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しおりを挟む前日夜から前乗りして越境、大阪へ。
午前公演の客の入り待ちを開演ギリギリまで会場前で行った。
「ルイスさーん、ルイスさーん!トンボです、居ませんかー?」
客入りはちょろちょろ、人波に向かって声を張り上げるも視線を向けられるだけで該当者はいない。
「次かな…午後公演…」
開演時刻になり私は自分の席へ着き、無用にキョロキョロと周りを見たりして隣の席の男性に睨まれたりした。
さて肝心のネヤガワラのライブだが、残念ながらあまり彼らに集中できなかった。
せっかくの推しのライブなのに、頭に過るのは彼女のことばかり。
こんな衣装だった、あのネタが良かった、感想を伝えて共有したいのに彼女はいない。
「(ダメだ…失礼だ…)」
純粋に舞台を楽しむこともできなくなっている、私は失意で午後公演を待たずに帰宅することにした。
・
電車に揺られて40分、鞄の中では折り畳んだプリント用紙が幅を取っている。
推しの晴れ舞台なのにこんな半端な気持ちで臨むなんて、ファンでいることさえも辞めてしまおうかという気分になった。
「……あ」
車内の路線図をふと見上げて、ルイスさんの街のメイン駅を見つけた私は、ふと「行ってみようかな」という考えが浮かぶ。
どうせ午後は何もする事がない、ライブの感想を呟いたところで読んでくれる彼女はいないのだ。
駅について乗り越し分を精算し、私は腹でも満たそうとインターネットで『割烹』と検索した。
ルイスさんは家族と割烹料理屋で働いていると聞いている。
彼女が働いてる店に当たれば…なんて甘い考え、そもそも働いているのがこの市内かどうかも分からないのに。
グルメサイトの和食のカテゴリには山ほどの件数、そして本場はどの店も美味しそうな写真が載っている。
「ん……ここ…いいかも…」
なぜだろうスクロールの手が止まり、一軒のお店に心惹かれた。
近くてお手軽な価格帯でドレスコードも無さそうだし、ランチタイムが長いしちょうどいい、と向かうことにする。
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