彼女は銀狼ギャル、ときどきコアラ

茜琉ぴーたん

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4日目

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「この後は?」
「ん、これ、羊見て、花畑見て…こっち戻って、ウサギ見て、鳥、亀、」
地元食材を使った牛丼を食べ進めながら、車崎は園内マップを広げて指差した。
「またモフモフしてんねや…楽しみ」
「うん、シューカとおると楽しい」
「聞いてへん……もう…」
 ロケーションの力もあるのだろうが、ゆったりと流れる時間の中で車崎と二人、心は穏やかになり、それでいて時たま急くように胸を打つ。
「私…シンタローさんと出会って長いけど…ほんま、恋愛のどうこうは考えたことなかってん…歳の近い兄ちゃんって感じで」
「せやろな、俺も妹みたいに思うてた」
車崎は大人気なく、のっていた紅生姜を秋花の丼へ移送した。
「ちょ、もー……そういうとこっすよ、シンタローさん……でもなんか、うん…意識すると……ドキドキしますね」
「そうか、ほなもっと早く言えば良かったな」
「そうっすね、したら私も腹筋をあいつに見せんでも良かったのに」
「せやな……もったいない…いや、ごちそうさま」
「ごちでーす」
 しまった、うっかり下ネタになりそうだった…今日はあくまで初デート、下世話な話はまたいつでもできるだろう。
 二人はペロリと丼を食べ切って、羊の待つ牧場ゾーンを目指した。



「モフモフや、」
「モフモフ…」
 白やブラウンの羊がてんこ盛り、見ているだけで癒されてため息が出る。
「はー……せや、神戸にもこういうとこあるらしいねん。そこはカピバラとかアルパカがおんねんて」
「おぉ、いいっすね」
「今度、一緒に行こ、シューカ」
「ええ、連れてって下さい」
 1週間が終わる時に改めて答えを言うつもりではあるが、二人はなんとなく…もう正規のカップルになったつもりでいた。
 秋花は隣を歩く男へ右手を差し出し、車崎はその手をごつごつした左手でぎゅうと握る。
「案外…手ぇ小さいな」
「シンタローさんと比べればね、そりゃあ」
「女の子…やねんなー」
「一応ね」
自分から差し出した手に照れを感じ、しかしすっぽりと包み込まれるその温かみとホールド感にはかつてないほど安心する。
「一応どころか超女の子よ、俺の彼女、」
「暫定っすよ、まだね」
「ええよ、なんでも。どうなったって、俺はシューカのこと好きやから」
「変なひと」
「せやろか、ひゃはは」

 道なりにぐるりと周回してソフトクリームを食べ、一番大きい花畑に着くも花は咲いていなかった。
「9月は狭間の時期なんやな…ついてへん」
「11月やったらコスモスか…先月ならひまわりやったんすね、」
渦潮うずしおに続いて、計画ミスやな」
種を取る前の茶色くなったひまわりが紐で纏められて横たわる、通り過ぎながら畑を見て車崎はしょぼんと肩を落とす。
 しかし秋花が
「ほな、11月にまた来ましょか」
と笑えば
「ほーか…行くとこ多くて困るなぁ、うん」
と元気に笑い返した。
 落ち着く、楽しい、安心する、この人は私の事が好きで、それだけで有り難みを感じ嬉しくなって…繋いだ手が汗で湿ってきても解きたくない、離したくない。
「(あと何時間でさよならかな…帰りたないなぁ…)」
 秋花はおそらく生まれて初めて、恋愛における切なさを感じ…この先起こる彼との別離を勝手に想像しては寂しさに震えた。
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