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2022
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しおりを挟むそれから私たちは身の上話などをちょろちょろとして、デザートも分け合って食べた。
逢えなかった3年間の答え合わせをするように、互いのことを話し合った。
働いている場所、職種、働き方、休日の過ごし方。好きな食べ物、苦手なこと、好きな歌。
たっぷり話して、しっかり食べて、時刻はいつの間にか23時を回っていた。
「舞岡さん、バスは大丈夫ですか?」
「あー…まぁ、最悪歩きますよ。食べ過ぎたから運動です」
「いや、バスで10分なら結構な距離ですよ…自分で良ければ、送ります」
「あ、どうも…」
青木さんは自家用車でファミレスに来ていたので、乗せてもらうことにした。自宅が近いので歩いてでも通勤出来るらしいのだが、市の端の出張署勤務の際に購入せざるを得なかったそうだ。
「狭いですが」
「私には充分ですよ」
新古車だという軽自動車は、青木さんの立派な体を収めるには力不足のようだ。運転席にギチギチに詰まったムキムキマッチョ、この人はどこまで私を楽しませてくれるつもりなのか。
「…笑ってます?」
「い、いえ…安全上どうなのかなって…」
「後は見えますし、天井に頭が届きませんから大丈夫です…出しますね」
大体の家の場所を伝えて、マッチョ号は走り出す。
「こんな時間になって、親御さんはお怒りじゃないでしょうか」
青木さんは、少し心配そうに遠くを見つめる。
「もうとっくに成人してる大人なので、それは大丈夫です。夕飯も要らないって言ってますし」
「そうですか、舞岡さんが叱られるのは可哀想ですから」
私はまだ実家住みで、これといった不便も無く暮らしている。家には両親と父方の祖父母と弟が2人、今の時代なら大家族と呼ばれる部類だろうか。
「(…かっこいー)」
運転する青木さんの横顔に惚れ惚れする。いつもはこれが消防車だったり、救急車だったりするのだそうだ。
ざっくり聞いた話だと、消防士さんは消防と救助と救急に分かれているらしい。
初対面時に見た明るいオレンジ色のズボンは救助隊のもの、今日履いていた紺色のズボンは消防隊のものなのだそう。
専門分野の研修を受けて配属されて、そこからまた研修を受けてスキルアップを図る。分野を兼任出来ると、働く上でも実際の現場でも役立つことが多いのだそうだ。
ちなみに青木さんは今は勤務実績を積んで、救急救命士の資格取得を目指しているらしい。
「舞岡さんは…その、確認しておきたいんですが、」
「はい?」
「か、彼氏は、いらっしゃらないんですよね、いや、決めつけてる訳ではないんです、魅力的な方なのでいても不思議は無いんです、でも恋愛経験が無いと言われたので、」
「い、いません、いませんよ」
「良かった」
変なの、この告白待ちの時間は何なのだろう。もしかして、あまりの度胸の無さに告白無しでカップルが成立したことになっているのだろうか。
「(簡単にでも良いから、ハッキリ好きって言って欲しいなー)」
褒め殺しされて好意はヒシヒシと伝わっているけれど、彼が私に恋している証が欲しい。
なんて言うと、上から目線になってしまうだろうか。惚れられた強み、でワガママになっている気がする。
「……」
今朝起きた時は、まさかこんな夜になるとは思っていなかった。
狭い空間に青木さんと二人、胸の内をぶつけられないまま電灯が窓を滑って行く。
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