彼女は銀狼ギャル、ときどきコアラ

茜琉ぴーたん

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5日目

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「ふー…以上、です」
「ん、OK…腹減った…メシ食お」
 昼過ぎ、予測よりはハイスピードで作業が済み、過分なエアロパーツが残るものの足回りは買った時の状態に戻すことができた。
「予定より速いっすね…さすがシンタローさん。お客様に連絡して来ます、先に昼買っててください」
「ほなシューカのも。何がええかな?」
「パスタと、おにぎりと、あと惣菜パン!」
普段も大食いだが更に追加、頭と体を使った秋花は異常に腹が減っている。
「よう食うね、……そういや昨日の夜が少なかったもんな、なんでやったっけ?ひゃはは」
「あほぉ」
「朝から運動したしな、な、」
「黙って、いってらっしゃい」
 ニマニマとデレてロッカーへ戻る車崎の背中を見送り、秋花はハンダへ出来上がりの連絡をした。
 彼女は早めの昼を食べていたそうで、秋花は「急がなくて宜しいですよ、ごゆっくりなさってください」と言葉を添える。気を利かせたようでそうでもない、秋花も車崎とのランチタイムをゆっくりと取りたかっただけなのである。

「戻ったで、シューカ!天気ええから屋上で食おか」
「はーい、行きます…すんません、昼入ってるんでハンダ様来られたら呼び出しかけてください。車は表に回してますんで、」
秋花は事務方へ引き継ぎを行い、屋上へと上がった。

「スパゲティな、おにぎり…梅と、ツナマヨパン」
「ありがとうございます、レシートあります?」
「600円くらいかな?ツケでええよ」
「へへ…やった、ここのボロネーゼ好き♡」
 この周辺にはコンビニが2軒、店舗の前の国道を渡った所に1軒、そして裏手を少し歩いた県道沿いにもう1軒ある。
 秋花は裏手のコンビニのパスタソースが大変好みで、新製品が出たりメニューの改変が起こるたびに試しては同僚へ紹介していた。
「せやろ、うん…しっかり食べてな、体力つけてな」
「体力はそっちもやん…………ちゃいますよ、別にそういう意味とちゃう、」
 「体力」は何に対してか?車崎は牛丼の蓋を開けながら秋花をニタニタと見つめ、
「うん、体力つけるよ。シューカとガッツリ戦わなアカンからね」
紅生姜べにしょうがを摘んで差し出す。
「何がやの…もう…要りませんよ、頑張って食べたら?」
「要らんよ、漬もん嫌いやねん」
「ほな牛丼にせんかったらええのに。昨日も食うたでしょ」
 昨日の昼は地産牛肉の牛丼を食べたはず、それなのにまたリピートとはなかなかである。
「コアラのとこでな。んー、あれはお上品やったよ…ええ肉やったし。俺はもうちょいジャンクなのでええねん、ハイ、生姜」
「要らん…」
「せやシューカちゃん、口移しなら食うよ」
「あほか……美味ウマ♡」
ミートソースをぐちゃぐちゃに混ぜて麺全体に絡ませて、秋花は豪快に巻いては掻き込んだ。
 トマトの塩辛さではなく肉の甘味がしっかり出たこの味、前々回のメニュー改変で味が変わってしまったが、客の声を反映したのかすぐに再改変して元の味に戻してくれたので秋花は大層助かっている。
「シューカちゃんの口移しなら何でもイケんなぁ、どやろなぁ」
「せぇへん、仕事中や」
「休憩中や」
「……あほ!」
あまりのしつこさに秋花は折れ、挽肉の詰まったフォークで紅生姜をすくって赤く染まった口へと入れた。
 そして
「ん、おあほら、」
と車崎が食い付くのを構えて待てば秒で顔が飛んでくる。
「ん♡」
「ん、ん、」
「んー…………辛い」
無事に口移しできたもののやはり男の舌には合わず、しかし辛抱して飲み込みお茶で流し込んだ。
「あはは、子供やなぁ」
「甘いもんだけ食うてたい」
「中華は好きやのに?」
満福まんぷく亭の中華は辛くないもんね」
「あ、そう」
 誰が来るやも分からぬ会社の一角で二人はゆったりと、睦まじく時間を過ごす。
 秋だというのにまだまだ昼間の日差しは夏とそう変わらない、かんかんと照る太陽からも肌に感じる暑さからも秋花はそのように思った。
「暑いなぁ、」
「そうっすねぇ、日陰とはいえ…ね、」
「シューカ、あんまり化粧してへんね」
「え、」
 近いうちに美容院を予約して髪色を変えて、だんだんと大人しく落ち着いた雰囲気にしたい…いつもよりアイカラーを控えめにしただけだが、車崎はすぐにその変化に気付いたらしい。
「いつもよりは、っすよ。ちょっとずつ、ね、清楚に…してこかなって…」
「ふーん?ゴテゴテのギャルメイクのシューカも抱いときたいねんけどな」
「あほ、何言う」
『♪~♪~、業務連絡、業務連絡、整備部・守谷もりやさん、整備部・守谷さん、事務所までお戻りください』

 館内放送での呼び出しで秋花は背筋を伸ばし、おにぎりと惣菜パンを食べきらぬままスパゲティの容器に蓋をした。
「っと、戻らな…」
「ええよ、置いてき。片付けるから」
「すんません!…ほな、シンタローさん、また!」
「おう、」

 秋花は階段を降りながら口臭スプレーを舌へ数回プッシュし、ぱたぱたと急いでハンダの待つ事務所へと向かう。
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