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しおりを挟む「ねぇ…さっきのムービー、ネットとかに流出させないでよ」
消灯した部屋のベッドの上で、長岡の胸に顔を擦り付けた遥が釘を刺す。
「させねぇよ、誰が観んだよ」
「分かんないじゃん…キッチンに立つOLの後ろ姿が好きな人が居るかもしれないじゃん」
「どの検索ワードで探しゃぁヒットすんだよ…あはは」
「!……直樹って…子供みたいな笑い方するよね…可愛い」
「あーそう?俺陰キャ扱いだからさ、笑うと珍獣見た!みたいな目で見られんだよな。普通に笑うっつーの」
「ん…見た目だけだよね、入社した時から話してるから…全然陰キャとは思わない…根性悪くてネクラだけど…さっぱりしてて、話し易くて…嫌いじゃないよ」
遥はもぞもぞと体を伸ばし、男の乾いた唇に口づけをした。
「もう嫌がらないんだね」
「見えなきゃ一緒だよ。お前だから手ぇ出さないだけで」
「むー…信頼関係はそこそこあると思わない?抱きたくなんない?まだおっぱいしか触ってくれないじゃん」
抱き付いてむにゅうと乳房を押し付けても反応は無く
「なんだよ『まだ』って…添い寝するために来てんだろ、その先はねぇよ」
と返される、虚しくなった遥は
「やっぱ『ソフレ』かぁ…」
と長岡のスウェットへ向けて呟く。
「なにそれ」
「ん、『添い寝フレンド』、略して『ソフレ』って言うんだって。何もしない、添い寝だけの癒される関係」
「…男はたまったもんじゃねぇな」
「でも直樹は何もしてこないじゃん」
「だから、………お前は同期の同僚、そんだけだからよ…責任負う様なことはできねぇって」
酒が入ったからフェラチオをされただけで、本来なら最初から行ってもせいぜい雑魚寝だけの関係だったはず。好き合う様なポイントも無ければ惚れさせる様な動きすらしてはいない。
セックスを基準とすると二人は清い関係、しかしただの同僚にしてはお互いの体と性癖を知り過ぎてしまった。
「今度の合コンね、もし…もしバッチリ好みの人がいて付き合うことになったらね、その時はすっぱりここに通うの辞めるから」
「…失敗したら?」
「その時は…慰めてよ、また添い寝して」
「うん……おやすみ、」
「おやすみ…」
まあまあ話が出来てオカズになって抱き心地のいい肉の枕、居なくなれば少しは寂しくなるか。
長岡は夢の入り口でそんなことが頭に浮かんで、「んなわけねぇわ」と自分で掻き消して深い眠りに落ちて行く。
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