今宵も、麗しのボスとパーティーを。

茜琉ぴーたん

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5月

30

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「はー、いいお湯だった♡もう少し食べようかな、」
ほかほかの湯気を上げて、持参したパジャマ姿の奈々が風呂場から帰ってくる。
 前開きのボタンタイプのいわゆる普通のシャツタイプのパジャマ、その胸元は明らかに張り詰めていて…奈々の恵体を収めるには力不足のようである。
「…お酒はもうやめて下さいね」
「うん、旭くんの寝込みを襲っちゃうと困るもんね、」
「はぁ、うーん…まだ言います?」
酔ってなくてもちょいちょい放たれるエロいワード、それはただの下ネタなのか誘っているのか松井には意図が読み切れない。
 エッチな展開は見る分には楽しいが参加するのはまた別の話で、胸の触り方しか予習ができていない童貞には荷が重すぎた。
「ちょっとくらい期待しちゃうじゃない、お泊まりなんだもん」
「手は出しません、いや…出せません、情けないですけど…まだ免疫が足りない」
「人をウイルスみたいに…」
奈々は意地悪そうな顔をして、クッションに腰を下ろして食卓にあるおかずに手を伸ばす。
「とりあえず、僕もお風呂入ってきます」
「はーい、いてらー」
「呑んじゃダメですよ」
風呂に行く動線で、松井は酒瓶を回収してキッチンカウンターへと戻した。


「いい匂いがした…僕のシャンプー…はー…手ぇ出さないと失礼なのか…?レベルが高いって…」
シャワーで頭を打たれながら、松井はぼそぼそと想いを吐露した。
 松井は性行為においてはまだひよっ子どころか卵状態、対して相手は経験値もなかなかのラスボスレベルの大物である。今夜のお泊りを提案したのは奈々で、翌日が休みだからゆっくりできると申し出られたものだった。
「休まらない…はー…すぐ勃起しちゃう…あー…」
添い寝から、いっそ彼女から跨って奪ってくれたらどんなに楽か…松井はそんなことを想像するだけでも体が軽率に反応する童貞である。
 しかし彼が望むカップルの形は女性をリードする典型的な男性上位型…奈々に惚れた時点でそんなものは泡となって消えているのだが、まだ希望を捨てきれずにいた。
「キスはできる……できる…でも素面しらふならどうなんだろ……むずい…うー…」
せめて一緒に学んでいければいいのに…プライドの高い松井は、仕事でもプライベートでも自分が『教えられる立場』にいることにストレスを感じている。



「あがりましたー…」
「ん、おおかた片付けたんだけど…残りは容器に入れちゃった」
 松井が台所へ戻ると食べ散らかしていたおかずがそれぞれ綺麗に保存容器へ収められて、皿はシンクへ浸かっていた。
「いいのに…危ないなー…まだ酔ってるでしょう」
「大丈夫よ、洗い物は?私していい?」
「いえ、うちのは自分でしますよ…」
すっかり酔いの覚めた松井はパジャマの袖をまくってシリコンのスクレイパーを手に取る。
 ソースや油汚れをこれで落としておくと洗い物が楽だし環境にも優しいのだ。
「そう…ね、ほんと…敬語、やめない?距離感じちゃう」
「んー、」
「仕事の話の時は仕方ないわよ、でも…」
カウンターキッチンのリビング側から作業を覗き込み、しゅんとした奈々はすっぴんであどけなく見える。
「参ったな…」
「私以外の女の子にはタメ口きくじゃない、私もそんなのでいいのに」
「ナナさんは別格だよ…元々が上司なんだから」
「じゃあ、呼び捨てにして。私、無意味に威張られるのって嫌いだけど、彼氏にはある程度は男らしさ持ってて欲しいの」
「えー…」
「実力行使するわよ」
奈々はシンク側へと回り込み、両手が塞がった松井の背中にたわわを押し付けた。
 グッと押せば柔らかい弾力が松井へ貼り付き、むずむずと興奮が足先から脳天へ駆け抜けていく。
「あ♡やめ、あ、」
「ね、ナナって…呼んでよ、」
「ナ、ナ、」
「ちゃんと…」
後ろ頭に付くのは彼女の唇、奈々は松井の腰へ手を回してぎゅうと抱き締めた。
「…ナナ、」
「ん…旭くん、筋肉ついてる…ん♡いい匂いするー…んー♡」
「やっぱまだ酔ってるんでしょ、危ないから離れて、ね、」
「うん…ねェ、好きよ、旭くん」
 自分は呼び捨てにはしないのか…無理に対等にならなくてもいいのに…様々な考えが浮かぶもまずは仕事を終わらせてから、松井は
「は…う、うん、僕も好き、ナナのこと」
と精一杯の返事をして赤い耳のまま皿を片付ける。
「キスだけでどれだけ楽しめるかしら…ふふっ♡幸せ…」
「(圧がすごい…)」
松井はいきり立った股間をシステムキッチンに押し付けて隠し、少し冷やした。



「明日、ジムの見学に行ってみましょうか」
「うん、いきなりいいのかしら」
「定員とか無いはずなんで…僕が行く時間帯は割と空いてますし」
 少し狭いがシングルベッドに並んで横になり、掛け布団と夏用布団を分け合って二人は就寝する。
「嬉しい…あの、別にひとりで行っていいからね?家でもジムでも一緒だと息苦しいでしょ」
「んー……そんなことないですけど…特別誘い合わせて行くことはしない感じにしましょうか…でも心配だからな…」
布団の中で手を繋ぎ、松井は横目ですっぴんの奈々を見やった。
「そう?一緒だと心強いけど…慣れるまではトレーナーさんとか付いてくれるんでしょ?」
「うん…プランニングとかメニュー作ってくれたりするけど……うーん、」
「なによゥ……旭くんは、私じゃなくて私のおっぱいの心配してるでしょ」
「違うよ…ナナさん、存在感あり過ぎるからさぁ…目立つんだよ…な、ナンパとか…夜だと結構いるんだよ。汗かいてハイになっちゃって、変な…気分になっちゃう人が」
 メニューをこなした達成感と高揚感、疲労でふわふわとした気持ちでいるところに薄着で汗に濡れた女性がいると、どうしても体が反応してしまうことがあるのだ。おまけに体が仕上がったという自信もあって、王様にでもなったかの様に堂々とした気分で女性を品定めしてしまう。
 奈々はもごもごと口ごもる松井を睨み返し、
「私が断ればいい話じゃない。…信用できない?」
と覆い被さった。
「……」
 天蓋の如くシーツに顔に垂れる髪、松井の体を潰さないようにてのひらと膝をついて、しかし大きな乳房は男の胸にドンとのしかかる。
「あの…む、ムキムキのさ、いい身体の男ばっかりだからさ…ナナさんの好みなんじゃないかなって……あ、ごめんなさ、」
「オラオラ系のオスみ強い男は好きよ、でも今は旭くんが好きだから誘いに乗ったりしないわ…馬鹿にしないでよ」
 逆光で表情が見えないが絶対にまだ睨んでいる。
 松井はその気迫と貞操の危機に怯えて
「ごめんって……ナナさん、お願い…降りて…」
と弱々しく説得した。
「気分を害したわよ」
「ごめんなさい」
「キスして、激しいやつ」
「えぇ…」
上にいるのは奈々なのにそこまで来いということか、松井は力を入れて頭を起こし首を伸ばして、彼女の唇をかすめるくらいのキスをする。
 そしてこれでは期待に添えないと瞬時に悟り…肘をついて体勢を整え、片腕を奈々の首に回し髪の毛ごと顔を捕まえた。
「あ、ら、」
 そこからは舌を絡めた深いキス、松井は腹筋が許す限り妙な角度で踏ん張って彼女を喰らうことにする。
「ん、……ン♡」
「ん♡」
「んプ、あ、」
ぴくぴくと腹が笑い出して上半身が倒れると同時に唇も離れ、松井は枕へ頭を落とした。
「ご期待に…添えましたか…ね…?」
「うん…旭くん上手ね…」
首に腕を回されたのがなかなかツボにはまった奈々は意外な雄みにドギマギとして、スイッチが入ってしまい指をつつつと松井の脇腹へ走らせる。
「ア、……ん、……、あ、」
「触るだけ、感度いいのね、」
「やめ、くすぐったいの弱い、あの……本当…段階を経て、うん…」
 色っぽいと言うよりは笑い声、ケラケラと鳴く松井にがっかりした奈々はすんなりと体をベッドへ戻して仰向けになった。
「まァいいわ。情熱的なキス…嬉しかった♡……おやすみィ」
「おやすみなさい…」
 松井はひーひーと呼吸を整えて興奮を鎮め、むあと香る女のフェロモンに当てられながら浅い眠りで夜明けを迎えることになる。
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