26 / 36
5
26
しおりを挟むその後は、簡単だった。
彼は自宅アパートへ私を招き入れて、上着も脱がぬままにベッドへと雪崩れ込んだ。
我ながら呆れる尻軽さ、しかし感情が昂っているのだから仕方ない。
我々は大人の責任において、大人の関係になろうというのだ。
「根岸さん、落ち着いて」
「すみません…色んな過程を踏むべきだとは思うんですが…心身が昂ってしまって…酷く興奮してます…あの、お名前で呼んでも良いですか」
「あ、はい」
「栞さん、」
彼は噛み締めるように私の名を何度も何度も口遊んで、髪や耳や首なんかの匂いをすんすん嗅ぎ回る。
飢えてどうにもならない獣みたいに、それでも勿体ぶるように少しずつ外装から剥がすように。
「ね、根岸さん、ごめんなさい、私、下の名前覚えてなくて」
「航介です、忘れないで」
「航介さん、ちょいちょい文学的なの」
「え、そうですか?そう?」
「変わってる」
「愛愛しい」とか「嬲る」なんて実生活では耳にしないワードが飛び出た時から、航介さんは読書家なのかなとぼんやり考えていた。
想像力が豊かで口が上手くて、けれど「ずっぽし」なんてユニークな物言いもしたりする。
普段どんなメディアを見聞きしているのだろう、そんなところにも興味を持った。
「読書、昔のとか、か、官能小説とか…すみません、キモくて」
「大丈夫です、AVとかと同じでしょう」
「友人にはムッツリって言われます……嫌わないで欲しい」
振る舞いや見た目の雰囲気にエロスが滲むなんてそれこそ宇陀川じゃないの。
興味無いふりをするのがむしろ普通だ。
どぎまぎとモタつかれるより具合は良いし、セクシュアルな部分が隠されていたから私は今回のデートに乗ったのだ。
過激な変態性がある訳じゃないでしょう?との問いに照れ笑いする様にはちょっぴり不安。
でもさくさくと冬服を脱いで先を急ごうとする余裕の無い感じは可愛げもある。
丸裸になった航介さんはマットレスの下に手を突っ込んでスキンの箱らしきものを取り出して、
「栞さん…あの、ご、ご経験は?」
とチラチラこちらを窺った。
「あります、7~8年は前になりますが。それっきりですね」
「あ、そうでしたか…ぼ、僕も経験はあるんですが…上手い下手を評価されると厳しいので…お手柔らかにお願いしますね」
「航介さん、私のこと何だと思ってるんですか…」
過去の経験はほぼ忘れているし憶えているからといって比べる訳じゃない。
だいたい比べたところで何になるの、航介さんを睨み付けると彼は私の服に手を掛けてあせあせ脱がし始める。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる