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8・過去、嘘、本当
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しおりを挟む「それが昨年まで…幸せでしたわ。尽くす悦び、所有される悦び、抱かれて支配されて…私が満たされて…」
「見てみたかったな」
「あら」
「双頭とか使ってたんだろ?興味あるわ…エロい」
重ね重ね言うがレズもののAVだって少々は嗜んだことはある。棒で繋がり時折貝合わせになるあの淫靡な両者の腰の動き…是非にモザイクを剥がしてみたいと思ったものだ。
ペニスバンドと違ってあれは両者平等だ。互いに気持ち良い所を探して身を捩り打ち合う脚、尻を浮かせ曲げた膝の交わるところが新種の蟲みたいでその異形に生唾を呑んだ。
女同士で男など不要なのにソコにはまるのはやはり男のソレで、男の立場からすると「やっぱりちんぽが食いたいんじゃねぇか」と女優2人を下に見ていい気になってしまった…余談であるが。
「ふふっ、ペニスバンドなら私でも使えますわ」
「…そっちの趣味は無い」
「私もです……責めたくありません、構って…虐めてほしいんです。私は根っからのマゾヒストなんですわ」
「それでひぃ様は根っからのサディストだったから相性が良かった、と……でもさ、指導を言い訳にするにしても、男を知らない水蓮をここまで謙るよう教育しなくてもいいじゃないか」
水蓮の丁寧さはまるで高級娼婦だ。ひぃ様の経営する風俗店がどんなものかは知らないが、道路向こうの界隈に彼女に見合った高尚な客が来るとも思えない。
「ふふ」
「おしゃべりしたり楽しい感じの…そういう店向けじゃないのか、君が入るとすればさ」
「ふふ…」
昔の水蓮の人格は分からないがもっとほんわかとした嬢を目指すべきではないのか、ひぃ様の教育方針に苦言を呈せば水蓮は涙袋をぷっくり膨らせ、
「拓朗さま、それも勘違いしていらっしゃる」
とゆっくり俺の上に跨った。
「うん?」
「ひぃ様は、名目上『指導』とはいえ大切に抱いて下さろうとしていました」
「……うん、」
「体位こそこうでしたがプレイのジャンルはいたってノーマル、恋人同士のそれだったんです………拓朗さま、ご自身が経験されていることと同じことをひぃ様はしてらしたんです」
「は?」
細い指が俺の頬から首、鎖骨、胸へと這って爪が乳首をカリカリと擦る。
俺が経験していることとは何だ。可愛い恋人の服を剥いたら乳首にピアスが付いていて性のイロハを教えつつセックスまで漕ぎ着けた…何がひぃ様と共通しているというのか。
「拓朗さまも痛いことや恐いことはお嫌いでしょう?」
「そりゃあ」
「ひぃ様はピアスこそ職業柄のお洒落で着けてらっしゃいましたが、痛みを得るために開けた訳ではありません。そして特別SMプレイが好きという訳ではありませんでした」
「はぁ」
「……ひぃ様の名誉のために申しますわ。ひぃ様は…本当にノーマルで、相手を慈しむセックスをなさる方でしたの。女性と行為をなさる時は雄の役割をなさるそうですがそれでも優しく優しく抱く方でしたの。……それを私が請い…荒々しく抱いて頂いた……ひぃ様を、私を虐めるためのサドになって頂いたんです」
「……」
「先程は曖昧な言い方をしましたが…ひぃ様はきっとお姉さま方とも行為をなさっていたんだと思います、ご病気のこともあり私が最後の養女になりましたが…その日がきた時には本当に嬉しかったんです。私はこれまでの娘の中で一番になりたかった、特別になりたかった…ひぃ様の愛が欲しかった…なので嫌々ながらも説得して縛って頂きました。もう止めようというところでも泣いてお願いしました。『止めないで下さいませ』と。『もっと下さい』と…『ありがとうございます』と…私を虐める『悦び』を心身で覚えて頂いたんです」
つまりは睦じい愛をくれようとしていたひぃ様をサディスティックな方向へ誘導して自身を虐めさせたということか、そしてその旨みを感じさせて更に構うように…育てたと言うのか。
水蓮はするすると足元へ移動して、俺の萎んだモノをちろちろと舌先で弄ぶ。
「水蓮、」
「ん…お体が悪くなった晩年は、私からさせて頂きました、騎乗位はこういう時に役立つのだと実感しましたわ、ひぃ様の教えはやはり間違っていなかった…そしてひぃ様も強気に笑って『させている主人』を演じて下さった」
「あ…させる、される…ちょっと、すい」
「拓朗さまも…そうなって頂く予定ですの」
5本の指で包まれた陰嚢がきゅうと縮こまる。しかし竿をがっしり掴んだ彼女の手が上下しだすと単純な俺の体は2回戦目の準備を始めた。
むくむく大きくなるモノを眺めてはニヤァと笑うその姿はまるで邪悪な天使。陰嚢を放した手で髪を耳へ掻き上げればその色気に僅かに不穏さが混じる。
「いや、水蓮っ…」
「支配、して下さいませ…ね?」
あべこべな主従だ、「虐めて下さい」と強制されるなんておかしい。
水蓮は自ら檻となり鎖となり俺を繋ぎ留めようと奮う…嫌がおうにも興奮の度合いがぐんぐんと増していった。
「…そんな気持ちは生まれない…せいぜい激しく抱くくらいだ」
「それで良いんですの…生きてる意味を、私の価値を…私に知らしめて下されば…それで良いんですの」
「承認欲求が歪んでるよ、水蓮」
「ええ、真っ直ぐには生きておりませんの…ふふっ」
猟奇的な空気に慄いたが、しかし次第にそれは薄まっていく。
俺のモノをアイスキャンデーみたいに頬に添えて笑う君は悔しいが可愛い、勝手にコンドームを開けて奮闘する姿も滑稽で愛らしい。
「…あら?こう?………難しいですわ……拓朗さま、これ無しでも」
「ダメ、」
「では無理矢理」
「力で勝てると思ってるのか」
「…スムーズに着けて襲ってやろうと思いましたのに…」
「慣れないことをするんじゃない。水蓮…貸して、こうするんだ」
「はい」
先程までの勢いはどこへやら、しょぼんと背中を曲げる彼女からゴムを奪って新しい物を箱から出した。
「見て、覚えなさい…こっちが男側ね、ここを切る」
「拓朗さま、どちらも男性だったらどうするんですの?」
「……一般的に『男性器』に被せる方が男性側だ…まぁ各所配慮が要るかもしれないね……こう、ね、根元まで」
「痛くないのですか?窮屈さなどは?」
「毛を巻き込んだら痛いよ……水蓮、君の提案に乗ってやる。どの体位でしようか?」
君好みのサドへ少しでも近付いてやろう、仰向けで問えば
「あ、えーと…本当の正常位、で、」
と受け身なその顔はにんまりと笑んでいる。
楽して責められようったってそうはいかない、ビビらされた分を取り返そうと彼女の手首を掴んだ。
「却下だ、さっきみたいに跨りなさい」
「は、い…」
「自分で挿れて、慣れてるだろう?」
「え、でも……これ、持ってよろしいんですの?」
「良いよ、それくらいじゃ破れない…水蓮、ひぃ様の上で散々したんだろう?ディルドと違って垂直で待機はできないから…持って、そう」
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