の自分の部屋に籠る佐々木にL◯NE送った。
「気まずさMAXだからお前も来て。マジで頼む。」
スーツから私服に着替えを済ませた父親もダイニングチェアに腰をかけ、チラチラと千隼と新山の様子を伺っているようだった。たまらず佐々木に助けを求めようと追いL◯NEをした新山だったけれど、助けるどころか佐々木はふざけて自分の変顔を送ってくる始末だった。
「絶対に後で絞める。」と心に誓った新山は携帯をポケットにしまうとその気まずい中を断ち切るべく立ち上がった。
「ご挨拶遅れてすみません。息子さん...千隼くんとお付き合いさせて頂いてる新山秋冬です。お兄さんである楓くんと同じ歳で同じ学校に通っています。よろしくお願いします。」
はっきりと関係性を明かした新山に驚いた父親はぽかんと口を空けて話を聞いた後で新山に柔らかく笑いかけた。
「そんな改まらないでくれ。このままでは私もきっちりした自己紹介をしないといけなくなってしまうじゃないか。...楓から聞いたよ。今日は外出に千隼を連れていってくれるんだろう?手のかかる子かもしれないが懲りずに是非よろしく頼むよ。もちろん今日だけじゃなく今後ともね。」
考えてもいなかった返答が返ってきた新山驚いて動揺しているとそのタイミングで佐々木がリビングに入ってきた。
「お、初対面上手く会話できた感じ~?まじで父さんの帰ってくるタイミングバッチリすぎでしょ!二階から見てたけど流石に爆笑もんだったわ!」
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