清純派彼女には秘密なんて無い、よね?

茜琉ぴーたん

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おまけ

めざめ

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矢作やはぎさん、ちょっと言いづらいんだけど…スカートに下着のラインが透けて不格好だわ。目立たないようにしてくれる?」
 それは、茉莉花まりかが先輩から受けた初めての苦言だった。
「は、はい。気を付けます」
澄まして応えてはみたものの、彼女は内心恥ずかしさと腹立たしさで震える。
 人に隠れている部分のことを指摘されるなんて大変な侮辱だと感じたし、隠しているのだからその中を窺うような言動をされることは正直嫌だった。
「(…何を穿いたら良いんだろう…)」
 茉莉花は今日に限らず普段から臀部でんぶをすっぽり包むショーツを穿いており、最近は女性誌で見たガーターベルトとストッキングを合わせている。誌面ではモデルは布地の少ないパンティを穿いていたけれど、茉莉花はそれは恥ずかしく踏み切れずにいたのだ。
「(パンストに戻そうかな…でもあれ動きにくいしなぁ)」
 これまでは従来のショーツとパンティストッキングで問題は無かったのだが、先月から勤め先の制服が変わった。ズドンとしたものからマーメイドラインのピタッとしたスカートになり、それはヒップから脚のシルエットがより美しく映えるよう考えられたものらしい。

 とりあえずは情報収集だ、茉莉花は自宅でショッピングサイトを巡り、評価の高いパンティを見つけて早速ポチッと購入した。



 翌日夜。帰宅するとポストにはメール便で下着が届いていた。
「速いなぁ………わ、ちっさ…穿いてみよ………これ、……えー…」
 初めてのTバックの感想は「みっともない」で、これならば裸の方がマシだと思うほどに自身の尻は貧相だった。
 茉莉花は痩せ型で、それほど全身に肉が付いていない。細いと褒められて嫌な気はしないのだが、想像していた『ぷりんとしたお尻』ではないためにまぁまぁのショックを受ける。
「これ……あ、でもスカートには響かないか……機能的ではあるか……うーん?んー…」
 股から毛ははみ出すし心許ないし、それから数回穿いてみたもののあまり良い物には思えなかった。

 しかし透け対策は講じねばならないから、茉莉花は程良く隠して響かないパンツを求めてネットサーフィンを繰り返す。
「これは?あー、レースか…破れちゃいそうだな……いっそガードル?うーん………あ、」
 数々の下着のページを渡り歩いてしばらく、飽きてサイトのトップページをぼんやり眺めていたらとある特集バナーが目に入った。
「…………可愛い…」
 女性の下着は綺麗で可愛くあって当然だが、そこに展開されているのはふわふわとしながらも際どいラインを攻めるランジェリーであった。
「えっち……こ、これ、え、隠してないじゃん、おっぱい見えちゃう……でも可愛い……コスプレなのかな…」
 乳頭を隠す気の無いブラジャー、見える前提のオープンクロッチショーツ。
 この場合の『機能』とは何ぞやという気持ちで茉莉花は全商品チェックした。
 ギラギラとしたエロティックさは薄くてキュートなデザインのものが良い。でも休みの日に着るなら派手なものでも良い。
 未だ男性経験の無い茉莉花ではあるが、何となく人に見られる前提で下着を選んでみる。
 何品か買い物カゴに入れては出して自分が着た姿を想像しては諦めて、結局は実用的かつ装飾性の高いセットを買うことにした。


 そして初めてそれを着けて出勤した日。
 更衣室でいつもと同じように制服スカートに穿き替える際、端の姿見に映る尻にポッと頬を赤らめる。
「(セクシー…?でも可愛い…私のお尻、可愛い…♡)」
 食い込むほどではないがピチッとフィットした腰紐、尻の割れ目を薄く隠すバックレースは目論見通りタイトなスカートの表に響かなかった。
 誰にも言えないけれど良い感じ、ブラウスの奥には揃いのブラジャーも息を潜めている。
「(背筋が伸びるというか…ドキドキしてやる気になる感じ…不思議…)」
 新しいものを身に着ける時は心が高揚するものだが、外から見えない下着の"秘めたる美しさ"みたいなものは茉莉花の自信となった。
 一撃を隠し持つ優越感と自信、好きなものに包まれる幸福感。
 るんるんと高まるテンションは茉莉花の華やかさの一助となり業務態度にも表れる。上や客からの受けも良くなったし毎日が楽しくて充実した日々が続いた。


 そんなある日…茉莉花は職場の同僚に誘われた合コンに出掛ける。どうせ見せないけど可愛いのを着けて行こう、と茉莉花は持っている中でも一番セクシーなランジェリーセットを選び服で隠した。
「呑まないの?矢作さん」
「あ、私、お酒はすごく弱いので…鈴川すずかわさんは?」
「そこそこ…矢作さんはネイルしないの?」
「してますよ、薄いピンク。ここ薬指だけストーンで、ひっそりオシャレです」
「ほんとだ。…奥ゆかしいなぁ…可愛い」
 席替えをして隣になった男性はサラッとしているが優しそうで、接客業をしているというだけあって話が上手ですぐに意気投合する。
 これが後々彼氏となるそらなのだが、連絡先を交換し数回デートを重ねて、二人は交際することとなった。
 空は過去の元カノに連続で浮気されて振られた経歴があることから、身持ちが固い女性でなければ難しいという拘りがある。
 そんな彼の恋愛観を聞いた茉莉花は下着で遊ぶ趣向を言い出せる訳も無く…同棲を前に、清純なイメージを守ろうと彼女はランジェリーコレクションをスーツケースへと仕舞い込んだ。


「茉莉花はいつもきっちりしてるね」
「そうかな、ふふ」
 信頼関係が出来上がりつつあってもあのランジェリーを見せたら「阿婆擦あばずれが!」と変な勘繰りをされてしまうのではないか。肌の露出も極力抑えた茉莉花はひっそり思い悩む。
 可愛いランジェリーで飾った可愛い自分を見て欲しい、しかし言い出せぬまま二人の暮らしは1年が過ぎた。



 そしてあの日。
「(今日のエッチ、あのセット着てみようかな…)」
風呂上がりの茉莉花は、覚悟を決めて寝室へと忍び足で向かうのだった。



おしまい
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