探偵は胸を揉む:偽りの依頼人

リチャード裕輝

文字の大きさ
2 / 11

第二話:閉鎖空間の成立と探偵の条件

しおりを挟む
第二話:閉鎖空間の成立と探偵の条件

リビングに通された四人は、まずは濡れた上着を脱いだ。ユウキが携帯電話を試みたが、やはり圏外。数分後、タケルが外の状況を確認しに戻ってきた。

「最悪だ……。山道が土砂崩れで完全に塞がれてる。車も通れない。この雨じゃ、夜明けまで動けそうにない…泊まらせてもらえないでしょうか!」

タケルが必死の形相で奏太に頼み込んだ。

「ダメだ」奏太は即座に拒絶した。過去の誓いが、彼の喉を締め付ける。

だが、リナとアオイの怯えた表情が、彼の決意を打ち砕いた。この外界から隔絶された空間で、彼らを無責任に放っておくことは、事件を見過ごすことと同じだ。奏太は、再び「業」に身を委ねることを悟った。そのためには、能力を行使するための介入権が必要だった。

「……仕方がない。泊まることを許可しよう。ただし、条件がある」

奏太は、冷徹な視線でユウキを見据えた。

「第一に、俺の部屋と書斎には決して入るな。第二に……」

奏太は言葉を切り、無遠慮にリナとアオイの二人の女性を見つめた。特に、能力の発動条件そのものであるリナの豊かな胸元に、意図的に、長く視線を止めた。

「第二に、女性二人は、この閉鎖された山荘では、俺の指示に従ってもらう。何か手伝いを頼んだら、拒否しないことだ」

タケルが激昂した。「え、おい、まさか変なことしようとかじゃないよな? この状況につけこんで…!」

タケルが前に出ようとするのを、ユウキが静かに制した。ユウキは、奏太の顔をじっと見つめ、タケルの軽薄な推測とは全く違う、深遠な意図を読み取ろうとしていた。

そして、ユウキは、まるで奏太の意図の「本質」をすべて理解したかのように、優雅に笑った。

「良いですよ。皆さん、命の恩人であり、この館の主人だ。人として当然の礼儀でしょう」

ユウキはリナとアオイに視線を向け、命令を下すように付け加えた。

「リナ、アオイ。久我さんの言うことは聞くように。お世話になるんだからな」

ユウキは、さらに笑みを深くし、冗談めかした口調で、奏太の顔を覗き込んだ。

「それに、久我さんは長い間、一人でこの山荘にいるんでしょう? 人肌恋しいかもだから、仮に夜伽(よとぎ)と言ったら、ちゃんとするように」

その言葉は、奏太の心臓を冷たく穿った。この男は、俺の提示した「女性への指示権」という条件の裏に潜む、俺の「呪い」の片鱗に、限りなく近づいている。

山荘は外界と隔絶されたクローズド・サークルと化した。そして、奏太が設けた「女性への条件」は、この閉鎖空間において、その意味を強く帯び始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

会社員の青年と清掃員の老婆の超越した愛

MisakiNonagase
恋愛
二十六歳のレンが働くオフィスビルには、清掃員として七十歳のカズコも従事している。カズコは愛嬌のある笑顔と真面目な仕事ぶりで誰からも好かれていた。ある日の仕事帰りにレンがよく行く立ち飲み屋に入ると、カズコもいた。清掃員の青い作業服姿しか見たことのなかったレンは、ごく普通の装いだったがカズコの姿が輝いて見えた。それから少しづつ話すようになり、二人は年の差を越えて恋を育んでいくストーリーです。不倫は情事かもしれないが、この二人には情状という言葉がふさわしい。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様を書いたストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...