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8◆ルート視点

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その日、魔王城に不届き者がやってきた。

「魔王ロベルト!誘拐した村人を返すんだ!!」

「帰れぇ」

「はーい!……って、帰るか!?というか、貴様は?」

「拐われた村人と勘違いされている村人のルートです」

「え?」

玉座の間にやってきた男達(自称勇者一行)は、ロベルトの膝に座る僕に困惑の眼差しを向けた。

というか、意外とノリがいいね!

しかし、ノリがよくても僕はロベルトを悪者扱いする人が嫌いだよ。

確かにロベルトは恐れられている魔王だけど、無実で責めるなら僕が容赦しない!

ただの村人だって、その気になれば強いんだぞ!

モヤシ体型ナメるな!

僕は不届き者達を撃退するため、今日はロベルトの膝で待機という役得を得ていた。

ロベルトの膝……素敵……はぁはぁ。

「えっと……拐われて洗脳されたのか?」

「失礼ですね!僕の長年のロベルト愛を洗脳扱いするなんて、僕が如何にロベルトを愛しているか、1から100まで聞いてもらうしかないようですね!」

「え……いや………」

「返事ははいかイエスしか認めない!!」

「「「はい!?」」」

こうして、僕VS勇者一行の長い戦い(?)が始まった。



1時間後。

「ロベルトはスイーツを食べると、恋する乙女のように可愛くて………」

2時間後。

「ロベルトの肌は………」

3時間後。

「ロベルトに………」

4時間後。

「ロベルトが………」



5時間後。

「ま…まだ終わらないのか?」

「まだ半分も語っていません!」

ちょっとやつれてしまっている勇者一行と、顔を真っ赤にして俯くロベルト。

原因は、僕が如何にロベルトを愛しているかを長々と語っているからだ。

だが、止めない!

ロベルト愛を語り足りないし、しっかり愛を理解してもらうために、僕は何時間でも語り続ける。

例え、ロベルトのメンタルがキャパオーバーを迎えても、勇者一行の魂が口から抜け出しても、問答無用で語ってやる!

あ、宰相さんと護衛の人達はいつの間にか逃げていた。

最初は玉座の間にいたけど、仕事があるからって逃げていった。

僕のロベルト愛をもっと聞いてほしかったなぁ。



13時間後。

何度か執事が軽食を持ってきてくれて、食事をしながら語ったり、トイレは浄化魔法の応用で済ませてもらった。

「あの……もうわかったから………」

「まだやっと半分ぐらい語ったところです。ちゃんと最後まで聞きなさい」

僕のロベルト愛は、結局翌日の夜まで続いた。

勇者一行が、何故か干からびたミイラみたいにやつれていたけど気にしない。

ロベルトは真っ赤になって気絶していたけど、可愛いからキスしておく。
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