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しおりを挟む昨夜。
行き先も言えない程酔い潰れた遥を抱え、長岡は仕方なく自分の家へ帰った。
駐車場が大きくて気に入った郊外のワンルームマンション、築年数こそ経っているがリノベーション済みで過ごしやすい。そこの3階の角部屋が長岡の部屋である。
「ほら、そこ寝ろよ…」
「ん、…お酒無いの?もっと呑もうよぅ、」
「焼酎くらいしか…とりあえず座ってろ、」
もう9月だが人と密着すると作業着にも熱が篭る、長岡は胸元のファスナーをヘソまで下ろして袖を抜き腰で結んだ。
「はぁ……お前、深く酔えんのな…燃費いいな……吐くなよ…」
良くない事だとは分かっているが、失恋の痛手を癒すのは酒もひとつの手か。長岡はグラスにお気に入りの焼酎を少しだけ注いで瓶に栓をする。
騙されていると勘付いていながら遥をデートへ送り出してしまった負い目、長岡にも多少の、米粒ほどだが罪悪感はあったのだ。
「うん、うん……ねぇ、あんた下の名前って何だっけ?」
「直樹だよ……あ、コーラあるわ…」
ロックよりはマシだろうしストレートなどもってのほか、飲みかけだがいいかとペットボトルのコーラを焼酎と氷の上から足せばシュワシュワと小さく黒い泡が立った。
「酔えりゃいいんだろ………ほい、麦のコーラ割りだ」
「ありがと~……………なにこれ~!変なの~♡ん、ん、」
炭酸の抜けかけたコーラはもはや香り付きの砂糖水、甘いアルコールはぐんぐんと遥の胃から脳を蝕んで、体温を上げていく。
「それだけにしとけよ…おい、」
「暑い…」
カーディガンを脱いでブラウスのボタンを開け、風を通すようにパタパタと襟を振ると辺りにふんわり汗と女の匂いが広がった。
「馬鹿、なに…男の部屋で…」
長岡もさほど純な男ではないが、さすがにノーマークの女性、しかも職場の同僚の色香に興奮しても良い事など無いと分かっているので顔を逸らす。
「なに、……あ、私にコーフンしちゃう?ダメよ、酔った女に手ぇ出したら犯罪だかんね~」
「酔ってなくても犯罪……おい、」
とろんと据わった瞳は長岡の困惑した顔を捉え、遥がその首に腕を回すと男の腰が引けた。
「ん…ねぇ、キスしよ?ダメ?」
「は?ダメだろ」
「おねがぁい…人肌恋しいの…」
長岡が振り解かないのをいい事に遥はグッと迫り、男の薄い胸に自身の柔らかな胸をくっ付けて酒臭い息を漏らす。
「恋しいって……あの詐欺野郎とシたばっかだろうが」
「でもキスはしてない…エッチしかシてないの…ね、直樹、ね、キス、しよ、ん……ん♡」
流されるままに遥を受け入れ、長岡は遂に彼女の腰に手を掛けた。
ブラウスに包まれた細い胴、その下はくねくねと…侘しいのか長岡を誘うようにうねっている。
「(酒臭ぇ…)」
ここから先に何がある?コンドームは先日使い切ったし、ナマで抱くほどこの女を愛しく思ってもいなければ責任を負いたくもない。適度な馴れ合いと下ネタを言い合うくらいの同僚、それ以上も以下も求めてはいないのだ。
「ぷは……ね、スる?エッチ…しようよー」
「馬ァ鹿、水飲め、水!」
「セフレでもいいよもう…それかフェラ、していい?」
「はぁ⁉︎やめろよ、」
生々しいワードを聞いた長岡はいよいよ体を離して遥を引き剥がし、部屋の隅へ逃げた。
「お願い♡酔うと…おちんちん、シたくなっちゃう…ね、嫌い?」
「好きとか嫌いとかじゃねぇって、おい、」
にじり寄る女豹、そこそこ豊かな胸は谷間がしっかりと見えている。
逃げ場が無くなった長岡の作業着の裾を掴んだ遥はするすると指を脛から膝へ、腿から腰へと伝わせて腰元の袖を解かずにファスナーだけ股間まで下ろした。
「パンツかわいい♡」
「うるせぇ、」
アメコミ風のコマ割りにカラフルな英語の擬音が描かれた派手なボクサー、遥はその真ん中を探って長岡のモノを取り出す。
「失礼しまぁす……わ、おちんちんもかわいい♡」
「馬鹿…」
勃たない訳ではない、この状況でいきり立つほど覚悟ができていないのだ。
「じゅぽじゅぽシていい?直樹、」
「いや、」
「ねぇ、嫌い?」
「いや、待て、」
脚を動かせば縋り付く遥を蹴り上げてしまう…逃げない理由はそれでいいか、長岡の理性がグラリと崩れた。
「剥きまぁす」
「やめ、あ、」
「ん♡ん……汗臭ぁい…ん、ん、」
丁寧に優しく、握った指をスライドさせればコーラルピンクの先端が面積を広げる。
そして竿を扱きながらぱくりと、遥は酒臭い舌で舐めた。
「うァっ……清洲ッ……あ、ア、」
「んッ…ね、大っきく…なってきた♡んッ♡」
「は……やべ……ア…気持ち…」
深く呑み込む訳ではないが温かい口内に包まれて隙間が無い、まるで真空パックしたように遥の口は長岡をぴっちりと取り込む。
「ぷハ……れしょ、上手、なの……気持ちいい、ね、」
「黙れよ……あ…お前ッ…あ♡ゔあ、はー…」
「んッ♡んッ…ふへ……我慢汁…おいちい…」
「ド淫乱じゃねぇか…」
何がレストランディナーだ、気取ってる癖にすぐに男にヤらせるし、酒が入ってなくてもこれくらい軽々できるんだろう。長岡は仁王立ちで苦々しく遥を見下ろした。
ストロークする度に崩れたハーフアップのお団子の毛先が揺れて、中腰で堪えて高さを調整する背中も、踏ん張る足先も、ぎゅうとしがみ付く手も全てが艶かしい。
「ん、なお、き♡ちゃんと、こっち、見て♡」
「ウぁ……エッロいな……もー…」
「ッふ、ん、ん♡気持ちい?」
ちゅぽんと口から離してそう動く濡れた唇だっていやらしい、長岡は
「あー、気持ちいい、よ、」
と応えて遥の後ろ頭を撫でた。
彼女は嬉しそうに微笑み、
「ん♡ねぇ、イくとき、言ってね、」
とギラギラした瞳で見つめてまた咥え直す。
「あぁ、…っフ……ぁ……すげぇな……あー…」
「んッ…んッ…ふ♡んッ♡」
「清洲、あ、もう…あ、」
「ぷ…ハルカって呼んで?今だけでいいから」
頭に触れる大きな手を剥がして恋人繋ぎをして、往生際悪く逃げようとする足に膝を乗せて、遥はスパートをかけようと首と肩に力を入れた。
「は、るか……あ、」
「ん、………っふ、ん、…、…、…、…」
「ゔァ、イ、イく、あ、ハルカっ、出る、おい、もう、あ、あ、」
吸い付く口内、ざらついた舌の感触、凸凹の口蓋の摩擦…単純に気持ちいい。
それだけのことだと長岡はまた理由付けをして、
「……ッ、……ぁ、ア、あー…♡♡♡」
酔った同僚の口の中に射精してしまった。
「あ、やべ……はー…ッ…おい、」
「ん♡ふは♡いえ♡いっあいれらぁ、れ、」
「吐け、馬鹿…」
舌を受け皿にしてたっぷりの精液を盛り付けて、遥は自慢げに製造元へ見せびらかす。
そして
「みれ、んッ………べぇ♡ごっくんしちゃった♡」
と手品のように上手に消失させて見せた。
「………」
「引かないでよぉ、もー…褒めてよ、」
「引くわ…お前…もう会社でまともに見れねぇ」
若干の賢者の気分で長岡はベッドに腰掛け、枕元のボックスティッシュを数枚引き抜いて箱は遥へと差し出す。
表面に残った白濁が皮に巻き込まれて内へ入ってしまう、慣れた手つきで引っ張りながら拭き上げた。
「えー…うーん…ごめーん…んー…」
「おい、風呂入れ…んで忘れろ、」
「直樹が包茎だってこと?」
「うるせぇな、全部だバカ!」
包茎で不都合などあるものか、しかし改めて言及されると腹が立つ。
長岡は作業着を脱ぎながら風呂場へ繋がるドアへと歩いた。
「仮性で良かったね」
「黙れ!……もう先に風呂入ってくるから…そこ、ウーロン茶あるから飲めよ」
「んー…あいあい…」
………
これが、昨夜の全てである。
長岡がシャワーを済ませて出てくると既に遥はベッドへ上がり込んで寝息を立てていた。
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