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しおりを挟むもちろん向き不向きはあるし、適性はあるものだ。
私だって愛想を振り撒く仕事をしろと言われれば無理と断るし、そうしなくて良いように割り振ってくれているのが根岸さんだ。
実際、今の職場は私に合っているから彼の見立ては間違っていないと思う。
「私たちのリーダーじゃないですか」
「そりゃ立場はそうですけど…サブリーダーとか、副部長とかそれくらいが丁度やり易いんですよね。幸い僕は人当たりが良いらしいから、交渉したりパイプ役には向いてるみたいです。頭を下げるのも苦じゃないですしね」
「…損、しないですか?」
人材派遣会社は使う・使われるがハッキリした業種だから、人と人の間で板挟みになったり苦労は多かろうと思う。
どんな職場だって同じだろうけど、根岸さんは気弱さをモロに表に出してしまうから舐められることも多いのではなかろうか。
私だって、彼を『大人しくてグジグジした人』として見ていたくらいだし。
橋梁を越えたら水平線が広がる。
パァと明るい視界の中で根岸さんは
「しますよ、たくさんして来ました。頑張って作ったものをリーダーの手柄にされたり、自分自身が悪くないのに代わりに謝ったり。でも見ててくれた人は励ましてくれますし、何でしょう、徳を積むって言うのかな、来世では良いことあるかも、なんて、あはは」
とあっけらかんと笑った。
「……」
「嫌じゃないですよ、特に仕事では。僕のフォローで御幸浜さんたちが働き易くなるなら、僕はいくらでも頭は下げますしね」
「宇陀川さんにも従う、と」
「だから今日のデートに宇陀川さんは…関係ありませんって」
彼は何度も否定するが、今回のデートの引き金となった宇陀川の影を私はいまいち拭い切れない。
また後日に報告でもするんじゃないの、そう疑っている。
だって根岸さんは良い人過ぎる。
ハラスメント紛いとはいえ、呑み会に誘い出し背中を押してくれた宇陀川に筋を通しても不思議ない。
だからハマってしまうのが怖い。
優しくて良い人で私を想っていてくれた彼の原動力が宇陀川だなんて私も奴に感謝しなくちゃいけなくなる。
いや宇陀川のことは言い訳かな、勝ち気な私をここまで丁寧に扱ってくれる男性に会ったことが無かったからハマってしまうのが怖いのか。
隠している訳でもないけど私だってそれなりに女の子だ。
可愛いものは好きだし抱かれれば甘い声だって出るだろう。
「(ギャップを見せるのが…癪なのかも)」
今まで下に見ていた根岸さんに屈するのが嫌なのか。
悔しいとかそんな感情だろうか。
やはり私も彼を舐めていたのだ。
そんな申し訳なさもあってこれ以上根岸さんの深みにハマるのが怖いのだ。
つづく
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