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5月
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しおりを挟む「…ナナ、」
「ん…旭くん、筋肉ついてる…ん♡いい匂いするー…んー♡」
「やっぱまだ酔ってるんでしょ、危ないから離れて、ね、」
「うん…ねェ、好きよ、旭くん」
自分は呼び捨てにはしないのか…無理に対等にならなくてもいいのに…様々な考えが浮かぶもまずは仕事を終わらせてから、松井は
「は…う、うん、僕も好き、ナナのこと」
と精一杯の返事をして赤い耳のまま皿を片付ける。
「キスだけでどれだけ楽しめるかしら…ふふっ♡幸せ…」
「(圧がすごい…)」
松井は熱り立った股間をシステムキッチンに押し付けて隠し、少し冷やした。
・
「明日、ジムの見学に行ってみましょうか」
「うん、いきなりいいのかしら」
「定員とか無いはずなんで…僕が行く時間帯は割と空いてますし」
少し狭いがシングルベッドに並んで横になり、掛け布団と夏用布団を分け合って二人は就寝する。
「嬉しい…あの、別にひとりで行っていいからね?家でもジムでも一緒だと息苦しいでしょ」
「んー……そんなことないですけど…特別誘い合わせて行くことはしない感じにしましょうか…でも心配だからな…」
布団の中で手を繋ぎ、松井は横目ですっぴんの奈々を見やった。
「そう?一緒だと心強いけど…慣れるまではトレーナーさんとか付いてくれるんでしょ?」
「うん…プランニングとかメニュー作ってくれたりするけど……うーん、」
「なによゥ……旭くんは、私じゃなくて私のおっぱいの心配してるでしょ」
「違うよ…ナナさん、存在感あり過ぎるからさぁ…目立つんだよ…な、ナンパとか…夜だと結構いるんだよ。汗かいてハイになっちゃって、変な…気分になっちゃう人が」
メニューをこなした達成感と高揚感、疲労でふわふわとした気持ちでいるところに薄着で汗に濡れた女性がいると、どうしても体が反応してしまうことがあるのだ。
おまけに体が仕上がったという自信もあって、王様にでもなったかの様に堂々とした気分で女性を品定めしてしまう。
奈々はもごもごと口籠る松井を睨み返し、
「私が断ればいい話じゃない。…信用できない?」
と覆い被さった。
「……」
天蓋の如くシーツに顔に垂れる髪、松井の体を潰さないように掌と膝をついて、しかし大きな乳房は男の胸にドンとのしかかる。
「あの…む、ムキムキのさ、いい身体の男ばっかりだからさ…ナナさんの好みなんじゃないかなって……あ、ごめんなさ、」
「オラオラ系の雄み強い男は好きよ、でも今は旭くんが好きだから誘いに乗ったりしないわ…馬鹿にしないでよ」
逆光で表情が見えないが絶対にまだ睨んでいる。
松井はその気迫と貞操の危機に怯えて
「ごめんって……ナナさん、お願い…降りて…」
と弱々しく説得した。
「気分を害したわよ」
「ごめんなさい」
「キスして、激しいやつ」
「えぇ…」
上にいるのは奈々なのにそこまで来いということか、松井は力を入れて頭を起こし首を伸ばして、彼女の唇を掠めるくらいのキスをする。
そしてこれでは期待に添えないと瞬時に悟り…肘をついて体勢を整え、片腕を奈々の首に回し髪の毛ごと顔を捕まえた。
「あ、ら、」
そこからは舌を絡めた深いキス、松井は腹筋が許す限り妙な角度で踏ん張って彼女を喰らうことにする。
「ん、……ン♡」
「ん♡」
「んプ、あ、」
ぴくぴくと腹が笑い出して上半身が倒れると同時に唇も離れ、松井は枕へ頭を落とした。
「ご期待に…添えましたか…ね…?」
「うん…旭くん上手ね…」
首に腕を回されたのがなかなかツボにはまった奈々は意外な雄みにドギマギとして、スイッチが入ってしまい指をつつつと松井の脇腹へ走らせる。
「ア、……ん、……、あ、」
「触るだけ、感度いいのね、」
「やめ、くすぐったいの弱い、あの……本当…段階を経て、うん…」
色っぽいと言うよりは笑い声、ケラケラと鳴く松井にがっかりした奈々はすんなりと体をベッドへ戻して仰向けになった。
「まァいいわ。情熱的なキス…嬉しかった♡……おやすみィ」
「おやすみなさい…」
松井はひーひーと呼吸を整えて興奮を鎮め、むあと香る女のフェロモンに当てられながら浅い眠りで夜明けを迎えることになる。
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