彼女は銀狼ギャル、ときどきコアラ

茜琉ぴーたん

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4日目

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「いやぁ……モッフモフやったなぁ、可愛かったわ」
「ほんまに…犬・猫とはまた違う可愛さで…ふふ」
 二人は小動物も鳥類もたっぷりと楽しんだ後、ショップにて家族への土産を購入して駐車場へと戻る。
 特産品からオリジナルのコアラグッズまで品揃えは豊かであったが、秋花は中でも限定販売の靴下を気に入りサイズ違いで2足買った。
「ええなぁ、俺もお揃いの靴下履きたい」
「男性のサイズあれへんから…明後日も休みやから、いっくんに持って行ったろ♡」
「ええなぁー…」
コアラ柄の靴下はサイズ展開が25センチまでだったため、28センチの車崎は諦めざるを得なかったのだ。
「ぬいぐるみ買えば良かったのに」
「あのモフモフ感はぬいぐるみとはちゃうのよ…色味も違うたし…うん、えーと…どうしよかな…ここまでしかプラン考えてへんかった」
「はぁ、ほな本州に戻ります?」
「え、まだ早いやん。帰りたない…まだ浮世離れしてたい」
 別段行きたい場所も無いようだが、車崎は橋を渡って本土へ戻ることを拒む。
「テーマパークとかは結構あるみたいやけど…今からやったらそんなに遊ばれへんし…」
「うーん」
「夕飯は?何か考えてます?」
「地元で焼肉」
「ほな…ゆっくりしましょか…」

 焼肉と聞けば少しお腹も空いた気がする、大橋の麓にある道の駅まで走り、そちらでも二人はご当地バーガーをぱくついた。
「ええ景色ですねぇ」
「ほんまに…海はええなー…」
「シンタローさん、何か悩みでもあるんすか?」
「んん?んー…無いよ、毎日楽しい」
 帰りたくないと言ったりうつつから離れたがったり、何か憂鬱ごとでもあるのかと秋花は勘繰ってしまう。自分も帰りたくないとは思っているが、今日この時というよりはもっと広範囲の、現実から目を逸らすような寂しげな雰囲気を車崎から感じた。
「何かあるなら言うて下さいよ?その…どっか体が悪いとか」
「え、無い無い、すまん、そんな心配させた?ごめん、元気よ、」
そこまで儚さを醸してしまったかと秋花の困り顔を見て車崎は慌てふためく。
「ならええっすけど………美味し…」

 二人はたっぷり牛肉の挟まったバーガーを口元を汚しながら食べきり、「ここ付いてる」などとそれぞれ指摘し合った。
「ごちそうさん……悩み、なぁ……せやなぁ、なんか……うん、やる事が多くてね、何から話そかな…」
「へ、なに、」
 車崎に促され、秋花はまた手を繋ぎ駐車場まで歩き始める。
「あのー…俺な、今の店で働き出して10年目やねんけどな、その……辞めよかな…て、思てんねん」
「え、え⁉︎なんで、」
秋花はぱくぱくと口を空で動かして動揺し、前を見据える車崎の横顔を見つめた。
「すぐやないよ、でも来年の春かな…んー…まぁ乗りや、」
「へぇ、……………んで、」
 車に乗るとシートベルトまできっちりはめて、秋花は運転席へ身を乗り出す。
「嫌とかやなくてな、もちろん楽しいねんけど……独立、しようか考えてて」
「どくりつ、……起業するんすか、」
「うん……その…ミズモリの…水本みずもとさん、社長な、そのお孫さん…コーキ言うねんけど、来年卒業でな、自動車大学校で在学中にもう資格取ってんねんて。んで…ミズモリ車装な、またやろか、言うて……サポートしながら実務経験積ませて、なんやかんや…していこうかなーいうて…やってんのよ」
「は……何で言うてくれへんの…」
「いや、しばらく給料も不安定やし先行きも分からへんねんからね、心配さすのも悪いし……ん、出すよ、………んでまぁその…上手くいくかなーとか、心配もあんねんな、」
 父の仕事場でもあったミズモリ車装、その復興に車崎は声を掛けてもらっていたのか、秋花は嬉しさとともに、置いてけぼりにされた寂しさが湧き上がった。なにせミズモリの「モリ」は守谷もりやの「モリ」、どちらかと言えば自分に話がくる方が順当だろうと思うのである。
「え、結婚を視野にとか言いながら、んな不安定になること後出しするのズルくないすか?」
「それに関してはすまん」
「…んな話があること、言うてくれたら良かったのに…」
「いや、俺とこは近所やし町内会も一緒やから…親同士がなんとなく理想で話しててんて。んで社長もその気なってきて、いよいよ『どうか?』て俺に話が来たのよ…お前のお母さんにはこの前話したよ」
「…息子さんは会社員やったろ、孫…隔世かくせいで世継ぎか…社長も嬉しいやろうけど…その子、いきなり大丈夫なんすか?」
「お前かて、卒業したらミズモリで実務したろ?社長はあの時やって『大手で場数踏んだほうがいいよ』て止めたのに。実力は分からへん、やっていって、慣れてくのよ」
「む…」
 確かにそう、小さな町の自動車整備工場に住み込みで転がり込んで技術を磨いたのは自分も同じ…お孫さんの気持ちも実はよく分かる。
 しかし安定した仕事を捨てて茨の道へ、車崎の居ない仕事場を想像すると途端に胸がきゅうと締め付けられた。
「……さみしい…な、」
「そう?家は変わらへんよ」
「それでも…うん…」
「そこまで寂しがってくれるとは思わへんかったな…今日言わんほうが良かったか」

 楽しいデートに水を差した、薄目の車崎は薄暗くなってきた景色に注意しつつ、高速へ乗って本州へ向けて橋を渡る。
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