馬鹿でミーハーな女の添い寝フレンドになってしまった俺の話。

茜琉ぴーたん

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 彼女がシャワーを浴び始めて数分、浴室の扉が開く音がして
「ねぇ直樹ー、生理用品とか無いよね?始まっちゃったみたいー」
と声が飛んできた。
「は、あるわけねぇだろ」
「だよね、上がったら買いに出るから、申し訳ないんだけどお金貸して欲しいー」
「へ…」
 長岡には彼女の初日の出血量など予測もできなかったが、何もせずに外出できるとは思えなかった。寒い中をまた歩かせることもできず、かといって助手席に座られると汚されないか心配でもあり…ひとつの結論に至る。
 浴室に近寄って凸凹したガラス越しに
「…………ハルカ、それ…コンビニにも…ある…か…?」
と勇気を振り絞れば、
「買って来てくれるの?コンビニにもあるよ、大抵入り口近くの身の周り品のとこ」
と明らかに嬉しげな籠もった声が返ってきた。
「…どんなやつ?」
「種類はそんなに無いと思う。昼用と夜用を1個ずつお願い…ごめんね」
 彼は母と姉と長く暮らしていたが生理用品の類はまじまじと見たことがない。
 なんとなく立ち入ってはいけないものだと思っていたのでドラッグストアでもその棚の筋は通らないようにしていたくらいだ。
「ちょっと、行ってくるわ…ヤカンに湯が沸いてるから…いや、ついでだから弁当も買ってくるわ…あったかくしてろよ」
「ごめん、お願いします」

 鍵をしっかりと閉めて徒歩で3分、長岡は来慣れたコンビニにてサッとナプキンを選んで弁当と共にカゴへと入れる。
 そして素早く会計を済ませ別々の袋に分けられたそれを持って、アパートへと帰った。


「…帰ったぞー」
「おかえり、ありがと…」
「大丈夫か?」
「大丈夫、汚してないよ、ありがとう」
 心配したのはそっちじゃないのだが、居間で待っていた遥は袋を受け取りトイレへ入っていく。
 長岡は弁当をレンジに入れて加熱を始め、もう1つはそのまま開けて座卓へ運び箸を付けた。

 しばらくして戻った遥は恐縮しきりで
「ごめんね」
と繰り返し、
「いいから。レンジの弁当食えよ」
と長岡が勧めるとやっと笑顔を見せる。
「恥ずかしかったでしょ」
「まぁな…でもなんだろうな……『彼女がいます』って暗にアピールしてるみたいで…妙に堂々としちまった」
「あは、そう…いただきます」
「んでハルカ、その部屋、退去日はいつ?」
「ん…今月末、だからちょっとずつ移送してたの」
遥は指先でチキン南蛮弁当の器を摘んで座卓へと置き、あちちと呟きながらラップを剥がした。
「…食い終わったら…貴重品とか荷物取りに行かねぇ?業者とか手配してある?」
「まだ…大きい家具はパイプベッドくらいだし、解体してゴミセンターに持ち込もうかと思ってたの。夏服とかはレンタル倉庫に入れてるし、あとは化粧品とか冬服、車に乗せて運ぼうと思ってた物くらいかな」
「…早いうちに…これから行くか?」
「え、大丈夫?」
 熱々のタレに苦戦する彼女より先に食べ終わった長岡は、副菜の菓子パンも開封してひと口で半分を頬張る。
「財布置いてんだろ?気持ち悪りぃじゃん…部屋とか入られてるかもしれねぇし…指示出してくれりゃ俺が運ぶから…んで車ごとこっちに来いよ」
「……直樹…男らしい…」
「男だわ」
「ありがとう…食べちゃうね、」
「急がなくていいよ…明日休みだし…」
 住所まで移されたとあってはにわかに長岡にも庇護欲ひごよくが湧いてしまい…頼られるとこうも人は強くなるのか、と我が物顔で遥の腰をさすった。
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