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しおりを挟む「茉莉花、ごめん!許してくれ‼︎」
玄関を入って茉莉花を先に上がらせて、俺はポーチに膝をつき額を土足ゾーンに限りなく近付ける。
パフォーマンス臭くていけないか。でもなるべく早く謝りたかったし、この先の話し合いに持ち込むために喉を慣らしておきたかった。
「…空くん?」
「妊娠のこと、浮気を一瞬でも疑って悪かった。もう俺に冷めてるかもしれないけど、ちゃんと謝罪だけはさせてくれ。茉莉花を信用せず傷付けてすまなかった」
茉莉花はオロオロと俺を起こそうとして、けれど唐揚げがひとつ刺さった串を持っていたために俺に触れないようだ。
「分かったから、そういうのやめて。あっちで話そう」
「ごめん」
「食べながら聞くね」
「…うん」
結局、真剣さが減ってしまうようだが俺たちは食事をしながらそれぞれに思っていたことや不満なんかを交換した。
茉莉花は当然ながら不誠実な俺の言動に失望していたし、未だ「おめでとう」も「結婚しよう」も言われてないことに大変ご立腹であった。
そして俺の過去のことは理解しつつも、いつまでもそこで止まっていることが煩わしいのだとポテトを頬張る。
「元カノ元カノって、今カノの私がいながらいつまで囚われてるの。『浮気するな』って、人として当たり前のことをわざわざ釘刺されるのも嫌だった」
「ごめん」
「空くんはさ、私が好きなんじゃなくて『浮気しない女の子』が好きなのかな」
「そんなことない。でも正直言えば『浮気せず従順でちょっとエロい茉莉花』が好きだった。だから精力剤の力とはいえあんなエロい姿を見せられて興奮を通り過ぎて心配になってた。俺で満足しなかったら他所で発散するかもって」
俺のワガママで勝手な言い分を聞いて、茉莉花は
「今も昔も空くんしか知らないもん」
と油に濡れた唇を尖らせる。
「空くんしか知らないし、これからも知らなくて良い。私がエッチなのは認めるけど、それは空くんがそう育てたからでしょう⁉︎」
「潜在的なもんだろ」
「そうかもしれないけど!……良いよもう。空くんなんて知らない」
「あーごめん、茉莉花、俺がワガママだった。変に妄想働かせちまったんだ、許して欲しい。嫌だって言うなら出て行く、でもその子は俺の子だから…関わらせて欲しい」
テーブルで頭を下げたら揺れた拍子に皿がガチャンと音を立てて、茉莉花は煩わしそうに鼻でため息を吐いた。
今のこの時から尻に敷かれる覚悟だ。ゆっくり頭を上げて箸を持つ彼女の手を握る。
「…空くん、本気で、本気で軽蔑したよ」
「うん、当然だよ」
「違う人になっちゃったのかと思った」
「どうかしてたんだ」
「私と、お腹の子、また侮辱したら二度と許さないから」
「うん……ごめん、茉莉花…おめでとう」
俺が涙目で食事に戻ると、茉莉花は呆れた様子で
「それだけ?」
と無作法に頬杖をついた。
「あ、いや、コホン……茉莉花と子供を幸せにする。俺と結婚して欲しい」
「絶対だよ」
「任せろ」
「…信じるからね、空くん」
「あぁ…約束する」
この日から、晴れて俺は茉莉花の隣で寝ることを許された。
ベッドだからとかソファーだからとかの問題でなく、好きな人が横に居て呼吸音が聞こえるというのはとても安心するし快眠に効果がある。おかげで、もっと茉莉花と話そうと思っていたのに布団に入り5分ほどで俺は寝入ってしまったらしい。
翌朝の茉莉花曰く「電池切れみたいに急に静かになって面白かった」そうで…笑ってもらえたなら喜ばしいことだと思えた。
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