そんなあなただからすき

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　この人はどうしてここまで自分を痛めつけることが出来るのか。

　自己犠牲を美徳とするタイプなのか、それならサドの宇陀川と相性はピッタリだとは思うが。

　ここまで守ってもらってるなんて思いもしなかったしここまで想われてるなんて知りもしなかった。

　私の感知しない所で闘うなんてやめて欲しいしせめて私も参加させて欲しい。


「私が、根岸さんの悲しい顔を見たくないと言っても、ですか？」

「……え？」

「宇陀川さんの言いなりになることで私が嫌な気持ちになります。だから言いなりにならないで下さい、と言ったら？」

「…参ったな」


　根岸さんはまた大きなため息を吐いてガクッと項垂うなだれて、宇陀川と私との板挟みに悩んでいるようだった。

　きっと彼は元々が争いを好まない性分で、丸く治まるなら自分が馬鹿を見ることも厭わないのだろうと思う。

　でももうそんなことはさせたくない、知らなかったとはいえ根岸さんを苦しめる一端となっていた私が彼を解放してあげたい。

「私は今日、根岸さんと過ごしてみて色んなことが分かりました。貴方はウジウジしてるだけの弱虫じゃなかった、誤解してました」

「あはは…そんな風に…」

「根岸さんと…一緒に居ると心が落ち着きます。時間の経過がゆっくりに感じて、安心するというか、優しい気持ちになります。私、その…」


　普段より薄化粧のこの顔は、彼にきちんと想いを伝えてくれるだろうか。

　自分のキャラクターに即してなさそうなこの服装で、誠実な意見が伝わるだろうか。

　これまで何とも思ってなかったのに、この半日だけで彼の魅力に取り込まれたなんて言って信じてもらえるだろうか。

　
　彼を可哀想に思いOKしたデートの約束。

　嫌いではないし食事くらいならと軽んじた根岸さんの存在。

　気が合って良い印象が持てたらその先もと考えはしたが、本当に深くは意識していなかった。

　だからこそ今朝は寝坊までしてしまった訳で…付け焼き刃な恋心の告白を、彼は受け止めてくれるだろうか。