彼女の欲望に寛容な彼

あかね

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 そして勤しむこと20分、

「あー…マナミ、あ、ごめん、イく、ん、」

と彼が震えると

「うん♡」

と足首を極めてぐりぐりと陰部を押しつけぶら下がる。

「あっ♡あ♡♡♡」

「(男の人のイキ顔♡しゅきぃ♡)」

「おー……あー……あー…………すげ……おい、抜くから…離せ」

「うん…ごちそうさま」

「変態かよ」


 二人の出逢って3時間でのセックスはそんな具合だった。





 そうしてなんとなくで交際が始まって1週間、あの初デートから毎日真波は

『今夜会えない?』

などと伊東へ連絡を入れていた。


「…いらっしゃい」

「お邪魔しまーす…はい、晩ご飯の材料…台所借りるね」

「……」

ひょいと覗いた買い物袋の中身は肉と長芋とニンニクとニラ、精の付きそうな食材に伊東は「またか…」と股間を押さえる。

 今夜でデートは5回目、そのうちお家デートはもう4回目、真波は訪れる度に伊東の精を搾っては元気に朝帰りして行くのだ。

 家に来る=セックスがしたいだなんて限らないから部屋へ呼んだものの、来る度に求められては正直伊東もげんなりしてくる。


 食事ができて座卓へ運ばれる、仲良く平らげて伊東が口臭を気にしていると、食器を素早く片付けた真波が後ろからぎゅうと抱き付きスタミナ臭を漂わせて

「ヒロアキくん……エッチしよ♡」

と耳元で囁く。

「……今日は…」

「あんまりシたくない?」

「…あんまり…うん…」

「私で興奮せんの?」

「するよ、するけど…毎回セックスするほど性欲ねぇもん」

伊東はまだ20代も前半だが性欲はそこそこだ。

 観たり読んだりは楽しくても身体を動かしての性行為に毎晩励むほど情熱を持て余してはいないのだ。

「えー、ガッカリ」

「……」

この1週間で消費したコンドームはゆうに1箱を超えるというのに何を言っているのか、これは手に負えないと伊東は早めに逃げる態勢に入る。

「ヒロアキくん、暇さえあればエッチしまくる系の人かと思ったのに…」

「どんな想像じゃ」

「ガッカリぃ…」

「……ほんならヤリチン探して他所へ行けぇや、もう知らん、お前みたいな阿婆擦れ…もう好きにせぇ‼︎」

 勝手に人柄を想像しておいて幻滅するとは厚かましい。

 これでもこの交際期間は頑張ったつもりなのだ、詳しく性格も知らない真波を相手に無理くり興奮して腰を振ったのだから。

 抱けなければ真波に申し訳ないしヘタレだと思われるのは癪、その頑張りも認めずガッカリと繰り返すこの女には最高に腹が立つ。

「……」

 抱き付いた手を振り払われて伊東の背中は「早く出て行け」と語る。

 それは先ほどのセリフからも分かっているが真波は「好きにせぇ」の方をありがたくピックアップしてポジティブに解釈した。
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