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しおりを挟む「ことこういう場面では優位に立ちたいでしょう、男ですから…僕はキリッとした栞さんが好きですがそれを崩す技量があるかどうか分かりませんし」
「崩したいんですか」
「そりゃもう…とろとろにして、僕無しでは生きられないくらいにしたいです」
「自信があるんだか無いんだか」
スムーズとは言えない展開に、盛り上がっていた心臓がなんだか凪いでいく。
ベッドにダイブした時は少しオラつきも見せていたこの人は、剥がした私の下着を直視することも出来ず置き場所を決めかねてまごついている。
「(小心者で、人が良くて、嘘もつけるムッツリさんか…人間らしい)」
まったく何をもって私より優位に立てる気があったのだろう。
いい加減仰向けになって待つこちらは手持ち無沙汰で恥ずかしくなって来た。
大人なセックスをしたいならしっかり勉強しておいてよ、そもそも庶民的なアパートの一室でなんてシチュエーションからして間違っている。
「(でも、)」
私は諂うのが苦手だから、ドヤ顔で上から目線を投げられたら感じたリアクションなんかテコでもしてやらないだろう。
褒めてもやらない、それどころか不服そうな顔だってしてやるかもしれない。
でも、
「久しぶりなら…少し慣らしましょうね」
「…はい」
丁寧に、「優位に立ちたい」と言いながらも謙る航介さんになら…本当の反応を見せてあげても良い。
「はー」
指1本で様子を見て中の感触に唇を震わせる不慣れな感じ、引き抜いたそれをまじまじ見つめる姿はまるで未経験者だ。
「んッ」
「栞さんの中…凄い…四方八方から絡んで来ます」
「しほう…」
「…すみません」
こんなに態度の悪さを見せていると、後々にどう反応して良いのか分からなくなる。
不遜な態度からデレるのは難しい、屈服した感が拭えない。
彼の指が蠢くたびに足先がぴくぴく跳ねるのに気付かれているだろうか。
呼吸を抑えているのが分かるだろうか。
急激に甘い自分なんて見せられない。
けれど2本目の指が入った瞬間
「ア♡」
と声が裏返ってしまった。
「…栞さん、痛いですか?」
「…たく、ないッ…あ、ンっ…」
「良いですね…指2本で栞さんを制する、とんでもない優越感ですよ」
「何言ってん…あフ♡」
垣間見える猟奇性、けれど虚勢にも見えて恐くはない。
従わなきゃ殴られるかもなんて不安も無い。
むしろどんな風に私をリードしてくれるんだろうかと期待が膨らむ。
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