29 / 36
5
29
しおりを挟む吐息でどうにか誤魔化してしたのに盛大に笑ってしまい、当然だが航介さんは「え」と固まってしまう。
「……」
「…あの、ごめんなさい…ふふっ…ふっ…」
「栞さん?」
「はい、あのー…すみません、ふっ…ふふ…」
込み上がる可笑しみに肩が震えて、あぁいけないと思えば思うほどに台詞調の言葉がリフレインしてツボにハマる。
このままでは航介さんの自信が損なわれてしまうかも。
実際私がえらく笑うので彼は指を引き抜いてベッドに正座してしまった。
「あの…何が可笑しいんでしょうか」
「いえ、ふふっ…その、しゃ、喋り方が、」
「いけませんでしたか」
「いけないというか、決め過ぎというか、」
「……」
ここの価値観が合わないのは良くないな、でも笑ったのも良くなかった。
けれどセックスが全てじゃないし慣れればなんとかなるかもしれない。
交際初日でヘヴィーなものを背負わされて迷惑ではあるが、即サヨナラとはまだ思えない。
丁寧語に戻った彼はイメージ通りの好青年で、しょんぼり背中を丸める様子も可愛げがあったりするし。
「(さっきのあのキモい感じ、何だろ、)」
サブリミナルと言うのか、フラッシュみたいに意識に差し込まれる情報が航介さんの純朴さを隠している気がする。
妙に親父くさいというか下衆さが匂う嫌な感じ。
上に立って見下してくるような、「これが良いんだろう?」と決めてかかる身勝手さを感じた。
「航介さん、それ…その、セリフみたいな言い回しが…き、気になっちゃって」
「ドキドキし過ぎたってことですか?」
「いや、何で……その、エロ男爵みたいな、標準語」
「す、好きかと思って…」
「私、そんなの好きな感じしますかね」
わたわたと慌てる航介さんは難しいけど間抜けな顔をして、笑ったために涙が滲んだ私を「腑に落ちない」といった風に見下ろした。
対等になろうかと起き上がり横座りではにかめば、彼は目のやり場に困っているようなので布団で体を隠しておく。
「じ、女性は…栞さんはこういう感じが好きだと…いえ、確かに決め付けていました」
航介さんはそう言い目線を落として、自身の裸体が気になったのだろう慌ててパンツで股間を隠した。
「それが何でなんですか」
「そういう話を聞きまして…」
私は会社の人とは最低限の会話しかしない、そんな性に関わる内容をぺらぺらと話すはずがない。
だいたいセックスに好きな趣向も無いし、親しい友人とすら下の話はしたことがない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる