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しおりを挟む「(デート、と言うからには恋愛に発展することを見越して動かなきゃいけないんだろうなぁ)」
さて初デートを明日に控えた日の夜。
私はそれなりに準備をせねば失礼だろうと顔の産毛を剃ったりポイントパックをしたりと忙しなく動いた。
交際している訳でもないのだしそこまで気負うのもおかしいが、「面白くなかった」との印象を彼に残してしまうのは癪なのだ。
色恋に関心が全く無い訳では無い。
それなりに良いご縁があって無理なく上手い具合に収まればこの先は安泰かなと思わないでもない。
でも積極的に婚活とかしたい時期でも性格でも無いのだ。
実家暮らしだし細々と暮らしていけるだけの資産はあるだろう。
それに彼…根岸さんが100パーセント自分の意思で動いているともまだ信じられない。
仕事上信用はしているが何ぶん接点が少ないのだから互いを知れるチャンスもこれまで無かった。
「(と言うか、そもそも私がフリーだと決めてかかるのは失礼なのでは?普通、恋人は居るか確認からするのでは…)」
やっぱり宇陀川の差し金なのか。
手駒を気に食わない派遣部下に当てて右往左往する様子を高みの見物…あまり人を疑うものでもないが、その線が濃厚かと思う。
以前カウンターにて「彼氏とか居るの?」と聞かれて「居りません」と冷たくあしらったのを憶えている。
居ないものを「居る」と見栄を張ることはあるだろうがその逆はそう無いことだろう。
その点では私の発言は信用されているのだろうか。
宇陀川が黒幕と決まった訳ではないのにその前提がどんどんと固まっていく。
ともあれ一度デートして根岸さんは宇陀川に結果を報告するのだろう。
証拠が要るならツーショット写真でも撮ってやらんこともない。
それで根岸さんが助かるなら安いものだし、日頃自分達のために尽力してくれている恩返しとすればデートする大義名分も成り立つし。
「スカートにしよっかな…寒いかな…」
まぁ根岸さんもキチンとしてればモテそうだし、それなりに経験もおありだろう。
上手にリードしてくれれば良い話に発展するかも…なんて思うのだけれど、ひねくれ者の私はまだ胸のワクワク感を素直に認められない。
つづく
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