そんなあなただからすき

茜琉ぴーたん

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「……それで、どこ行きます?」

「えっと、その、ドライブを考えてたんですが、自分が運転する前提の計画でして…変更しましょう」

「良いですよ、私の車で行きましょう」

「いや、燃料も掛かりますし」

 もう面倒臭い、せっかく来てあげたんだから快く話に乗れば良いものを。

「根岸さん、その…遠慮ばかりされるとこちらも心苦しいんですが」

「あぁ、すみません…」

「とりあえず出ますね、シートベルトして下さい。海側ですか?山側ですか?」

「は、い、ではその、あ、どうしようかな、」

 カッチカッチと鳴るウィンカーの音が私のイライラを掻き立てる。

 国道に合流して車体がぐらんと揺れる。

 根岸さんは私よりもしっかりめに後方の巻き込み確認をして、まるで教習所の教官みたいに姿勢良く座っていた。

「どっちにします?」

「よ、予定では海だったんですが」

「ですがぁ?」


 海側か山側か、分岐の交差点が近付くと彼は小さな声で

「ランチタイムの都合があるので…山側にしましょう」

と直進を勧める。

「え?」

「いえ、食べようと思ってた店のランチの時間が短くてですね、その、安全運転では間に合いそうにないんです、なので山側に」

「私が、遅刻したから、間に合わないんですね?」

「いえ、ギリギリのところを計画した僕の失策です。なのであの、」

 私は全て言い切らせる前に、ハンドルを海側へと切った。


 何度も言うが悪いのは寝坊した私なのだ。

 なのに私のせいで予定が狂ったのに埋め合わせもさせてくれない根岸さんを私は理不尽に逆恨みしてしまう。

「第2希望とかは無いんですか?ランチの」

「えっと、そうですね、か、考えます」

「……すみません、私が遅れたばっかりに」

「いえ、休みですから寝過ごすのも当然ですよ。ぎ、逆に僕が予定を押さえてしまったのが申し訳なかったです」


 うーんせっかく謝ったのに謝り返されてしまった。

 腰が低いのは良いことだけれど私との相性はいかがなものか。

 私はツンケンしていると評価されるし自分でもそう思っている。

 そして男性には強さを求めている。

 柔和になれないんだからもっと剛健な人を探すしかない。

 従えられたい訳ではなくて、私の意見を取り入れて二人三脚で歩んで行ける人が良い。

 例えるなら会社の上司みたいにサラッとしていて困ったら助けてくれるような頼り甲斐のあるタイプ、口に出さずとも通じ合えるような気の利く男性が良い。

 しかしてそんな人はなかなかいないので結婚にそこまで固執していない訳で。

 根岸さんは優し過ぎてこちらが気を遣ってしまう。
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