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おまけ
ウェルカム、小笠原家・後編
しおりを挟む「僕は今のところ桃ちゃんの彼氏でしかない、ところがポッと出の旭さんはいきなり桃ちゃんの身内になった。これは悔しい」
「奈々さんとは3年は一緒に居るんだけど」
「僕は19年ですよ」
「ドヤ顔しないでよ…んで、それが?」
「だから、悔しいんです。桃ちゃんとひとつ屋根の下で暮らせるのも羨ましいし、ズルい。しれっと『桃ちゃん』って呼んでるのも腹立たしい」
「…どうしろと」
奈々さんと近くにアパートを借りるという案もあったのだが、親子で暮らしたいだろうと実家にお世話になることに決めた。
奈々さんのお母さんもお父さんもお元気で、程よい気遣いで僕に接してくれている。
僕からすれば超絶アウェーな環境で、でも気持ち良く生活出来ているのだから有り難い。
「どうにもなりませんよ、僕が嫉妬してるだけです」
「言いたいだけか」
「未熟者なので」
僕はプライドが高いので、失敗が恐いしそもそも挑戦をしないし自分の弱いところを隠すように生きてきた。
「知らない」と言うのが嫌で何でも知った風に見せかけて、実際博識だとは思うが能力以上に見えるよう振る舞ってきた。
だから、目の前の若者が小笠原家との「仲良しマウント」を取ってくるのが少々イラッと来る。
しかし同時に彼ははっきり「未熟者」であることを公言した。
自分の弱さを曝け出せるなんて青くて、でも素直で立派だなぁと羨ましく思った。
「まだまだこれからじゃない」
「そうですね…これから、うん、これからなんですよ…」
早く大人になりたいとか考えてたりするのかな、その若さが僕はやはり羨ましい。
「桃ちゃんと、結婚できると良いね」
「気安く呼ばないで下さい」
「はいはい」
「お風呂とかも、桃ちゃんのすぐ後に入るのやめて下さいね。桃ちゃんはお母さんに似て美人だから、桃ちゃんにお母さんの面影を感じてムラッとしたり、酒に酔って間違えて桃ちゃんを襲っ」
「分かったって!」
僕の新生活は、しばらく退屈しなさそうである。
おわり
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