21 / 46
4日目
21
しおりを挟む「この後は?」
「ん、これ、羊見て、花畑見て…こっち戻って、ウサギ見て、鳥、亀、」
地元食材を使った牛丼を食べ進めながら、車崎は園内マップを広げて指差した。
「またモフモフしてんねや…楽しみ」
「うん、シューカとおると楽しい」
「聞いてへん……もう…」
ロケーションの力もあるのだろうが、ゆったりと流れる時間の中で車崎と二人、心は穏やかになり、それでいて時たま急くように胸を打つ。
「私…シンタローさんと出会って長いけど…ほんま、恋愛のどうこうは考えたことなかってん…歳の近い兄ちゃんって感じで」
「せやろな、俺も妹みたいに思うてた」
車崎は大人気なく、のっていた紅生姜を秋花の丼へ移送した。
「ちょ、もー……そういうとこっすよ、シンタローさん……でもなんか、うん…意識すると……ドキドキしますね」
「そうか、ほなもっと早く言えば良かったな」
「そうっすね、したら私も腹筋をあいつに見せんでも良かったのに」
「せやな……もったいない…いや、ごちそうさま」
「ごちでーす」
しまった、うっかり下ネタになりそうだった…今日はあくまで初デート、下世話な話はまたいつでもできるだろう。
二人はペロリと丼を食べ切って、羊の待つ牧場ゾーンを目指した。
・
「モフモフや、」
「モフモフ…」
白やブラウンの羊がてんこ盛り、見ているだけで癒されてため息が出る。
「はー……せや、神戸にもこういうとこあるらしいねん。そこはカピバラとかアルパカがおんねんて」
「おぉ、いいっすね」
「今度、一緒に行こ、シューカ」
「ええ、連れてって下さい」
1週間が終わる時に改めて答えを言うつもりではあるが、二人はなんとなく…もう正規のカップルになったつもりでいた。
秋花は隣を歩く男へ右手を差し出し、車崎はその手をごつごつした左手でぎゅうと握る。
「案外…手ぇ小さいな」
「シンタローさんと比べればね、そりゃあ」
「女の子…やねんなー」
「一応ね」
自分から差し出した手に照れを感じ、しかしすっぽりと包み込まれるその温かみとホールド感にはかつてないほど安心する。
「一応どころか超女の子よ、俺の彼女、」
「暫定っすよ、まだね」
「ええよ、なんでも。どうなったって、俺はシューカのこと好きやから」
「変なひと」
「せやろか、ひゃはは」
道なりにぐるりと周回してソフトクリームを食べ、一番大きい花畑に着くも花は咲いていなかった。
「9月は狭間の時期なんやな…ついてへん」
「11月やったらコスモスか…先月ならひまわりやったんすね、」
「渦潮に続いて、計画ミスやな」
種を取る前の茶色くなったひまわりが紐で纏められて横たわる、通り過ぎながら畑を見て車崎はしょぼんと肩を落とす。
しかし秋花が
「ほな、11月にまた来ましょか」
と笑えば
「ほーか…行くとこ多くて困るなぁ、うん」
と元気に笑い返した。
落ち着く、楽しい、安心する、この人は私の事が好きで、それだけで有り難みを感じ嬉しくなって…繋いだ手が汗で湿ってきても解きたくない、離したくない。
「(あと何時間でさよならかな…帰りたないなぁ…)」
秋花はおそらく生まれて初めて、恋愛における切なさを感じ…この先起こる彼との別離を勝手に想像しては寂しさに震えた。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
謎多きお見合い相手は、秘めた愛を彼女に注ぐ
玖羽 望月
恋愛
老舗医療機器メーカーのマーケティング・企画部で働く石田琴葉【いしだことは】(28)は、仕事一筋で生きてきた。
学生時代に恋愛で痛手を負った琴葉は、それから勉強と仕事を最優先に生きてきた。
ある日琴葉は、祖母にお見合いを勧められ、「会うだけなら」と渋々お見合いに臨んだ。
そこに現れたのは眉目秀麗という言葉が似合う榛名智臣【はるなともおみ】(33)だった。
智臣は琴葉の仕事や業界に精通していて、思いの外話しは弾む。ただ自身のことは多くを語らず、会話の端々に謎を残してお見合いは終わった。
その後何も連絡はなく、気になりながらも目の前の仕事に全力を尽くす琴葉。
やがて迎えた、上層部の集う重要会議。
緊張感の中、突如発表されたのはマーケティング・企画部長の異動と、新たな部長の着任だった。
そこに現れた新部長は――
※こちらのサイトのみ投稿しています。
(3月中旬頃まで充電期間いただきます🙏再開をお待ちいただけると嬉しいです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる