そんなあなただからすき

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　しかしそんなに話し掛けようとして失敗していたなんて知らなかった。

　どうやら私も根岸さんを弄らせる一端を担ってしまっていたらしい。

「なんかすみません」

「良いんです、きっかけはそんなだけど御幸浜さんと話せて嬉しくて…でもそのまま笑い者で終わったら相手をさせられた御幸浜さんにも悪いし、それにもうこんな機会無いと思って…デートに…勇気を振り絞って誘いました。あの人は本当に僕が誘うとは思ってなかったみたいです、舐められてたんです。でも僕としては結果オーライですよ、宇陀川さんの驚く顔も見れましたし、御幸浜さんと実際にデートも出来て…すみません、勝手に巻き込んで…」

暴露を済ませた根岸さんは、スッキリした顔つきで深く座り直した。


　しかし恋愛リアリティショー番組じゃあるまいし、悪趣味が過ぎて気持ち悪い。

　デートを受けたのは自分の意思だけど、その意思すら操作されていたみたいでモヤモヤする。

　だいたい侮辱って何なんだろう、詰めれば根岸さんは教えてくれるだろうか。

「デートするって決めたのは私なのでそれは良いです。最初こそ…その、根岸さんのことは何とも思っておらず素っ気ない態度をしましたが…半日一緒に居て、見る目が変わったというか…ただ弱気な人じゃないってことは分かりました」

「…それは良かった」

「会話のテンポが合わなくてイライラしたこともあるんです、目も合わないし。でも、緊張だったり周りへの気遣いだって分かったので…それも良い方向へ変わりました」

「…御幸浜さん、目力強いんですもの…」


　もう穏やかな根岸さんだ。

　この人はやっぱりニコニコ笑っているのが似合っている。

　下り眉毛も可愛い、歯を見せて笑うのも可愛い。

　情けない表情も可愛い、もしかしてこれが彼のチャームポイントで、だから宇陀川は彼を困らせてはこの顔を見て嗜虐心を満たせていたのではなかろうか。


「宇陀川さんをヨイショして、いたずらに契約を切られないように私たちを守って下さってた、それは知ってました。でももう…過剰に謙へりくだるのはやめませんか、宇陀川さんに直接の人事権はありませんし」

「でも、御幸浜さんの直属の上司だから。僕をいじめるために御幸浜さんが酷い扱いを受けでもしたらやってられないから」

「…私をいじめることで間接的に根岸さんをいじめて辛がる顔をさせようってことですか…もう労基でも行きませんか」

「証拠がありませんので……僕の我慢で済むなら良いんですよ」