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しおりを挟む「「あの」」
意を決した言葉が被る、根岸さんは
「っあ、どうぞ」
と発言権を譲ってくれる。
わざわざ譲られてまで尋ねることではないのだけれど、私は「休みの日には何をしてるんですか」なんてありきたりな質問をした。
「最近は、テレビゲームばかりですね」
「へぇ…」
「撮り溜めたテレビを消化したり、漫画読んだり」
「少年っぽいんですね」
子供っぽい人なんだな、率直にそう思った。
意識の高いアクティビティに興じているよりは雰囲気に合っているけれど、随分とインドアでまったり過ごしているようだ。
「御幸浜さんは?お休みの日は」
「私は…スーパー銭湯行って、ランチして本屋行って適当に買い物して終わりですね」
「それは充実していて良いですね、今度お供させて下さい」
「はぁ」
桃太郎じゃあるまいし腰の低い人だ。
でももう嫌味には感じなくなってきた。
会社で会う時にはオドオド気弱な印象が強かったけど、ここ数分の彼の様子を見ていればそうでもないことが分かる。
基本おっとりのんびりしていて、それが素早い返答を求められると慌てて吃ったりしてしまうのだろう。
「根岸さん、次どうぞ」
「はい?」
「さっき、言いかけたこと。順番ですから」
「あー、実は僕も、休日の過ごし方を聞こうと思ってたんです、あはは」
「(嘘だぁ)」
優しくて、人のために気を回して、自分が損をすることも多いだろうに相手を責めもせずフォローして。
正直、賢い生き方とは思えない。
ヨイショヨイショして取引先の顔色を窺う接待みたい。
仕事はそれで良いがプライベートまで発揮しなくても良いのに。
「根岸さんは…仕事は楽しいですか?」
「え、んー…そうですね、楽しいですよ」
「宇陀川さんにぺこぺこして、楽しいですか?」
「宇陀川さんは関係無いですって……その、社会人を数年やってると人間のタイプって分かってくるんですよ。こういう人にはこう、こういう人にはこう、って接し方を変えて上手く…こうね、皆すると思うんですよ」
「えぇ」
「でも僕は、その…下手なんでしょうね、気弱なもんだから人に指示も出来ないし。何かのリーダーとかには向いてないんです」
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