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3日目
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しおりを挟むその夜、秋花が仕事を終えて帰宅すると玄関ドアに付いたポストにメール便の荷物が2通突っ込まれていた。
「…何か頼ん…あ、」
それは一昨日の夜寝床で選んだ下着、デイリー用のショーツ3枚組とセクシーな上下セットである。
「も、もう届いたんや…ん…」
カサカサと開封すると見慣れたフィルム包装の中に、ショーツとセットがそれぞれ袋入りで収まっていた。
「どれどれ…お、」
受け取りが面倒なのでメール便でいいやと選択したものの、ブラジャーのカップが崩れてはいないかといささか心配になる。しかし勝負用のそのランジェリーはノンワイヤーで、パッドも入ってないためにぺたんこにしても問題無いようだった。
「……えろ、い、どうしよ、届いてもうた…どうしよ、」
発送の連絡メールは確かに受信していたように思うがここまで早い到着とは。
秋花が目下混乱中なのは"明日"これを着けて行くか否か葛藤しているためである。
もし、例えば誘われて脱衣することがあったとして、これを着けていれば彼はそれなりに喜んでくれるかもしれない。しかしこんな脱ぐ前提のものを着込んでいてはこちらの期待度もバレてしまうし貞操観念も疑われるだろう。
それに包むだけのブラジャーでは服を着た時のスタイルが崩れてしまう。せっかくのデート、いつものぶかぶかの上着は着ずに女らしさを見せたいような…気もせんでもない。
「いや、そもそも…何着よう、うーん、」
『♪~♪~』
「あ」
とりあえず洗濯だ、そう思ったタイミングで車崎から着信が入る。
「もしもし、」
『あ、シューカおつかれ、もう帰った?』
「はい、ちょうど家に着いたとこで…どうかしました?」
『ん、明日の…予定伝えとこか思ってな』
「はぁ、」
チャットアプリでもいいのに、そうは思うが彼の声を聞けば安心して、しっかり休めたのだろうかそれは溌剌としているように感じた。
秋花は肩でスマートフォンを挟み、作業着を広げて洗濯機へ投入する。
『まずな、10時くらいに集合な、迎えに行くから。行き先は内緒な、一応歩ける格好で来て、……なに?風呂入ってんの?なにこの音?』
ドポドポと給水を始めた洗濯機の音に車崎は反応した。
「洗濯機っす、歩ける格好っすね、了解です、」
『とはいえ、デートや言うことを忘れんなよ?』
「は?」
『隣に俺が立ついうことを考えてな、テキトーな服で来るなよ』
「はぁ、………え、シャツにジーパンとか、」
『あかんて。可愛らしい服も見てみたいやん』
「私がスカートとか穿かへんの知ってるでしょ、」
洗剤を測って入れて、秋花は訝しげな顔で電話の向こうの車崎を睨む。
下着の問題も解決してないというのにさらに問題を増やしやがって、居住スペースのクローゼットを開いてみるも中に礼服とパーティードレス以外のスカートは入っていない。
『知ってるけど。スカートやなくても彼女っぽいな、うん…まぁその……俺はな、シャツにパーカー、あとジーパンで行くから』
「え、合わせろって言うてんすか?」
『合わせてみてよ、シューカの方が服持ってるやろ、な、あー、帰りは夕飯食って解散な、』
「はぁ、」
『シューカ、俺ごっつぅ楽しみにしてるからな』
「ええ、分かりましたよ…」
『ほなね、明日な、おやすみ、』
「おやすみなさい、…………はぁ、シャツ、パーカー、デニム………はぁ?」
私が合わせねばならないの、どの様に。
秋花はとりあえず、知っている中で一番ファッションに詳しいであろう同僚・遥の電話番号を履歴から選択してダイヤルする。
「もしもし、あ、あのさ、今から言う服の奴とデートするなら、どんな服着て行く?」
『は?なに』
「シャツ、パーカー、ジーパン、どう?」
『何言ってんの?』
ガヤガヤと電話の向こうは賑やかで、遥の口ぶりからもおそらくお店屋さんに居て酔っていることが分かった。
「だから、自分だったら、何着て行く?可愛い系で」
『はぁ~?パーカーとか、そんなカジュアルな格好の男とデートなんかしない、だいたい、シャツって何?Tシャツ?』
意識高い系との寿退社を狙う遥の恋愛辞書には、そもそもそんな服装の男性とデートするなんて項目自体が掲載されてはいないのだ。
「やかましな、するとしたら、や!」
『え~…私なら萌え袖のニットに新しいスカート合わせるけど…秋花ちゃんスカート持ってないでしょ、ロングのワンピースとか買えない?足首まで隠れるやつとかさ、秋花ちゃん背ぇ高いし様になるよ。秋だから落ち着いた色のやつ。下は適当にカットソー合わせて、靴下にスニーカー、らしくていいと思う。まだこの時間ならモールの服屋さん開いてるよ、』
「うん、うん……、なる、うん……、ありがと!」
遥は酩酊しているようだったが彼女なりに考えてくれて、早口だが事細かにアドバイスをくれた。
電話を切った秋花はなんとなく完成図をイメージしながら、まだギリギリ開いているアパレルチェーン店へと車を走らせる。
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