彼女は銀狼ギャル、ときどきコアラ

茜琉ぴーたん

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5日目

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「失礼しまーす」
「はよっすー」
「おはようございます」
 会社に着いた秋花がマイロッカーへ進めば、同僚たちが口々に挨拶をくれて、
「お、シューカ来た?おはよ」
と少し早く到着していた車崎もしれっと混ざってくるので彼女はつい吹き出してしまった。
「お、はよう、です、シンタローさん」
「なんやの?調子悪い?体調悪かったら早よ言えよ」
「はい、はい…」
ロッカー越しの白々しい会話、職場恋愛のときめきを実感して秋花は人知れずはにかむ。
「車崎、お前なんでパンツ替えんの、」
「ん、穿き替えるの忘れてな」
「ちんちん見せんな、あほ」
 男性陣は下着を替える車崎をはやし立てて笑い、
「見るな、おい、シューカも覗くなよ」
と彼がノるものだから秋花は
「何で穿き替えるの忘れたんすかぁ?」
と声を投げてロッカーを閉めた。
「え、あの…うん、」
「もしかして、朝帰りっすか?」
「いや、その」
「くるま、お前そうなん?彼女できたんかぁ、」
 その後の車崎はもうしどろもどろ、下ネタはともかく女性に関しては硬派で通っていた男の突然のロマンス疑惑に整備士たちは色めき立つ。
「ふふ」
 朝礼前にひと盛り上がりする騒がしい更衣室を後にして、秋花は早めに自分のスケジュールを確認しに工場へ出た。



「いらっしゃいませ、この前はどうも」
「あ、ごめんね、お姉さん…ビックリしたでしょ、もうアイツ別れたから。車もちゃんと乗るから…お願いします」
 本日のメイン作業は先日の車検のハンダ様で、規定値ギリではあるが彼氏が勝手に改造したという軽自動車の数ヶ所の直しである。
 書類にサインをする彼女はどこかスッキリと、晴れ晴れした表情をしていた。
「はい、したら2時間くらい…もっと早いかな、終わったら連絡します。ここで待たれても大丈夫ですし、外に出られてもいいですよ。代車は要らないって事でしたけど…」
「うん、そこのショッピングモールでウロウロしてる。お願いしまーす」
 ハンダは鍵を秋花へ預け、手を振って外へ出て行く。
「…可愛い子やん、車はイカついけど」
帽子のつばを後ろに回した車崎が、見送る秋花の後ろから声を掛けた。
「シンタローさん…それを直すんですよ。あの感じやと殴られたりもしてへんかな…ちゃんと…乗ってもらいましょ」
「うん、おーし…この件全部済んだら昼、一緒に食おうな、」
「はい!」
秋花は頼れる先輩へここ一番の笑顔を投げて、先に作業場へと出る。

「あー、擦ってるね、可哀想に」
「んー…とりあえず今回は高さっすね、作業代は手切れ金替わりにぶんどったらしいですわ」
「はぁ、まぁその元カレがいじったんやもんな、当然か」
 二人は汗を流しながら話しながら、とはいえうるさい工場こうばなので接近した時だけ、適度に会話をしては意思疎通する。
 車崎は自分の技術や知識を授けるように秋花を補助しては指導し、時折「ここはどうする?」などと質問しては答えさせて彼女を試した。
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