そんなあなただからすき

茜琉ぴーたん

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 吐息でどうにか誤魔化してしたのに盛大に笑ってしまい、当然だが航介さんは「え」と固まってしまう。

「……」

「…あの、ごめんなさい…ふふっ…ふっ…」

「栞さん?」

「はい、あのー…すみません、ふっ…ふふ…」

 込み上がる可笑しみに肩が震えて、あぁいけないと思えば思うほどに台詞せりふ調の言葉がリフレインしてツボにハマる。

 このままでは航介さんの自信が損なわれてしまうかも。

 実際私がえらく笑うので彼は指を引き抜いてベッドに正座してしまった。

「あの…何が可笑しいんでしょうか」

「いえ、ふふっ…その、しゃ、喋り方が、」

「いけませんでしたか」

「いけないというか、決め過ぎというか、」

「……」


 ここの価値観が合わないのは良くないな、でも笑ったのも良くなかった。

 けれどセックスが全てじゃないし慣れればなんとかなるかもしれない。

 交際初日でヘヴィーなものを背負わされて迷惑ではあるが、即サヨナラとはまだ思えない。

 丁寧語に戻った彼はイメージ通りの好青年で、しょんぼり背中を丸める様子も可愛げがあったりするし。

「(さっきのあのキモい感じ、何だろ、)」

 サブリミナルと言うのか、フラッシュみたいに意識に差し込まれる情報が航介さんの純朴さを隠している気がする。

 妙に親父くさいというか下衆さが匂う嫌な感じ。

 上に立って見下してくるような、「これが良いんだろう?」と決めてかかる身勝手さを感じた。


「航介さん、それ…その、セリフみたいな言い回しが…き、気になっちゃって」

「ドキドキし過ぎたってことですか?」

「いや、何で……その、エロ男爵みたいな、標準語」

「す、好きかと思って…」

「私、そんなの好きな感じしますかね」


 わたわたと慌てる航介さんは難しいけど間抜けな顔をして、笑ったために涙が滲んだ私を「腑に落ちない」といった風に見下ろした。

 対等になろうかと起き上がり横座りではにかめば、彼は目のやり場に困っているようなので布団で体を隠しておく。


「じ、女性は…栞さんはこういう感じが好きだと…いえ、確かに決め付けていました」

航介さんはそう言い目線を落として、自身の裸体が気になったのだろう慌ててパンツで股間を隠した。

「それが何でなんですか」

「そういう話を聞きまして…」

 私は会社の人とは最低限の会話しかしない、そんな性に関わる内容をぺらぺらと話すはずがない。

 だいたいセックスに好きな趣向も無いし、親しい友人とすら下の話はしたことがない。
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