僕たちが幸せを知るのに

あかね

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epilogo…Felicità

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「や、やだ、忙しい時にちょっとカビ生やしただけじゃない」

「お姉さまぶってるけど、大雑把でガサツなとこもるあるんだ、そこが可愛いんだけどね」

「やめてよ、ご両親の前で…みっともない、」

せっかくしっかり者の年長者を気取ったのに背中から撃たれるなんて。

 朱鷺子はあたふたと隣に掛ける礼央を睨んだり小突いたりと取り乱してしまった。


 キッチンから遠巻きに眺めていたティツィアーノはぼちぼちかと知らせが鳴る前にオーブンを開き、

「何デモいーじゃナイ、ほら焼けたヨ!食べヨ♡」

とコンシャを呼び寄せる。


「…頼りない女だって思われたじゃない」

朱鷺子はコソコソと、礼央だけに聞こえるよう恨みがましく囁いた。

「そうかな、普段は尻に敷かれてるんだからbalanceバランス取れてると思うけど」

「あなたを召使いみたいに扱うババアだと思われてるってこと、」

「思わないよ、そうだとしても僕が望むんなら良いじゃない」

「……もう良い」

 年長者たる面子メンツを立てて欲しかっただけなの、仕事中はきちんとしてくれるのにプライベートではコケにされているようで納得がいかない。


 しかめっ面の朱鷺子にラッセル夫妻はキョトンとなるも、テーブルいっぱいに自慢の手料理を並べて

「さ、食べましょ」

と取り皿を回す。

「…ありがとうございます…」

「わーい、papaのpizzaピッツァは格別なんだよ、朱鷺子さん、ほら、取ってあげる」

「え、私がやるわよ」

「なんで、僕の仕事だよ」

「こういうのは女がやるもんでしょ」

「こういうのは部下がやるもんだよ」

「今はプライベートでしょ!」

「コラコラ、美味しい料理の前でケンカは野暮ヨ」

妙な小競り合いに割って入ったティツィアーノはそれぞれの取り皿にピザを分け、簡単に「イタダキマース」と唱えたらいち早くぱくりと頬張った。

「そうよ、ほら。いただきまーす」

「いただきます………ん、ん、美味しい…」

コンシャに促されてピザを口にした朱鷺子は、濃厚なチーズと爽やかなトマトの風味に目を剥いて驚く。

 本場のピザを食べたことは無いけれどこれがきっと本格派というやつなのだろう。

 パリパリと歯応えのある薄い生地で少食な自分でもおかわり出来そうだとさえ思った。


「朱鷺子さん美味しいでしょ、papaの料理」

「えぇ、美味しい…」

「いっぱい食べてね…あ、唇にparsleyパセリ付いてる、はい取れた」

「やだ、こっそり教えてよ…もう…」


 面前でイチャつくカップルにラッセル夫妻は「ほう」と顔を見合わせて、しかし朱鷺子が何故か浮かない表情なのが気にかかる。


 もてなしに不備があるのかティツィアーノもソワソワし出してしまい、ついにコンシャは

「トキコさん、何か心配事でもあるの?」

と直接問いただしてしまった。
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