彼女は銀狼ギャル、ときどきコアラ

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
18 / 46
4日目

18

しおりを挟む

「おし、渡るよー、わ、絶景やな」
「おー…」
 ひらける視界に白い橋梁と高い塔、ケーブルの影が次々と顔の上を駆けていく。
「キレイやな、な、」
「はい……あっという間ですね」
「しやね、もう淡路島や」
「南インターまで走るから…もうちょいかかるよ」
「はいはい…」
「シューカ、楽しい?」
「楽しいですよ」
「ん、寄りたいところあったら言うてな、どこでも連れてったるから」
 はにかむ横顔、重い目蓋、自分を大切にしてくれている車崎へ先輩以上の感情が秋花の中で大きくなる。
「あ、この曲」
「懐かしいな」
「まだ弾けます?」
「どやろ…」

 元々がミズモリ車装を通じての知り合いで、父を慕ってくれていて、高校でも一緒になって…帰宅部で済まそうとしていた秋花を軽音楽部へ誘ってくれたのも車崎だった。
『シューカ、腕長いし指も長いし、弦楽器したら?ベースとかええやん』
 それが彼の誘い文句で、その通り入部して秋花はメキメキと上達する。
 交友関係も広がり充実した高校生活を送ることができ、その点でも車崎に感謝していた。
 車内BGMが変わり、それが二人の高校時代に演奏した曲だったので秋花はそんなことも思い出したのだ。

「…シンタローさん、ギター下手やったもんな」
「やかましな…下手でも楽しく弾くのが部活動の醍醐味やろ」
「あはは、うん、まぁね、」
 実際、誘っておいて車崎はギターの腕はそうでもなく、後から始めた秋花にすぐに追いつかれてしまった。
「お前は器用やから…ギターもベースも…」
「シンタローさんも器用でしょ、卒業ライブはギター光ってたもん」
「まぁな、」
 進学せずに就職先は秋に決まっていた車崎はギターのカスタムに嵌り、電気系統の勉強も始めてその技術と知識は今の車のドレスアップにも上手く活用されている。
「シューカは?もう弾かへん?」
「実家に置いたまま…甥っ子がいつか始めたり…あ!シンタローさん、昨日仏壇拝みに来てくれたんでしょ?すんません、昨日の電話では忘れてて…ありがとうございます」
「拝みに、て…」
その言い回しに妙な可笑しみを感じ、車崎は苦笑した。
「いや、いっくんにもお土産くれたって…ありがとうございます」
「ええよ、あの子…可愛いな。お兄さんソックリで」
「ね、ほんまに…てこてこ歩くんが可愛うてもう…貢いでしまいそうになります」
 自分の幼い頃の姿の面影もある甥っ子、やんちゃに動き回る短い手足もまた愛しくてしょうがない。秋花もたまに実家を訪れては彼に幼児用菓子を贈っていた。
「ひゃはは、確かに。…あの眉毛は誰似や?親父さんか、」
「そうですね、私も眉毛は父さん似やからつり眉。他のパーツはまぁまぁ母さん寄りかな」
「うん、可愛い」
「話が繋がってへん」
「思いついたら言うのよ。シューカは可愛い」
「あほか」
窓際に頬杖をついて、秋花は景色を見るフリをして照れた顔を隠す。

「…そういや、『お土産』としか聞いてへんけど、いっくんに何くれたんすか?」
「ん、車のおもちゃ」
「せやろ思うた」
予想が当たり、秋花はふふと笑った。
「好みとちゃうかったかな?男の子でも、人形遊びとかの方が好きな子おるやんか」
「好きや思いますよ、あの子、動くもんは興味あります」
「良かったわ。持ってじぃと眺めてるだけやったから」
「まだ遊び方が分かれへんのかも…」
 模型なのかギミック付きなのか、どのような玩具かは知らないが「くるま」を認識して走らせて遊ぶようになるのはまだ先のことだろう。
「そうか…」
「シンタローさんも、小さい頃から車好きでした?」
「そこそこな、普通よ……本気で、仕事にしようて…進路考え出したんはシューカに会ってからかな」
「へ、そうなんすか⁉︎…っ…イテ」
驚いた秋花は窓枠についた肘がずり落ちて妙な所を打撲した。
「うん、親父さんの生前から俺もシューカもミズモリ出入りしてたやん、整備士って仕事が気にはなってたよ。んで親父さん亡くなって…元々高校は工業って決めててんけど、シューカが整備士目指してる言うの聞いて、俺もなったろかな思うて勉強始めた」
「はぁ、」
「んで、シューカも入学して…変わらず自動車関係って決めてたみたいやし、同じ業界で働けたらなって思うて…たまたま今の会社が募集してたから上手いこと入れたし…手に職ありゃあどこでもやっていけるしな。車関連で大型免許も取ったし…牽引も去年取ったよ」
「へ…すご、」
「シューカを追いかけたっていうよりは、何しよかな~て迷ってる時に選択肢を与えてもうたみたいな…そんな感じやな……別に、先回りストーカーちゃうよ、うん…」
車崎は細い目で遠くを見つめ、降りるインターまでの距離を確認する。
「へぇ…すごいな…」
「シューカは?目標とかは」
「んー…とりあえず…特殊も取りたいし…あと、板金とか…割と上手いんで資格取りに行こうかなとか…」
「確かに、お前は親父さん譲りで塗るの上手いわ。…ほー…前向きやな…」

 資格手当が出る会社なので取っておいて損は無い…二人はそれぞれに未来を考えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

アダルト漫画家とランジェリー娘

茜色
恋愛
21歳の音原珠里(おとはら・じゅり)は14歳年上のいとこでアダルト漫画家の音原誠也(おとはら・せいや)と二人暮らし。誠也は10年以上前、まだ子供だった珠里を引き取り養い続けてくれた「保護者」だ。 今や社会人となった珠里は、誠也への秘めた想いを胸に、いつまでこの平和な暮らしが許されるのか少し心配な日々を送っていて……。 ☆全22話です。職業等の設定・描写は非常に大雑把で緩いです。ご了承くださいませ。 ☆エピソードによって、ヒロイン視点とヒーロー視点が不定期に入れ替わります。 ☆「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しております。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

謎多きお見合い相手は、秘めた愛を彼女に注ぐ

玖羽 望月
恋愛
老舗医療機器メーカーのマーケティング・企画部で働く石田琴葉【いしだことは】(28)は、仕事一筋で生きてきた。 学生時代に恋愛で痛手を負った琴葉は、それから勉強と仕事を最優先に生きてきた。 ある日琴葉は、祖母にお見合いを勧められ、「会うだけなら」と渋々お見合いに臨んだ。 そこに現れたのは眉目秀麗という言葉が似合う榛名智臣【はるなともおみ】(33)だった。 智臣は琴葉の仕事や業界に精通していて、思いの外話しは弾む。ただ自身のことは多くを語らず、会話の端々に謎を残してお見合いは終わった。 その後何も連絡はなく、気になりながらも目の前の仕事に全力を尽くす琴葉。 やがて迎えた、上層部の集う重要会議。 緊張感の中、突如発表されたのはマーケティング・企画部長の異動と、新たな部長の着任だった。 そこに現れた新部長は―― ※こちらのサイトのみ投稿しています。 (3月中旬頃まで充電期間いただきます🙏再開をお待ちいただけると嬉しいです)

処理中です...