8 / 49
3・いけない管理職
8
しおりを挟む翌日、お互い早番の俺たちは始業前のカウンターにて鉢合わせた。
「おはようございます、笹目フロア長」
「おはようございます、常盤フロア長…寝られましたか?」
「…全くだ…そちらは?」
「私もです…興奮してしまって」
朝から何という会話だろう、朝礼を前に集まっている部下たちはまさか上司がこんな話題で心を燃やしているなんて分かるまい。
親しげだから仲を疑う者もいるかもしれないが、昨夜の出来事を予想できる者はそうそう居やしないだろう。
「……」
店長が号令をかけて朝礼が始まる。
接客用語の唱和と本日の達成目標を確認して解散したらそれぞれの売り場で個別ミーティングを行い、陳列を直したり埃を払ったりと各自開店を待つ。
俺の居る黒物…テレビ・レコーダー・オーディオ機器の売り場は店内一番奥の壁沿いに広がっていて、対角線上に売り場のある生活家電担当の彼女の姿はなかなか見ることができない。売り場それぞれにレジとカウンターがあるので、順番待ちをしたり空き時間に雑談をしたりということもあまり無い。
「(…これで仲良くなれたのが不思議だよなぁ…)」
接点といえば管理職としての会議とか休憩室での昼食時くらい、歳も近いし話は合うし頼り合っていたいたから気心は知れていた。
俺がカッターで指を切ってしまった時に絆創膏をくれてそれどころか丁寧に貼ってくれて、「お礼に」と菓子をあげて…今思い返せばベタ過ぎて恥ずかしい馴れ初めだ。
「(あの時は…まさか乳首にピアスが付いてるなんて…知らねぇし……あ、)」
カウンター内から売り場を眺めていると、生活家電売り場の方から彼女がこちらへ近付いて来る。おそらく俺の後ろにあるパソコンでメールや売り上げ情報を確認するのだろう。
ふわふわのボブヘアーと豊かな胸が軽やかに揺れて弾む、彼女は俺に気付くと口元だけニコリと笑んだ。
「(可愛いなぁ、ちくしょう…)」
33歳だからめちゃくちゃ若い訳ではない、身体だって最盛期よりは衰えて張りも減っていることだろう。
けれど俺は少なくとも1年前から今までの彼女しか知らない、キャピキャピうるさいだけの女よりも落ち着きある彼女の雰囲気がやはり好きだ。
「(あのおっぱい…の、先…)」
ぶるぶる揺れているあのベストの下、ワイシャツとブラジャーの奥には今日もピアスが刺さっているのか。
それを想像すると瞬間血が沸いて股間が反応した。
「やべっ…」
「どうされたんですか?」
カウンターまで辿り着いた彼女は慌てる俺を不思議そうに見つめる。
俯いた目線の先に件の凶暴な胸部がぼいんと揺れ入って来て「うわぁ」と声が出た。
「な、なんでもない…」
「体調が悪いのでは?あの…」
「笹目フロア長……ごめん、良からぬ想像してしまった、離れてくれ」
「は………あ♡」
察しの良い彼女は売り場を監視する体で俺の隣へ並び、俺の方は見ないもののニマニマと笑いを隠せないでいた。
そして小声で
「いけないフロア長ですねぇ、仕事中に」
と俺の革靴に自身のパンプスの足を寄せる。
これがAVならカウンターの台で見えないのを良いことにしゃぶらせたり後背位で突いたりしちゃうんだろうな。
止せば良いのにそんなことを考えれば余計にスラックスの表面がピンと張ってしまった。
「…ごめん、仕事着の下に…ピアスがあると思ったら…興奮したんだ」
「まぁ…嬉しいです」
「ふー……治ってきた…」
「良かったです」
そう言った彼女は身を翻した反動で俺の股間をちょいと指先で撫でて、後方のパソコンデスクへと着く。
痴女ばりの罠を仕掛けてきやがる、いよいよ昂ってしまった俺は遅番の管理職が来たので昼休憩に入らせてもらい…トイレかどこかで抜こうとバックヤードを足早に進んだ。
「(半勃ちが気持ち悪い…あー、抜きてぇな…1階のトイレ…)」
擦れすらも心地よく思えてきたその時、イヤホンに彼女の
『笹目、休憩入ります』
の無線が聴こえた。
まさか、無い、期待なんてしちゃいけない。でもヒールが床を打つ音がBGMを掻き分けて、後ろから響いてくると…もうダメだった。
俺は振り返り歪んだ顔で
「頼む」
と口走る。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
禁断溺愛
流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる