そんなあなただからすき

茜琉ぴーたん

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「普段はペコペコしてる僕が、ベッドの上では裏の顔を見せるって…ドキドキするシチュエーションじゃありませんか?」

「ドラマじゃあるマいしッ…ふゥ…」

「栞さん…あぁ凄い…トロトロだ…ふふっ…」

「(こわい、というかちょっとキモい…?)」


 こういう官能小説がお気に入りなのか。

 真面目な男が見せる二面性なんてのが憧れなのだろうか。

 フィクションの中の男性は総じてリードが上手くてセックスが上手くて女性はしっとりメロメロになるものよね…私はそうはならないと思うのだけど。


「ここがGスポットだね…声は我慢しなくて良いよ」

「ふゥ…はァ…」


 航介さんが丁寧語をやめたこの辺りから、私の中にぼんやり浮かんでいた疑念が思考を占拠し始める。

「(どうしよう、もしこの感じで言葉責めとかされたら…笑っちゃうかも…)」

 関東圏の私たちは普段ほぼ標準語を話すが、フィクションのそれとはまた少し違うと思うのだ。

 実際の会話を文字に起こしてみると男女差はほとんど無いし、まだまだ若年層の私たちは堅苦しい言葉は使わない。

 例えば「見てごらん」とか「硬いだろう?」とか、お屋敷の貴族さまみたいな物言いは普段しない。

 しかし航介さんのまとう空気からは文学的な装飾性というかフィクションの美麗さというか、「上手いこと仕立ててやろう」感が匂う気がしてならない。

 お好きだという官能小説を引用しているみたいな感じ、本屋の文庫本コーナーで目にした昭和っぽい写実的なイラスト表紙が頭に浮かぶ。

「グチュグチュ言ってる…恥ずかしい音だね…」

「…ぷふッ…ふゥ…」

「こんなに濡らして…悪い子だなぁ」

「ぶふッ…ふー…ふゥ…」

 まずい、航介さんがエロ親父に見えてしまう。

 昼間の爽やかさを思い出そうとするも、物言いのせいで霞んでしまう。

 これがスタンダードなのか、それとも気張りすぎているだけなのか。

 正直、これでは興奮しかねるし何なら気持ち悪さが勝ってしまう。

「(どうしたもんかな…指の感じ、気持ちは良いんだけど…結構無理あるな…)」

「栞さん…どうかな、気持ち良いかい?」

「あ、はい…あは、ふふッ…」


 「かい」ってそんな、若人が使うかしら。

 まるでドラマの中の上司みたい、ヤバい、笑ってしまう。

 快感に集中せねば失礼だし勿体無い。


 けれど繰り出された

「そろそろ…僕の、欲しいかい?」

の「かい?」二段構えに腹筋が崩壊、

「ぶふっ!」

ついに私は吹き出してしまった。
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