19 / 46
4日目
19
しおりを挟むしばらく走って高速道路から下道へ、南西の道の駅を目指す。
「楽しみやな、玉ねぎのハンバーガー」
「甘いですもんね」
「なんや、ご当地バーガーの賞獲ったとか書いてあったで」
よほど調べたのだな、秋花はうんうんと頷いては島の景色にも目をやった。
敷地内の駐車場へ停めて少し高台へ、二人はいい匂いのする方へ自然と目線を合わせる。
「あれやな、」
「はい…ええ匂い」
「1個ずつ、違う種類頼んでええ?」
「いいっすよ、半分ずつ食べましょ」
玉ねぎのフライが挟まったボリューミーなバーガーを2つ買い、海が見えるベンチまで少し持ち歩いてそこで開いた。
「美味しそ、シューカ先に食べ、」
「なんで?そっちの食べたらええのに」
牛肉入りを秋花に渡し、車崎はもうひとつに手を付けずにニコニコと笑っている。
「ん、玉ねぎやから手ぇで千切られへん。俺の歯形の後は嫌やろ」
「今更…食いかけとか散々貰うてきましたやん」
「気にならへん?…ええの?」
「いいっすよ、あったかいうちに……ん、美味♡」
名産の甘い玉ねぎの輪切りフライに地産牛肉とトマトソース、旨そうに大きな口を開ける秋花を見て車崎は生唾を飲んだ。そして自分も、と同じく玉ねぎフライにオニオングラタンソースの掛かったバーガーをぱくりと齧る。
「…うん…あ、…美味い……サクサク、」
「ね、半分食べたら、替えっこしましょ、美味いわ、なんぼでもいけそう」
「ん、でもこれグラタンソース、トロトロで垂れる、シューカ、」
呼びかけに応えた秋花は断面から溢れかけたソースの下に手を受けて、
「ん、半分食べちゃって、シンタローさん」
と急かした。
「ん、すまん…忙し……ん、ううあ」
「ここで替わりましょっか、はい、すんません食べかけを」
秋花もビーフバーガーを半分食べ切り、残りを車崎へと差し出す。
「すまん、ほい、離すで、」
「はいはい、あ、垂れた…ん、美味♡好き、これ」
掴んだ手に垂れたソースに舌を付けてまず味見、その表情と湿ったリップ音にさえ車崎は胸をときめかせる。
「…シューカ、お行儀悪い」
「は?あきません?美味し…ええとこですね……風が気持ちいい」
「ん…渦潮、見れるかな…」
車崎は自身も手に付いたトマトソースをこっそり舐り、包み紙を綺麗に折り畳んでビニール袋へ収めた。
「スカート、可愛いよ。シューカ」
海風に靡くワインレッドのワンピース、改めて秋花の全身を眺めた車崎は目尻を下げる。
「やめてくださいよ…」
「持ってへん言うてたのに」
「いや、その…」
「こっそり持ってたんか、前の男のためか?あ?」
目を伏せて銀髪を掻く細い腕を冗談ぽく絡め取れば、上げた顔はほんのり紅くなっていた。
「ちゃう、か、買いに…行ってん…まだ、店開いてたから…」
「は…昨日か?このデートのために?」
「そう…ですよ…」
秋花は手を振り解き、ぽっぽとしたので上着の袖から腕を抜く。
「俺との、デートのためにか?」
「せやからそう言うて」
「シューカ、」
上着を抱える腕を再度捕まえ、
「おおきに」
と至近距離で細い目が笑めば、ほんのりから更に濃く、耳までじんじんと彼女の白い肌が紅く染まった。
「な、に、」
「俺とのデートのためにスカート買う、こんな可愛いことあるか?世界一ちゃうか?」
「やめて、シンタローさん」
車崎は海に向かって叫び出しそうな勢いで喜び、海沿いの手摺りに両手を掛けて足を踏み鳴らす。
告白マジックの次は海マジックかと思ったが、彼のその様子を見れば「そうでもないな」と、秋花はすうっと平常心に戻ったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
謎多きお見合い相手は、秘めた愛を彼女に注ぐ
玖羽 望月
恋愛
老舗医療機器メーカーのマーケティング・企画部で働く石田琴葉【いしだことは】(28)は、仕事一筋で生きてきた。
学生時代に恋愛で痛手を負った琴葉は、それから勉強と仕事を最優先に生きてきた。
ある日琴葉は、祖母にお見合いを勧められ、「会うだけなら」と渋々お見合いに臨んだ。
そこに現れたのは眉目秀麗という言葉が似合う榛名智臣【はるなともおみ】(33)だった。
智臣は琴葉の仕事や業界に精通していて、思いの外話しは弾む。ただ自身のことは多くを語らず、会話の端々に謎を残してお見合いは終わった。
その後何も連絡はなく、気になりながらも目の前の仕事に全力を尽くす琴葉。
やがて迎えた、上層部の集う重要会議。
緊張感の中、突如発表されたのはマーケティング・企画部長の異動と、新たな部長の着任だった。
そこに現れた新部長は――
※こちらのサイトのみ投稿しています。
(3月中旬頃まで充電期間いただきます🙏再開をお待ちいただけると嬉しいです)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる