今宵も、麗しのボスとパーティーを。

茜琉ぴーたん

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おまけ

ウェルカム、小笠原家

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 じぃーっと、こちらを見つめる視線。
 癖っ毛の青年は僕を値踏みするようにじろじろ観察しては手元を動かしている。
「あの、はじめくん」
松井まついさん、いや、小笠原おがさわらさん」
あきらで良いよ…」
「では旭さん…僕ね、言っておきたいことがあるんですよ」
向かい合って座ったダイニングで、彼…新島にいじま源は僕こと松井こと小笠原旭にそう切り出した。
 彼はまだ19の若造で、僕の妻の娘さんの彼氏、である。つまりは親戚でも何でもなく、しかし隣家に住む彼は小笠原家とは深い関わりのある男の子なのだ。娘さん…ももちゃんが生まれた時から、互いに片親で助け合いながら一緒に育って来たのだという。

 かく言う僕は、妻・奈々ななさんの実家に婿入りして、改姓したばかりの新参だ。結婚を前提とはしていたけど時期は決めていなくて、奈々さんが授かったために入籍して、関東へ越した。
 もし授からなかったら事実婚で仲良くしていこうと言っていたのだが、タイムリミットまでに妊娠したのでそれはそれで喜んだ。奈々さんも親元に帰る理由が欲しかったと思うし、桃ちゃんのことも気になっていたから良かったと思う。
 僕も奈々さんも近隣の店舗に異動配属してもらい、妻は大きなお腹を抱えて元気に働いている。

 さて、その僕の居住地である小笠原家のダイニングで、隣家の源くんが僕に言いたいこととは何なのだろう。
「何を言いたいの」
「あのですね、旭さんは血は繋がってないけど、桃ちゃんの父になったんですよね」
「んー、継父だね」
「だから、僕のお義父さんになる訳ですよ」
「それはどうだろう」
 奈々さんの前の旦那さんは健在で、再婚しているらしい。
 そして僕は関係としては桃ちゃんの父に当たる存在なのだが、養子縁組もしてないし親子感はまだ無い。
 大体、こういうのは親子と呼ぶものだろうか。桃ちゃんからしたら僕は「母の夫」、僕からすれば桃ちゃんは「妻の娘」で充分なのではなかろうか。
「僕は今のところ桃ちゃんの彼氏でしかない、ところがポッと出の旭さんはいきなり桃ちゃんの身内になった。これは悔しい」
「奈々さんとは3年は一緒に居るんだけど」
「僕は19年ですよ」
「ドヤ顔しないでよ…んで、それが?」
「だから、悔しいんです。桃ちゃんとひとつ屋根の下で暮らせるのも羨ましいし、ズルい。しれっと『桃ちゃん』って呼んでるのも腹立たしい」
「…どうしろと」
 奈々さんと近くにアパートを借りるという案もあったのだが、親子で暮らしたいだろうと実家にお世話になることに決めた。奈々さんのお母さんもお父さんもお元気で、程よい気遣いで僕に接してくれている。僕からすれば超絶アウェーな環境で、でも気持ち良く生活出来ているのだから有り難い。
「どうにもなりませんよ、僕が嫉妬してるだけです」
「言いたいだけか」
「未熟者なので」

 僕はプライドが高いので、失敗が恐いしそもそも挑戦をしないし自分の弱いところを隠すように生きてきた。「知らない」と言うのが嫌で何でも知った風に見せかけて、実際博識だとは思うが能力以上に見えるよう振る舞ってきた。だから、目の前の若者が小笠原家との「仲良しマウント」を取ってくるのが少々イラッと来る。
 しかし同時に彼ははっきり「未熟者」であることを公言した。自分の弱さを曝け出せるなんて青くて、でも素直で立派だなぁと羨ましく思った。
「まだまだこれからじゃない」
「そうですね…これから、うん、これからなんですよ…」
 早く大人になりたいとか考えてたりするのかな、その若さが僕はやはり羨ましい。
「桃ちゃんと、結婚できると良いね」
「気安く呼ばないで下さい」
「はいはい」
「お風呂とかも、桃ちゃんのすぐ後に入るのやめて下さいね。桃ちゃんはお母さんに似て美人だから、桃ちゃんにお母さんの面影を感じてムラッとしたり、酒に酔って間違えて桃ちゃんを襲っ」
「分かったって!」

 僕の新生活は、しばらく退屈しなさそうである。



おわり
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