こんなことならオフ会をしておけばよかった

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
4 / 11

4

しおりを挟む

 前日夜から前乗りして越境、大阪へ。
 午前公演の客の入り待ちを開演ギリギリまで会場前で行った。
「ルイスさーん、ルイスさーん!トンボです、居ませんかー?」
客入りはちょろちょろ、人波に向かって声を張り上げるも視線を向けられるだけで該当者はいない。
「次かな…午後公演…」
 開演時刻になり私は自分の席へ着き、無用にキョロキョロと周りを見たりして隣の席の男性に睨まれたりした。

 さて肝心のネヤガワラのライブだが、残念ながらあまり彼らに集中できなかった。
 せっかくの推しのライブなのに、頭によぎるのは彼女のことばかり。
 こんな衣装だった、あのネタが良かった、感想を伝えて共有したいのに彼女はいない。
「(ダメだ…失礼だ…)」

 純粋に舞台を楽しむこともできなくなっている、私は失意で午後公演を待たずに帰宅することにした。



 電車に揺られて40分、鞄の中では折り畳んだプリント用紙が幅を取っている。推しの晴れ舞台なのにこんな半端な気持ちで臨むなんて、ファンでいることさえも辞めてしまおうかという気分になった。
「……あ」
 車内の路線図をふと見上げて、ルイスさんの街のメイン駅を見つけた私は、ふと「行ってみようかな」という考えが浮かぶ。
 どうせ午後は何もする事がない、ライブの感想を呟いたところで読んでくれる彼女はいないのだ。

 駅について乗り越し分を精算し、私は腹でも満たそうとインターネットで『割烹かっぽう』と検索した。
 ルイスさんは家族と割烹料理屋で働いていると聞いている。彼女が働いてる店に当たれば…なんて甘い考え、そもそも働いているのがこの市内かどうかも分からないのに。
 グルメサイトの和食のカテゴリには山ほどの件数、そして本場はどの店も美味しそうな写真が載っている。
「ん……ここ…いいかも…」
なぜだろうスクロールの手が止まり、一軒のお店に心惹かれた。
 近くてお手軽な価格帯でドレスコードも無さそうだし、ランチタイムが長いしちょうどいい、と向かうことにする。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

僕の完璧な妻

茜琉ぴーたん
恋愛
 年上の妻は、仕事も家事も上手にこなす「できる女」だ。  産後も変わらぬ美貌でバリバリ働く妻に、僕は嫉妬の気持ちを抱いてしまっていて…。 (全4話) *キャラクター画像は、自作原画をAI出力し編集したものです。

新たな道

詩織
恋愛
恋人期間2年。 婚約までしてたのに突然逝ってしまった。 気持ちの整理が出来ない日々。 月日はたっても切り替えることが出来ない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

復習

詩織
恋愛
私は優しいから大丈夫。

つかまえた 〜ヤンデレからは逃げられない〜

りん
恋愛
狩谷和兎には、三年前に別れた恋人がいる。

処理中です...