そんなあなただからすき

茜琉ぴーたん

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 今宇陀川は私が配属されたレジ・営業事務部門の上長だから嫌でも毎日顔を合わせるのだが、恐らく私は好かれていない方に分類されている。

 業務に支障は無いがイヤミが多くて近寄りたくない。

 けれど何かと許可を得るためにこちらから話しかけねばならない。

 許可取りが必要な作業が発生すると分かっているのに不要な売り場巡回に出てカウンターに不在だったりする。

 そして「戻って来て下さい」と請わせる。

 こうした地味にイラつく嫌がらせは日常茶飯事、失礼だがきっと病気なのだと思う。

 まだ30代前半だろうに、年季の入った嫌味がお上手だ。

 改めて言わずとも分かると思うが、私が心の声で宇陀川に敬称を付けないのはそんな尊敬できない理由があるからだ。


「御幸浜さん、そのー、さっきのデ、デートの話なんですけど、前向きに検討して頂けませんかね」

「…『約束しました』って証拠を提出しないと納得してもらえないんですか?」

「だから宇陀川さんは関係無いって…僕個人の気持ちです、その…御幸浜さんと、もっと、親交を深めたいなぁ、って…うん、思ってて」

「……良いですよ」

「え、あ、ありがとうございます!」

 まるで大口の契約でも勝ち取ったみたいな喜びぶりに私もなんだか笑ってしまう。

 宇陀川が関わっていようがいまいがとりあえず食事くらいなら許容できると判断した。

 こんなにしつこく食い下がるのだから脅迫スレスレの圧力を掛けられているのかもしれないし。

「いつにします?」

「えーっとね、えーっと…」

「宇陀川さんに指示を仰いだらどうですか」

「嫌ですよ、関係ありません…この辺り、時間を割いてくれますか」

根岸さんはスケジュール帳を開いて空いている日を確認して、「この辺なら」と指差すとワタワタとボールペンを探す。


 はてさて何で私なのだろう。

 降って湧いたロマンスにときめくほど乙女ではないのだ。

 しかし無碍にして心象を悪くし過ぎるのも損かと思った。
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