泥より這い出た蓮は翠に揺蕩う

茜琉ぴーたん

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7・ヴァージン・キラー

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「はァ、あッ♡拓朗、さまァ♡」
「んッ…慣れた、わ…ンっ♡あー、締まるなァ、水蓮…あ、はァ♡」
「あフ…お役に、立てて、嬉しいッ、れ、す、」
「お役立ちだ、水蓮…良いま*こだよ、最高だ」
「あア♡うれし、い…」
 ぎゅうぎゅうに狭くなる水蓮に絞られてもう達しそうで、俺は禁断の質問を彼女へ放ちたくてしょうがなくなる。
「(ひぃ様とどっちが良いか、なんて…聞いたらどう答えるのか)」
 きっと困った顔で目を伏せるだろうか、でも俺の予想を裏切り続ける彼女なら分からない。すんなり「ひぃ様ですわ」と先代を立てるか、「拓朗さまですわ」とお世辞を言うか。
「あッ、拓朗、さまァ♡もう、もうッ♡」
「イキそう?んッ…鍛錬たんれんし過ぎだよ、んア♡あ、あ、水蓮ッ、気持ち良いかッ?」
「はふ♡はい、ぎもぢ、いいれすッ♡」
「……ッ…ひぃ様と俺ッ、どっちが、良い⁉︎」
 返答次第では萎える。
 沸騰する脳で馬鹿なことを問えば彼女は俺の首も腰も肢体で絡め取り、
「…………ご主人様、ですわ」
と耳元で囁いた。
「ごしゅ、じん、」
「今の私のご主人様は拓朗さま、お慕い申してますわ」
「あぁそう、そうッ」
 それは例えば俺じゃなくても良いのかな、なんて揚げ足取りはみっともないか。明言を避けられたようで気持ち悪さが残る。
 しかしナマケモノのように俺の体にしがみ付いて離さず俺と震動をいつにする彼女が愛しくて、リップサービスだろうが嘘だろうがなんだって良いやと切なさも込み上がった。
「たく、ろォ、さまッ♡もぅ、もぅッ♡あ、」
「イキ易いの?バイブで開発されたのか、エッチだな」
「すびばぜッ、んン♡」
「淫乱、俺のちんぽが好きか?あ?」
「あゔ♡ッ好ぎぃ、好き、れすッ」
「笹目ッ、ちゃんと、言いなさいッ」
 俺は彼女の上司になったことは無いのだが権威を振りかざしてみた。
 案の定と言うか彼女はくねくね腰をよじり腕を緩め、
常盤ときわフロア長のォ、おちんぽがァ♡好きれすッ♡好き、好き、あ、もぉ、あ♡♡♡」
という言葉を最後に痙攣けいれんしその目から涙がこぼれた。

 本当に虐めている気分だ。女性に嗜虐しぎゃく心なんて普段は抱かないがことセックスに関しては例外、これまでも無意識にパートナーを責めていたことにようやく気付く。
 女性の昇天がどんなものか体感することもできないし一生知る術は無いけれど、男のそれと違って天井が無いと言うから果てしなく続けられるしそれ故にどこかで辛くなるのだろう。彼女は拷問に耐えるようにシーツに爪を立ててぴちぴちと暴れた。
「あッ♡あッ♡♡♡たくッ、あ♡ッひぃ…あ、もゥ、おやめくらさ、い、あ♡♡♡どまんな、いッ、あ、っハぁ♡……あ、あ、」
「お、お♡すげ、待ってね、俺もイキたいッ…んア♡あ、あー…あ♡♡♡」
ブルッとしびれて腰が止まって、より深い所で放出したいのは動物としての本能だろうかぐりぐりと彼女の股へ押し付ける。
 時間としてはおそらく繋がっていたのは10分程度だろう。彼女の絶頂が早かったので俺もそれに合わせたに過ぎない、そういうことにしておきたい。

「あ、拓朗さま…あ、ぴくぴく…しております…」
「ハァ…ハァ…何が?」
「あの、お、おちんぽが…とくとくと…脈打って…」
「ふふ…バイブじゃ経験できないだろ…こればっかりは」
「はい…ん…堪りませんね…この感じ、殿方を中にお迎えして…呑み込んでしまったような感覚が…します」
 ぽたぽた流れ落ちた汗を手で拭って熱い体を抱き締めて、彼女はまるで母のような雰囲気でぎうぎうと俺の全てを包み込む。緩くなったコンドームを引き抜かねば危ない、しかしあまりに心地良くて離れたくないししっとり湿った彼女の体が放してくれない。
「…水蓮…抜くから…」
「…すみません……はァ……あの、コンドーム、見せて下さい」
「…水蓮の愛液でドロドロだけど…ほら」
「きゃ」
端を結んで顔の上に吊り下げぷらぷら揺らせば、催眠術の振り子を見るように彼女の意識はそちらへ飛ぶ。
 左乳房の上へそっと置いてやればお気に召したのか悦びを噛み締めむふと笑った。
「白い…お元気ですね」
「たぶんね」
「はぁ…すごかったですわ、拓朗さま…激しくって」
「水蓮も…乱れたね」
「そ、そうですか?…変だったでしょうか」
 彼女が資料として知るセックスとイメージがかけ離れていたのかソワソワ落ち着かなくなって、けれど
「変じゃない。可愛くてキレイだったよ」
と口付ければすぅと肩の力が抜けてふわふわしたいつもの彼女に戻る。
「良かったです…初めての…幸せでした」
「過去形にするんじゃない」
「すみません、言葉のあやですわ…あぁ…疲れて…ふゥ」
 お姫様のようにピンクのシーツへ寝そべり上がった息で胸を上下させて、目が合えば両腕を広げて俺を受け入れる彼女が心から愛しく感じた。
 果たして彼女が求める主人になれただろうか。まぁ今後の親密度によってはその辺りも相談して落とし込んでいかねばなるまい。
 どう頼まれたってこれ以上のボディーピアスは開けさせる気は無いし、むちで叩くなどもしたくは無いのだが。
「水蓮…好きだ」
「はい、私も…拓朗さまが好きです。お慕いしております」
「会社で…まともにいられるかな…すれ違うたけで犯したくなる」
「まぁ…怖い」
「…そういや…話の途中だった…初めてのエッチは…その、ロストヴァージンは…水蓮からお願いしたって?」
「はい…その……何からお話ししましょうか」
「ざっくりとでもいい、ひぃ様に預けられた経緯とか…その辺りから」

 彼女は自分の枕を差し出そうとするのでジェスチャーで断って、俺はひじ杖でくらくらする頭を支え話し出さんとする彼女を見下ろした。
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